激動とも言える2020年もいよいよ終わりということで、来年に向けた計画を立てている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいウェブサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
デバイスの組み合わせが生み出す、新しい体験
Appleが開始したフィットネスのサブスクリプションサービス、「Apple Fitness+」のウェブサイトです。
「Apple Fitness+」は、ユーザーが身に着けた「Apple Watch」から得られる測定値を利用するフィットネスサービスです。心拍数や消費カロリーなどの数値は、ワークアウトを行っている画面にリアルタイムで表示されます。測定値はワークアウトの進行に合わせて、表示の大きさが変化したり、アニメーションによる演出が加えられます。
ワークアウトは有名なアーティストの曲と共に提供され、内容もヨガやストレッチ、高強度インターバルトレーニングや筋力トレーニングなど、ユーザーのレベルに合わせた多くのレッスンが用意されています。
「Apple Fitness+」の利用料金は、月額9.99USドル(約1,000円)、または年額79.99USドル(約8,300円)で、「Apple Watch」を購入したユーザーには3カ月間無料(期間限定)で提供されます。現在、オーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、イギリス、アメリカで利用できます(日本でのサービス開始時期は未定)。
サービスの質が問われ始めた、拡大するフィットネス業界
コロナウイルスの感染拡大によって、非接触型のオンラインサービスが注目されています。中でも、すでに多くのサービスが存在しているフィットネス業界は、非常に競争の激しい業界です。
今年の企業決算では、NikeやIululemon athleticaなど、フィットネス業界の周辺企業もその恩恵を受けていますが、ユーザーを“強烈に引きつけるような特徴”がなければ、持続的な利益を得るのは非常に難しい業界でもあります。そうした業界で、現在大きく利益を伸ばしているのが、Pelotonです。
2012年に創業したPelotonは、フィットネスジムにいるのと同じ設備と環境を提供することで、顧客を増やしているフィットネスサービスです。ユーザーはPelotonが開発した2,000USドル(約21万円)以上する高額なエクササイズ・バイクやトレッドミルを購入して、有料のアプリからインストラクターのレッスンに参加します。
通常、フィットネスサービスでは離脱者も多いものです。Pelotonは動画配信やイベントを行い、顧客同士の交流やコミュニティに重点を置くことで、フィットネスでの孤独感を軽減しています。直近の四半期決算でも毎月の平均解約率は0.65%と、顧客にとって満足度の高いサービスであることが伺えます。
今回紹介した「Apple Fitness+」も、自社製品を利用しなければ体験できない“独自のサービス”として提供されており、ワークアウトの内容を見ても、Pelotonのビジネスモデルの良い部分をかなり取り込んでいる感じがします。
今月にはウェアラブル企業FitbitのGoogle買収がEUの欧州委員会で承認されるなど、いよいよ大企業が本格的に参入する流れとなっています。フィットネス業界の売上は年々拡大しており、今後も新しいサービスが次々と登場するでしょう。規模だけではなく、サービスの質が問われ始めることで、いよいよ戦国時代となりそうな業界の動きにも要注目です。
ワンクリックで、すぐにゲーム
世界初のインスタントプレイゲーム会社として、何十億人もの人が一緒に遊べるゲームを制作しているPlaycoのウェブサイトです。
Playcoでは、スマートフォンなどにアプリをダウンロードすることなく、リンクなどを共有すればすぐに遊べるゲーム、いわゆるインスタントゲームの開発・プロデュースを行っています。
基本的に、SNSなどを通じてゲーム無料で提供しながら、ゲーム内のアイテムなどの課金と広告表示で収益を得るというのが、Playcoのビジネスモデルです。
今年9月に会社設立とともに100億円の資金を調達したことを発表しており、すでに評価額は1,000億円を超えています。同時にFacebookやSnapchatなどのSNSとの提携も発表しており、すでにFacebookに2つのインスタントゲームをリリースしています。
再び、インスタントゲームの時代が来るか
2010年頃、日本でも携帯電話をベースとしたソーシャルゲーム市場が爆発的に成長していました。その後、スマートフォンの普及に伴って、アプリによるゲームが主流となり、現在では、世界中のゲームデベロッパーがアプリを中心としたモバイルゲームを提供しています。
