ジメジメとした天気が続く中、いよいよやってくるエアコンの本格稼働のためフィルターの掃除と動作確認に追われている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
コンテンツに信頼と報酬をもたらす仮想通貨
「仮想通貨とソーシャルメディアの融合」を目指して立ち上げられたソーシャルメディアのプラットフォーム『Steemit』です。
「Steemit」ではユーザーが投稿したコンテンツが、価値があると他ユーザーから評価された場合に仮想通貨で報酬が支払われます。また、他ユーザーの価値ある投稿に対して、早いタイミングで良いコメントを付けた場合も同様に報酬が支払われます。このように“コンテンツに対する価値に対して報酬が与えられる”のが特徴的なプラットフォームです。
コンテンツは、最初の投稿から約7日の間に「Upvote:良い」「Downvote:悪い」によって評価されます。高評価の投稿には報酬が支払われますが、低評価の投稿はトップページの各カテゴリーから外され、他のユーザーの目に触れないようになります。このため、ユーザーが「Steemit」で報酬を受け取るためには、高く評価される価値あるコンテンツを投稿する必要があります。
こうした評価システムを基盤に「Steemit」は、ユーザーの生み出すコンテンツの品質を担保しながら、ユーザーへの報酬とソーシャルメディアとしての信頼性を目指しています。
コンテンツの価値が認められる時代は来るのか
“ユーザーに高品質のコンテンツを制作してもらうこと”と、“良質なコンテンツに対して報酬を支払うこと”を成り立たせるビジネスモデルは以前から存在しています。しかしながら、コンテンツの質を判断する確実な方法がないことや、ページビューや広告収入によってユーザーへの報酬を賄うことで、コンテンツが乱造されるなどの問題点も多く、高品質なコンテンツとユーザーへの報酬を、バランスよく解決する決定的な方法は今のところありません。
先日有名なブログサービスのひとつである「Medium」も、社員全体の3分の1をレイオフするなどの経営縮小と、広告が表示されない月額5USドルの会員制プランの追加を発表しました。主な収益源がページビューによる広告収入だけでは、記事の質と執筆者への報酬を維持するのが難しいことを証明する結果となったのです。
こうした中で、「Steemit」では報酬として、取引所を通じてBitcoinと自由に交換できる仮想通貨を利用しています。ユーザーに支払われる報酬は、新規に仮想通貨を発行することで支払われています。もちろん通貨の発行量が過剰であれば仮想通貨の価値は下落しますが、「インフレ率は年9.5%~年0.95%になるまで、毎年約0.5%インフレ率を低下させていく」というルールで管理されています。
記事の信頼性と質の確保、執筆者への正当な報酬を両立させるために、これからもさまざまなビジネスモデルが登場して来るでしょう。コンテンツに独自の仮想通貨を報酬として支払うという「Steemit」の試みが、今後も持続できるのかどうか、仮想通貨を利用した関連サービスの拡大も気にしつつ注目していきたいと思います。
着色は人工知能におまかせ
ピクシブ株式会社が提供している、お絵描きコミュニケーションプラットフォーム『pixiv Sketch(ピクシブスケッチ)』のウェブサイトです。
「pixiv Sketch」は、PCやスマートデバイスなどで自由に絵を描き、そのまま投稿共有できるプラットフォームです。2017年5月24日から、株式会社 Preferred NetworksのAI(人工知能)技術による、線画自動着色サービス「PaintsChainer(ペインツチェイナー)」の機能が「pixiv Sketch」に追加されました。
この機能は、「pixiv Sketch」上で線画を描いてから「自動着色ボタン」を押すと、AIがイラストを認識して自動的に線画に色が塗られるというものです。色の調整や、ユーザーが線画上に色を指定しての自動着色も可能です。
アドバイザーとしての人工知能
