寒さも仕事の忙しさも厳しい中で、楽しいお正月までもうひと頑張りするぞと気持ちを奮い立たせている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
体にピッタリの服、ご提供します
株式会社スタートトゥデイが発表した、採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」を説明するウェブサイト、『【ZOZOSUIT】服が人に合わせる時代へ』です。
「ZOZOSUIT」は、ニュージーランドのStretchSense Limited.と共同開発した、伸縮センサー内蔵の採寸用ボディースーツです。生地の伸び具合をセンサーが検出し、トップスとボトムスの上下を着用後にスマートフォンをかざすことで、体の寸法が瞬時に計測できるという仕組みです。
誰も手に入れられない、独自データの価値とは
インターネットを使い、さまざまなモノが購入できるようになった現在、筆者もECサイトから商品を購入しています。ただし、服と靴だけは、実際の店舗に行って購入しています。その最大の理由は、「実際に着用しないと、自分にぴったり合ったサイズの商品が見つけられないから」です。
もちろん、実際の店舗へ足を運ばず、インターネット経由で複数の商品を選んで自宅でフィッティングを行えるサービスもあります。ただし、購入しない商品を送り返すなどの面倒な手続きが必要なため、積極的に利用するには至らないのが現実です。「ZOZOSUIT」では、このような“実際に着なければ、服は買えない”という、ネットで服を購入しない最大の理由が解消されます。
また、インターネットサービスの検索やSNS、会員登録からでは絶対に得られない、ユーザーの詳細なデータを入手できることも注目点のひとつです。「ZOZOSUIT」から手に入れた独自データを利用して、自社のショッピングサイトである「ZOZOTOWN」や付随するサービスをどのように充実・拡大させるかにも非常に興味をそそられます。
株式会社スタートトゥデイの代表取締役である前澤友作さんは、すでに靴でも同様のサービスを始めることをツイートしています。「ZOZOSUIT」は日本を含む160カ国で配布が開始されます。仮に世界中の人々のデータを速やかに獲得・独占することができれば、Amazon.comなどの影響で厳しい経営環境に晒されているアパレル業界に大きな変化をもたらすかもしれません。アパレル製品の“基本サイズを新たに定義し直す試み”でもある、「ZOZOSUIT」の展開に、これからも注目していきたいと思います。
誰でも体験できる、機械学習の仕組み
Googleが公開した、ブラウザでできる機械学習の実験サイト『Teachable Machine』です。
『Teachable Machine』では、画面に表示されているボタンを押しながら、PCなどのウェブカメラから映像を入力します。入力された映像を学習して判断材料にすることで、カメラに写る映像に対応したGIF画像の表示やサウンドの再生が行われるという仕組みです。
この実験サイトでは、Googleによる機械学習のためのJavaScriptライブラリ「deeplearn.js」が使用されており、一連の動作を実現するためのコーディングなどの作業は、一切ありません。
人工知能や機械学習が、誰でも使える時代へ
機械学習(machine learning)とは、人間が行っている学習能力と同様の機能をコンピューターで実現しようとする、人工知能関連技術のひとつです。2017年6月にアメリカのコンサルティング会社であるMcKinseyが発表したレポート”How artificial intelligence can deliver real value to companies(どのように人工知能が企業に本当の価値をもたらすのか)”では、「今後、人工知能や機械学習が、製造業や金融業などの産業に大きな貢献をする」という予測をしています。
その反面、レポート内では「優秀な技術者が不足する」という問題点も挙げられています。すでに人工知能や機械学習の導入が進む海外では、大学や研究機関、大企業などによる、技術者の獲得合戦が行われています。大学教育や企業での職業訓練プログラムなどで、不足している技術者を育成しようという動きもありますが、長い育成時間が必要なことや予算などの問題があります。
このため、誰もが簡単に利用できる環境の整備として、一定のスキルを持った人材が学習すれば、すぐに人工知能や機械学習の恩恵が受けられるツールの開発を進めようとする動きが出てきています。
『Teachable Machine』では、特別なスキルなしに機械学習の仕組みが理解できます。こうしたシンプルなツールを手始めに、誰もが使える人工知能や機械学習のサービスが登場してくるのは自然な流れです。特定の技術を持つ人だけが恩恵を受けるのではなく、誰もが簡単に人工知能や機械学習を利用できるようになる日が、もうそこまで近づいてきています。
“テーマから投資する”という、新たな投資サービス
「ドローン」や「宇宙開発」などのテーマを選び、10万円から株式投資ができるオンライン証券サービス、「フォリオ」のウェブサイトです。
「フォリオ」の投資先となる各テーマは、プロの選定した有望企業10社で構成されています。その10社に分散投資をすることで、リスクを極力減らし、効率的な資産運用ができるという仕組みです。
日本株の場合、10社への分散投資には高額の費用が必要ですが、「フォリオ」の場合には10万円前後で分散投資が可能になるため、リスクの少ない投資が手軽に始められるというメリットがあります。
投資する場合に最も難しいのが、「どの企業に、どのような配分で投資するのか」という点です。「フォリオ」では、期待するリターンや許容できるリスクの幅に応じて、「バランス型」「ディフェンス型」「グロース型」「バリュー型」の4タイプの投資方針が用意されており、ユーザーが希望に合わせた投資を簡単に決定できる工夫もされています。
少額投資サービスの広がりは、日本を変えるか
今回紹介する「フォリオ」など、近年、日本でもさまざまな少額投資サービスが登場してきました。こうした背景には、日本の株式投資の環境が大きく影響しています。
日本株を購入する場合、株式の最低売買単位が高いことが挙げられます。全国の証券取引所は、2018年10月1日までにすべての上場会社の株式の売買単位を100株単位に変更することを公表していますが、1株あたり数百円の株式であっても、100株という最低単位の分散投資では、どうしても高額になってしまいます。
例えば、米国株の場合には、1株からの投資が可能です。誰もが名前を知っている、AppleやMcDonald、Coca-ColaやWalmartといった世界的な大企業でも、1株単位で購入できます。こうした環境では、株式への投資が少額から行えるため、仮に株式投資に失敗するとしても金銭的なダメージも少なく、「試しに投資してみよう」という気にさせられます。
少額投資のサービスでは、小さく投資が始められることで、知識と経験を少しづつ積み上げながら、その規模を拡大していくという理想的な投資スタイルが実現できます。「フォリオ」の場合は、少額の投資が可能なだけでなく、整理された投資に関する情報と見やすいデザインで、初めて投資する場合に誰もが感じる、投資完了までの面倒な手順と不安も大幅に解消されています。
近年、日本でも投資家への過剰な手数料を要求する投資信託販売の規制やNISA(少額投資非課税制度)、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」といった新たな制度づくりなど、金融庁の金融商品全般における改革が実行され続けており、投資環境が大幅に改善している流れを感じます。
こうした環境の変化の中で、さまざまな少額投資サービスが登場することは非常に喜ばしいことです。少額投資を繰り返して経験を積むことで、「日本人に足りない」と言われる金融リテラシーが向上し、それに伴う投資サービスの拡大とさらなる環境の改善によって、投資とへの考え方が大きく変化することを期待したいと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。