モバイルゲームの拡大とともに、デベロッパーの経営上の課題は増えました。新規参入者による競争激化やゲームの質を上げるための開発費の増大だけではなく、大多数のユーザーを獲得するための広告やマーケティング費用の増加や各アプリストアで課される手数料問題など、特に収益面で多くの課題が存在します。
こうした課題に対して、Playcoでは小規模なグループの熱狂的なユーザーを獲得すること、ユーザーが頻繁に利用するSNSなどのプラットフォームで勝負すること、アプリストアを経由せずにゲームを配信することで、収益化を実現しようとしています。
オランダのゲーム市場調査分析会社Newzooによる「2020年の世界のモバイルゲーム市場」に関する調査では、PC(前年比6.2%増の374億USドル)やゲーム機(前年比21%増の512億USドル)の市場と比較して、モバイルゲーム市場の前年比と売上(前年比25.6%増の863億USドル)は大きく成長しています。
来年以降もモバイルゲーム市場は強い成長が見込まれており、ゲームデベロッパーにとっては、モバイルゲームからの収益獲得が重要視されています。ここ数年、豊富な資金を持つ大手ゲームデベロッパーは、中小のゲームメーカーを数多く買収しています。こうした多額の投資は、拡大するモバイルゲーム市場を考えれば当然で、今後もさらに増加していくでしょう。
2020年は、新型コロナウイルスの影響もあり、ゲームビジネスは非常に好調でした。外出や行動が制限されたことや、在宅勤務などの空いた時間を、ゲームに時間を費やした方も多いかと思います。クラウドゲームやVRなど、技術の進化とともに進歩していくゲームビジネスに、今後も注目していきたいと思います。
「Flashコンテンツ」は、まだ終わらない
「Adobe Flash Player」のエミュレーター、「Ruffle」のウェブサイトです。
「Ruffle」は、プログラミング言語のRustで記述された「Adobe Flash Player」のエミュレーターです。Linux、Mac OS、Windows用のデスクトップアプリケーション、「Firefox」「Chrome」「Edge」「Safari」のブラウザ用拡張機能、WebAssemblyを使ってウェブサイトで利用するためのファイルを提供しています。
互換性については、Flashコンテンツで使用されるプログラム言語「ActionScript」もサポートされていますが、現時点では「ActionScript」のすべてのバージョンで完全再現ができていません。このため複数のファイルを読み込んで構成されるような、大規模なウェブサイトやアプリケーションの再現はまだ難しいでしょう。
Flashが創り出し、残したもの
数ヶ月前から、システムにインストールされた「Flash Player」のアンインストールを勧めるダイアログを目にしている方も多いのではないでしょうか。
Adobeは、2020年12月31日をもってFlash Playerをサポートを終了し、2021年1月12日以降は「Flash Player」でのFlashコンテンツの実行をブロックすることを正式に発表しました。
「Chrome」「Firefox」「Edge」「Safari」などの主要ブラウザは、「Flash Player」サポート終了日以降のアップデートから「Flash Player」の実行を無効にするため、ブラウザ上でFlashコンテンツの再生ができなくなります。
「Flash Player」のサポート終了については、すでに3年前の2017年の7月に発表が行われています。その後、Flashの代替技術やアプリケーションが整ったことや、現在多くのウェブサイトでFlashコンテンツが使用されていないことから、大きな混乱はないと思われます。
ただし、「Flash Player」サポート終了に伴って、高い技術が要求されるゲームなどの一部サービスでは、新たな技術に移行できずにサービス終了となる事例も出ています。昨年は圧倒的な表現力で人気を博したPC版「アメーバピグ」が終了しました。また2009年から11年間続いてきたFlashゲーム「FarmVille」のサービスも今年で終了します。
「Flash Player」のサポート終了で、ブラウザ上から姿を消すFlashコンテンツですが、ウェブサイト上で軽量なアニメーションを実現することから始まり、画像や音声、インタラクティブな機能などを次々と盛り込みながら、ウェブサイトにおける表現の可能性を大きく広げてくれた素晴らしい技術であったと思います。
「Flash Player」のサポートが終了するまでは、まだ少し時間もありますので、可能な限りFlashの動作するウェブサイトなどを巡ってみてはいかがでしょうか。私も年末年始の空いた時間を利用して、過去のさまざまなウェブサイトをめぐりながら、誕生から20年間のFlashの歴史をゆっくりと振り返りたいと思っています。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。