いま、見ておきたいウェブサイト

第157回Burger King「Project:AOR」、Now in Beta: Upload your music in Spotify for Artists(Spotify)、Fresh ways to stay up to date on your favorite places and find new ones(Google)

いよいよ寒さも厳しくなり、忘年会や初詣などの年末年始のスケジュールを考えている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいウェブサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

この広告は、人工知能によって作成されました

Burger King「Project:AOR」

"This ad was created by artificial intelligence.(⁠⁠この広告は人工知能によって作成された⁠⁠)"というタイトルで始まる、人工知能が制作したBurger KingのCM

credit:David Miami

アメリカのハンバーガーチェーン、 BURGER KINGによる AI(人工知能)を使用した実験的プロジェクト「Project:AOR」です。

プレスリリースによれば、現在、Burger Kingは、革新的なビジネスモデルを開発する「Project: AOR(Agency of Robots:ロボット代理店⁠⁠」を進めており、ハイエンドのコンピューティングリソースとビッグデータ、ニューラルネットワークを使用して、数千のファストフードのCMや業界研究、競争力あるレポートを解析することで、戦略的かつ効果的なコミュニケーションのための洞察を収集して、人工知能に広告キャンペーンを作らせたということです。

上記で紹介した動画は、⁠Burger KingのCMを人工知能に1,000時間学習させてから書かせた」という台本を映像化してもので、その内容は公式Twitterでも公開されています。

公式Twitterで公開された、人工知能が制作したという台本

Burger Kingは全部で4つのスポットCMを用意しており、2018年10月1日から実際にテレビで放映されました。すべてをAIが作成したCMがテレビで放送されるのは初めてだということです。

やがて日常の風景となる“人工知能”

人工知能が作ったという台本を読んでみると、そもそもCMとして使えるかどうか、微妙なできあがりだと感じます。この内容を考えると、今回の「Project:AOR」は、視聴者に伝えようとすることよりも、⁠AIを利用したCM⁠という話題性を優先させたことは明らかでしょう。

実はこのキャンペーンについて、実際に広告を作ったのはAIではなく、CMを担当する広告代理店であるDavid Miamiだとする記事も出ています。

台本の内容や奇妙なナレーション、プレスリリースの配信など、⁠本当にAIが制作した」と思わせるクオリティですが、キャンペーンを行ったBurgerKingのグローバルブランドマーケティング責任者であるMarcelo Pascoa氏は、⁠AIは人間から湧き出るクリエイティブなアイデアの代用にはならない」とコメントしています。

実際の真偽はともかく、今後はこうしたキャンペーンが続々と登場してくることが予想できます。すでに私たちの身近では、さりげなくAIを利用している事例が登場し始めています。まだ⁠AI⁠というキーワードだけで注目される現状ですが、今後は制作の中心でAIを活用したさまざまな事例が登場してくることでしょう。

日本の広告代理店でもAIのプロジェクトを積極的に試みていますし、こうした制作方法で結果が伴ってくれば、AIで行っていることを全面に出すことなく、今まで人間が行っていた領域をAIが担ったキャンペーンが、ごくありふれた日常の風景になっていくことは間違いないでしょう。

人間とAIの協調作業によって、どのようなクリエイティブが生まれるのか。私たちが今までに経験したことのない新しいクリエイティブが生まれるのも、もう時間の問題なのかもしれません。

インディーズアーティストの参加、歓迎します

Now in Beta: Upload your music in Spotify for Artists

インディーズアーティスト自身が「Spotify」へ直接楽曲をアップロードできる機能の提供開始を報告する、定額制音楽配信サービス「Spotify」の公式Blogエントリー「Now in Beta: Upload your musicin Spotify for Artists」です。

図1 インディーズアーティスト自身による「Spotify」へのアップロード機能の提供開始を報告する「Spotify」のwebsite181224公式Blogのエントリー
図1 インディーズアーティスト自身による「Spotify」へのアップロード機能の提供開始を報告する「Spotify」のwebsite181224公式Blogのエントリー

エントリーによれば、「Spotify」がアーティストに提供しているアプリ「Spotify for Artists」を利用することで、インディーズアーティストが「Spotify」へ直接楽曲をアップロード可能になります。アップロード数に制限はなく、「Spotify」で楽曲が再生された場合は、ロイヤリティの支払いも発生します。

このベータ版は、アメリカで活動するインディーズアーティスト限定の機能となりますが、今後アップロード機能の提供を拡大していく予定です。

「Spotify」への参加で、勢力図は変わるか

「レコードやCDを購入する」「音楽ファイルを購入する」といった時代は流れ、今やユーザーにとって、「Spotify」「 Amazon Music 」「Apple Music」といった「サブスクリプションモデルを採用したストリーミングサービスの利用」が、音楽を楽しむための最も身近な方法となっています。

