いま、見ておきたいウェブサイト

第149回adidas FUTURECRAFT、Google Earth、Introducing the New Instagram Direct

気温が急激に上昇したことで、扇風機を設置しながら、⁠今年の夏はこれ以上暑くなるのか」と今からうんざりしている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

未来のシューズは、3Dプリンターが作る

adidas FUTURECRAFT

adidasが進めている「Futurecraft」シリーズ(最新技術によってシューズの製造分野にイノベーションを推し進める)の集大成となる、3Dプリントシューズ「Futurecraft 4D」をフィーチャーしたウェブサイト、⁠adidas FUTURECRAFT』です。

図1 adidas の3Dプリントシューズ、⁠Futurecraft 4D」をフィーチャーした『adidas FUTURECRAFT』
図1 adidas の3Dプリントシューズ、「Futurecraft 4D」をフィーチャーした『adidas FUTURECRAFT』

ウェブサイトでは、アメリカの3DプリンタメーカーであるCARBONが開発したテクノロジー、Digital Light Synthesis(液体樹脂に光を照射して、耐久性に優れたポリマー製品を製造する技術)を用いて作られたミッドソール(靴底の中間部分で衝撃の吸収や履き心地を左右する部分)を搭載する世界初の高性能シューズ、⁠Futurecraft 4D」を解説しています。

「Futurecraft 4D」のプロモーション映像

「Futurecraft 4D」は、2017年4月に300足、2017年の秋冬シーズンに5000足以上が販売され、2019年までには10万足以上の3Dプリントシューズが量産される予定です。最終的には、顧客がadidasの店舗に立ち寄れば、その場で3Dプリンターで製作したシューズを試着できる仕組みも実現する計画です。

店舗に足を運ばせる理由が作れるか

「Futurecraft」シリーズ以外にも、adidasは店舗での商品製造を行うプロジェクトを実践しつつあります。2017年3月12日までの期間限定プロジェクトadidas Knit for youでは、来店した顧客が体のサイズの計測と好みのデザインを選択すれば、わずか4時間でカスタマイズされたニットがその場で購入できる体験を提供しています。

「adidas Knit for you」の概要を説明した動画

現在、世界中でアパレル業界の不振が続いています。メーカーにとって重要な販売拠点であるアメリカでは、有名百貨店や大型ショッピング・モール、大手小売業者の店舗閉鎖などが相次ぎ、販路が縮小したメーカーは大苦戦を強いられています。

背景には、実際の店舗だけでなく、インターネット上の店舗との価格・販売競争が激化していることが挙げられます。⁠商品を購入するだけなら、ネットで手軽に何でも買える⁠という消費者の購買行動の変化が進んでいるため、小売業者側もECサイトでの販売強化を進めていますが、まだまだ実店舗での売上減少をカバーするまでには至っていません。

消費者が利便性を求めていく中で、実際の店舗には「顧客自らが足を運ぶ意味があるのか」どうかが問われ始めています。この問いかけに対して、adidasは店舗を訪れた顧客が欲しいものを、ネットで購入するよりも早く、確実に、その場で購入できる仕組みを構築していくという答えを出しています。

これまで店舗数や販路の拡大によって売上を伸ばしてきたメーカーにとって、⁠店舗でしか味わえない購入体験⁠の提供は、大きな流れとなるでしょうか。他の業界と比べて遅れがちな効率化の問題も含めながら、今後の展開をじっくりと見ていきたいと思います。

ブラウザから始まる、新しい世界

Google Earth(EARTH FOR CHROME)(要:Google Chrome)

2017年4月22日のアースデイ(地球環境について考える日)を前に発表された、新しいバージョンの「Google Earth」を紹介しているウェブサイト、⁠Google Earth』です。

図2 ブラウザで利用可能になった、新しい「Google Earth」
図2 ブラウザで利用可能になった、新しい「Google Earth」

“開発に2年が費やされた⁠という新しい「Google Earth」は、PCにインストールすることなく、ブラウザから直接利用できるように進化しました。アプリケーション版が持っていた機能は整理され、数々の新機能が追加されています。

新しい『Google Earth』のプロモーション映像

50以上のストーリーが用意されているガイドツアー「Voyager⁠⁠、ボタンを押すとランダムに世界の名所へと移動できる「I'm feeling lucky⁠⁠、マップ表示を立体的にする「3Dボタン⁠⁠、マップ上の場所の歴史や特徴などをまとめた「情報カード」など、新機能を追加した「Google Earth」は、今後、Android、iOS、各種ブラウザ向けにも提供される予定です。