「pixiv Sketch」の「自動着色ボタン」は、絵を描く工程のひとつである「着色」作業の負担を大幅に軽減してくれます。筆者も実際にイラストに着色してみましたが、色指定を併用すればほぼ自分のイメージどおりに着色してくれる、非常に便利な機能だなと感じました。
「自動着色ボタン」が追加された「pixiv Sketch」は、瞬く間に多くのイラストを描く人に受け入れられたようで、SNSでは自動着色を使って描かれた作品を数多く見かけます。定形作業を行うプログラムのような“頑固さ”ではなく、人間のアシスタントが手伝ってくれるような“柔軟さ”を感じさせることが、大勢に受け入れられた理由なのかもしれません。
すでに人類は、AIを有効活用していく時代に入ったことは間違いありません。現時点ではAIによる機能は、それを利用する人間にとって、協業できるアドバイザーとしての姿になることが理想でしょう。「人がする仕事がなくなる」といった悲観論も聞かれますが、筆者はもっと楽観的にAIが未来の技術のベースとなり、あらゆる場面で誰もが利用できるようになることを期待したいと思います。
誰もが欲しがるブランド揃えました
2017年6月6日、「LVMH(Moët Hennessy Louis Vuitton)」が開始した新しいECサイト『24 SÈVRES』です。
『24 SÈVRES』はLVMHグループの傘下にある、フランス・パリの高級百貨店「Le Bon Marché(ル・ボン・マルシェ)」のECサイトとして展開されます。「LVMH」が所有するブランドを含む、150以上のブランドのファッションアイテムなどを扱い、世界70カ国以上で利用可能となっています。
消費活動の変化に対応するECサイトが主流に
『24 SÈVRES』は「LVMH」が、2015年1月からオープンまでに30ヶ月を費やし、その投資金額は数百万ユーロ、日本円で数億円規模と言われているデジタル事業ですが、これ以外にもデジタル事業への投資を進めています。
『Clos19』は、LVMHグループの所有する、高級ワイン・スピリッツを中心に展開するECサイトです。イギリス・ロンドンを拠点に「Moët & Chandon(モエ・エ・シャンドン)」「Dom Pérignon(ドン・ペリニヨン)」といった高級品を取り扱っています。また“別格の体験”として、プライベートディナーパーティーや、ラグジュアリーな旅行プランなども提供されています。
「LVMH」は、デジタルでも体験中心のプレミアム路線を軸に、事業を進めています。富裕層が製品から経験への支出に移行してきていることから、今後はデジタル事業である『24 SÈVRES』にも、「LVMH」の持つメガブランド「Louis Vuitton」「Dior」の商品が投入されることでしょう。
「LVMH」とは対象的に、実店舗での販売を行わない「Amazon」も、自社のECサイトである「Amazon.com」でアパレルや衣料品などを扱っています。先日、自宅で気軽に商品を試して購入できる新サービス「Prime Wardrobe」を発表しました。ユーザーは、購入したい複数のファッションアイテムが入った箱を受け取って試着を行います。まとめて購入すれば最大20%の割引が適用され、購入しない商品は送られてきた箱に入れて返送できます。もちろんAmazonプライム会員は追加料金なしでサービスを利用できます。
「Amazon」はユーザーの利便性を高めることで、自社のECサイトを強化しています。百貨店の外商員から商品を購入するような「Prime Wardrobe」の追加だけでなく、「Amazon.com」の販売網を活かして、最近ではスポーツ用品大手である「Nike」の商品を直販できるようにするなど、知名度のあるブランドの獲得にも力を入れています。
こうした「LVMH」と「Amazon」の路線の違いは、実店舗の所有や対象となる顧客、保持するブランドなどの影響を大きく受けていると思われます。実店舗での販売が伸び悩み、人々の消費対象が物品から旅行やレストランといった体験、いわゆる「コト消費」へと移りつつあるこの時代に、どのような形で物を売っていくのが最適解なのか、試行錯誤しながら変化する小売業の動きに注目していきたいと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。