その中で、「Spotify」がこうした機能を提供する狙いとしては、優れたアーティストを獲得することで、サービスで提供する楽曲の質を向上させ、「Spotify」が新しい音楽が聞ける場所であるという期待感を与えることで、さらなるユーザーの獲得を狙うということになるでしょうか。

インディーズアーティストにとってのメリットは、「Spotify」のアップロードサービスによって、メジャーレーベルに所属するアーティストと同じプラットフォームで自身の楽曲が同様に配信されることです。また、得られる収入によっては、インディペンデントのままアーティスト活動を自由に継続できます。

それ以上に、「Spotify for Artists」の利用によるユーザーデータの獲得は、特に重要な点だと考えています。「Spotify for Artists」では、アーティスト自身が楽曲管理ができるだけでなく、楽曲の視聴しているリスナーに関する様々な情報が得られます。こうした情報を解析することで、ユーザーの要求にも的確に対応できるでしょう。

図2 「Spotify」の提供する「Spotify for Artists」では、リスナーに関する様々な情報が得られる
図2 「Spotify」の提供する「Spotify for Artists」では、リスナーに関する様々な情報が得られる

個人的には、これだけでメジャーレーベルの利点がなくなるとは思いません。資金と規模の大きさからくる様々なメリット(アーティスト自身が音楽制作に専念できること、データの解析を専任スタッフが担当できる、大掛かりなプロモーションの実施など)は、いずれもアーティストの活動にとっては重要かつ望ましいものばかりです。ユーザーとアーティストの両方が、ストリーミングサービスの利用を重要視することで、これまでの音楽業界の勢力図に変化が生まれるのかどうか。サービスを利用しているユーザーとして、今後も注目していきたいと思います。

マップを制するもの、検索を制す

Fresh ways to stay up to date on your favorite places and find new ones

Googleマップに追加された新機能の詳細について説明する、GoogleのBlog「The Keyword」のエントリー「Fresh ways to stay up to date on your favorite places and find new ones(お気に入りの場所の最新情報を保ち、新しい場所を見つけるための新しい方法⁠⁠」です。

図3 GoogleのBlog「The Keyword」のエントリー「Fresh ways to stay up to date onyour favorite places and find new ones」
図3 GoogleのBlog「The Keyword」のエントリー「Fresh ways to stay up to date onyour favorite places and find new ones」

エントリーでは、Android用Googleマップに追加された新機能 ⁠follow」を説明しています。この機能は、Googleマップに表示された店舗の「follow」ボタンを押すと、その店舗のイベントや最新情報がGoogleマップの「For You」タブで確認できるというものです。また、ユーザーが特定の地域を指定すれば、その地域にある店舗の最新情報、おすすめの飲食店などを自動で受け取れます。

この新機能「follow」「For You」タブは、Android版では130カ国以上、iOS版も40カ国以上に提供され、今後も様々な国でサービスが開始されるということです。

より身近な情報にフォーカスするGoogle

企業にとって、今やGoogleマップは欠かせない存在です。ウェブサイトやSNSなどによる情報発信はどの企業も行っていますが、最近ではGoogleマップに掲載する情報を充実させることが、何よりも効果的になってきたと感じられます。

その理由として挙げられるのが、Google経由で検索をした場合、検索結果とともにGoogleマップの情報が表示される仕組みです。実際にGoogleで検索すると、検索結果とともに表示されるマップから、企業の場所や営業時間などを確認できるため、実際の検索結果のリストではなく、マップをクリックしてさらに詳しい内容を確かめることも多くなっています。

図4 スマートフォンからをGoogleでショップ名を検索した場合の例。画面の最上部にはGoogleマップの情報が表示されている
図4 スマートフォンからをGoogleでショップ名を検索した場合の例。画面の最上部にはGoogleマップの情報が表示されている

モバイルデバイスでの検索の場合は、検索結果の一番上にGoogleマップが表示されることも増えています。また、検索の結果にGoogleの関連サービスが関係する場合は、そのサービスに誘導させるかのように、最初に関連サービスを利用した検索結果が表示されます。

Googleは様々な情報をデジタルデータ化しています。Googleマップについては、Googleの各種サービス上に情報を表示・管理できる無料のツール「Googleマイビジネス」で企業に関する情報をデータ化することによって、Googleの検索の質が高まるだけでなく、ユーザーへの正確な提供情報が可能になり、更に検索回数が増えていくという好循環を促します。

今年はGoogleマップが次々と新機能を追加しているだけでなく、すでに同様の機能をSNS上で優先的に実装してきたFacebookや、大幅に機能を向上させてきているAppleマップなど、マップを巡る環境も大きく変化しています。今後、マップを通じて、ユーザーがさまざまな情報を摂取する時代となっていくのは間違いなさそうです。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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