桜満開の季節の中、お花見で良い気分になるだけでは飽きたらず、早くもゴールデンウィークの予定を夢心地で妄想する今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
好かれて拡散するプロモーション
2015年3月3日からキリンビバレッジが販売する、「 キリン メッツ」ブランドの新商品「キリン メッツ グレープ」と「キリン メッツ オレンジ」に合わせて公開された『キリン メッツ スペシャルサイト』です。
図1 「 キリン メッツ」ブランドの新商品をフィーチャーした『キリン メッツ スペシャルサイト』
credit:BIRDMAN
ウェブサイトでは現在放映中のCMほか、ウェブサイト限定の動画・画像が用意されています。ウェブサイトで流れるサウンドの「メッツ!」のセリフに合わせて、動画部分が一斉に「キリン メッツ」のロゴに変化するというリズミカルな同期にも注目です。
図2 「 メッツ!」のセリフに合わせて、動画部分(上)がロゴ(下)へと変化する
"拡散の主役"に好かれることの大切さ
このウェブサイトでも使用されているキリンメッツのCM動画ですが、公開とほぼ同時に、CMを素材にしたMADムービーを制作するユーザーが次々と登場しており、すでに多くの動画がネット上に公開されています。
図3 ニコニコ動画(左)やYouTube(右)では、「 MAD キリンメッツ」で検索すると、大量のMAD動画が並ぶ
もちろん、MADムービーは著作権上の問題を含んでおり、決して褒められた行為ではありませんが、こうした行為が爆発的に拡がっているということは、元となるCM動画を、ユーザーが非常に好意的に受け止めているということを表しています。
プロモーションは、ユーザーが必ず見てくれるわけではありません。そのために見てもらえるための工夫が必要になってくるわけですが、最近では、ユーザーからの指摘や苦情などによって、企業がCMの放送を取りやめたり、ウェブサイトで公開していた動画を削除する例もあります。
SNSなどを通じたコンテンツの拡散が当たり前になってきた現在、不快感を与えないようにすることはもちろんですが、"拡散の主役"であるユーザーに気に入ってもらえるものをしっかり考えないと、プロモーション自体が非常に厳しい時代なのだなと改めて感じる事例でした。
現実世界でも、ボタンを押すだけで買えます
Amazon.comが発表した、ボタンを押すことでAmazonに商品を注文できるスマートボタン「Amazon Dash Button」のウェブサイトです。
図4 ボタンを押すだけで商品の注文ができる「Amazon Dash Button」のウェブサイト
「Amazon Dash Button」は、Wi-Fi機能を内蔵した、背面にフックと両面テープが取り付けられるプラスチックのボタンです。スマートフォン専用アプリで注文する商品を設定しておくと、ボタンを押すだけで設定された商品の注文が自動的にAmazonに送られ、スマートフォンに注文の確認(キャンセル可能)が届くという仕組みです。
「Amazon Dash Button」の内容を説明した動画
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広がっていくモノのインターネット
「Amazon Dash Button」以外にも、Amazon.comでは、音声入力やバーコードをスキャンするだけで、買い物リストを作成してくれるオリジナルデバイスを使った「Amazon Dash」というサービスをすでに始めています。こちらも、ブラウザなどを経由して行っていたサービスを"モノに集約"してしまおうとする試みのひとつです。
「Amazon Dash」の内容を説明した動画
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最近では、身の回りのあらゆるモノがインターネットを通じて接続されるという、モノのインターネット(IoT)という概念が注目されており、さまざまなサービスが生まれています。海外では、すでに高い評価を受け、ビジネスとして成功している企業も出てきています。
図5 家屋の温度調節をするサーモスタットをインターネットと繋ぐことで成功しているNest
インターネットが普及して生活の一部となった現在でも、まだPCやアプリを立ち上げて行わなければならないことが数多くあります。そんな行為がたったひとつのボタンに集約されていく様は、水道や電気を使うように、誰もが意識せずともインターネットを利用できるようになる世界が訪れることを期待させてくれます。
モノとサービスをインターネットで繋いでいくこうした試みが、これから自分たちの生活にどのような影響を与えていくのか。現時点では未定ですが、「 Amazon Dash Button」が日本でサービスを開始した際には、ぜひ試してみたいと思います。
体験できるのは、スマートフォンだけ
FACTが、2015年3月4日にリリースしたアルバム『KTHEAT』に収録されている楽曲「the way down」をフィーチャーしたスペシャルコンテンツ、『 the way down / FACT : Smartphone Music Video』です。
図6 スマートフォンからだけ閲覧できる『the way down / FACT : Smartphone Music Video』
credits:EPOCH Inc. 、homunculus Inc.
"Smartphone Music Video"の通り、スマートフォンからしか閲覧できないこのスペシャルコンテンツは、スワイプや本体を傾けるといった、スマートフォンならではの操作方法を駆使して、コンテンツ内のアイテムや映像、演出を変化させるという内容になっています。また、公開されているミュージックビデオとも密接にリンクしており、ミュージックビデオとウェブサイトを何度も行き来してしまいます。
公開されているFACTのミュージックビデオ「the way down」は、スペシャルコンテンツと密接にリンクしている
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加速するモバイルデバイスへの対応
『the way down / FACT : Smartphone Music Video』の特徴として、"スマートフォンからでなければ閲覧できない"という点があります。この部分に関して、プロデュース・企画・ディレクションに携わった「EPOCH Inc.」のウェブサイト では、「 ( FACTの)オフィシャルサイトへのアクセス数の大半以上がスマートフォン」「 多くのユーザーに閲覧してもらえるように」という説明がされています。
図7 PCからアクセスしても、コンテンツは閲覧できない
最近発表されたアメリカの調査会社eMarketerの調査 では、2015年にはデジタルディスプレイ広告の内訳で、「 モバイル広告がデスクトップ広告費を初めて上回る」という予測がされるなど、広告の分野でもモバイルデバイスに対するシフトが始まっています。
以前の連載 で、FACTのプロモーション(『 FACT 15TH ANNIVERSARY WEB SITE』 )を紹介した際、今後「個人単位での普及が広がっているモバイルデバイスへの対応が必要不可欠」と予想していました。
条件にもよりますが、こうした事例が更に拡大し、最終的にはモバイルデバイスを中心にしたプロモーションが当たり前の時代がもうすぐやってくるでしょう。そうした大きな変化の中で、モバイルデバイスを生かしたどんなプロモーションが生まれてくるのか、これからも注目していきたいと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。