図3 イタリアの5つの都市を紹介する「The Grand Tour of Italy」は、⁠Google Earth」の新機能である「Voyager」によるガイドツアー
図3 イタリアの5つの都市を紹介する「The Grand Tour of Italy」は、「Google Earth」の新機能である「Voyager」によるガイドツアー

ブラウザ上で実現する新しい世界

「Google Earth」は、2005年にPCのアプリケーションとして提供されました。当時、人工衛星から撮影された画像を使って地球が表現されたことの驚きと、PCに疎い筆者の父が興奮して「Google Earth」に関する質問をしてくるほどの衝撃がありました。

それから約10年、ブラウザ上で誰もが「Google Earth」を利用できる時代となりました。PCにインストールする手間もなくなり、当時は実現不可能だった機能もブラウザで実装できていることに、大幅な技術の進化を感じます。

図4 PCにインストールする「Google Earth」も配布されているが、⁠OLDER VERSIONS(古いバージョン⁠⁠」とラベリングされている
図4 PCにインストールする「Google Earth」も配布されているが、「OLDER VERSIONS(古いバージョン)」とラベリングされている

『Google Earth』では、PCへとインストールする「Google Earth」も配布されていますが、⁠OLDER VERSIONS(古いバージョン⁠⁠」とラベリングされています。クラウド化が進み、ユーザーのPCへの依存が低下しつつある流れの中、⁠新しいバージョン」である「Google Earth」が何を目指していくのか、じっくりとその世界を楽しみながら考えてみたいと思います。

「Snapchat」をライバル視する、「Instagram」の進化

Introducing the New Instagram Direct(Instagram Blog)

「Instagram」に追加される新機能を発表した、⁠Instagram Blog』の2017年4月17日のエントリー、⁠Introducing the New Instagram Direct」です。

図5 ⁠Instagram」の新機能を発表した「Introducing the New Instagram Direct」
図5 「Instagram」の新機能を発表した「Introducing the New Instagram Direct」

「新しいInstagram Directの紹介」と題されたこのエントリーでは、2016年に「Instagram」に搭載されたInstagram Direct(指定した個人やグループだけで写真や動画を共有できる機能)に、メッセージを開くと消えて無くなる写真・動画の共有が可能になる新機能が追加されることを説明しています。

Instagram Directに追加された新機能を紹介した動画

Introducing the New Instagram Direct from Instagram on Vimeo.

画面下にあるカメラアイコンから写真・動画の撮影を行うと、開くと消えて無くなるメッセージとして送信できます。消えるメッセージは受信箱で青色の表示となり、開封後一度だけ写真・動画が閲覧できる仕組みです。

「Snapchat」は生き残れるか

相次ぐ「Instagram」の機能の追加は、ライバルと言える「Snapchat」がユーザー数を伸ばしてきたことと大きな関係があります。2016年8月にも、⁠Instagram」はInstagram Stories(複数の写真や動画を1日だけ共有する機能)を追加しましたが、この機能は以前から「Snapchat」が導入しているStoriesと呼ばれる機能に酷似しています。

2016年8月に「Instagram」に追加された新機能、Instagram Storiesを説明する動画

Introducing Instagram Stories from Instagram on Vimeo.

新機能の追加は「Instagram」のユーザー数の拡大にもつながっており、先日「Instagram」「Stories機能を利用するDAU(Daily Active Users)が2億人を超えた」と発表しています。こうした結果を受け、現在ではFacebookのサービスである「WhatsApp」「Messenger」にもStoriesを導入しています。

5月に入り、⁠Snapchat」を運営するSnapは、株式上場後初の決算発表を行いました。赤字決算というだけでなく、莫大なクラウドの運営費、ライバル「Instagram」の機能追加、ユーザー数の増加率低下といった材料から、株価が一時暴落しました。アナリストからは「今後、Facebookが脅威になるのでは?」といった質問が飛び出すなど、同社の将来について厳しい見方も出てきています。

それでも「Snapchat」は、若者世代を中心に⁠友人同士の範囲内で行われるコミュニケーションツール⁠という他のSNSが持っていない魅力と、最近問題となっている⁠悪質なコンテンツへの広告出稿へのリスクの低さ⁠を持っています。こうした優位性を活かし、他社が後追いできない新機能を提供しながらユーザーを拡大していけるかどうか、ライバルの「Instagram」の動きとともに、今後の展開を注視していきたいと思います。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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