Webゆえに考える テキスト編集のテクニカルコンセプト

第1回まずはWebのメディア特性を頭に入れよう

Webに限らず、メディア広告におけるコピーや説明文は、広告のパフォーマンスを大きく左右する重要な要素です。

魅力的なタイトルであるほど読まれやすく、説明文がわかりやすく・面白く書かれているほど細部まで読んでもらえて、説明の説得力が強ければ強いほどユーザーをその気にさせる…このことに異論を挟む余地はないでしょう。

「でも、自分は書くのが苦手だから…」いえいえ、悲観しないでください。文章を書くことはスピーチをすることに似ていて、鍛えれば誰でも上達します。また、作家やエッセイストを目指すのなら別ですが、用意された原稿を"売り物"として耐える品質に仕上げるだけなら、あくまで技術的な問題として克服することが可能です。雑誌や新聞の編集現場がそうであるように。

いずれにせよ、まずは基礎を固めましょう。本連載では、広告編集の分野で"原則"とされる注意点について、Webの特性をふまえながら一通り説明していく予定です。漏れなく頭に入れておけば、プロの現場で最低必要な能力は身に付くだろうと考えています。

Webという"場"を考えよう。答えは自ずと見えてくる

さて、連載の第1回ということもあり、最初にWebのメディア特性についておさらいしておきたいと思います。掲載メディアの特性を理解しておくことは編集作業の大前提であり、作業全体の道しるべとなります。自分に何が足りないか、何を学ぶべきか、その答えも見えてくることでしょう。

1.全世界に情報が配信される

有料制・会員制のサイトを除いて、ひとたびWeb上に掲載した情報は、世界中の人に閲覧される可能性があります。どれほど低予算/短期間で作る場合でも、情報の誤り、不適切な言葉、誤脱字などの稚拙なミスを無くしておくことは、必須の課題となります。

2.読者が厳しい

Webは多数の競合情報を、簡単に・無償で比較できるメディアです。Webのユーザーにはわずかなストレス・魅力不足を感じだけで他のサイトに移動してしまう傾向があり、一般的に印刷物よりも高い文書品質・魅力的な表現が要求されます。

3.最初の印象で判断されやすい

Webは目的外の情報にランディングしてしまう機会が多いメディアであり、Webのユーザーには、はじめにページを流し読みした時の印象で、本文を読むかどうかを判断する傾向があります。また検索を繰り返す労力を惜しみ、一度定着したサイトに対しては、欲しい情報が無くなるまで辛抱強く読む傾向もあります。とくに、タイトル・見出し・ヘッドラインなどのコピーは、判断材料にされやすい部品です。本文の概要が伝わりやすく、キャッチーなコピーにしておくなどの工夫が欠かせません。

4.どのページから読み始めるか特定できない

集客を外部プロモーションに依存する場合を除いて、ユーザーの多くは検索サービスを経由してサイト上の個々のページに直接訪問します。必ずしも書籍のようにトップページから順番に読まれる訳ではないので、全てのページが入り口になることを意識した構成にしておくことが重要です。

5.総じて信頼性に乏しい

掲載情報に一定の審査・暗黙の保証があるマス広告に対し、Webは誰もが匿名で情報を発信できる"気軽"なメディアです。有名な企業・団体のサイト、著名人のブログなどを除いて、ユーザーはWeb上の情報に対して常に猜疑心・警戒心を抱きながら閲覧しています。効果効用を謳う場合は十分な根拠を示し、事業の実在性・約束事などについても細かく説明するなど、読者に信頼してもらうための工夫が欠かせません。

6.紙媒体に比べ目が疲れやすい

ディスプレイ上の文章は印刷物に比べて目が疲れやすく、長時間の閲覧には向いていません。文字ばかりにしない、文字の大きさやデザイン・レイアウトに気を遣うなど、少しでも見やすい"誌面"に仕上げておく必要があります。また、読み返さず一度で理解できるように、わかりやすくまとめておく配慮も欠かせません。

7.ページの一部分しか一度に表示されない

多くの場合、Webはページの内容が1画面内に収まり切らず、全体を見るにはスクロール操作を余儀なくされます。訴求力の強い情報ほど画面上部に配置するなど、最初に見える情報だけで先を読みたいと感じさせる工夫が欠かせません。

8.閲覧環境によって見栄えや使用感が異なる

Webは、ユーザーが使用するOS環境、ブラウザ環境、ディスプレイ環境、ネットワーク速度やコンピュータの処理能力などによって、見栄えや使用感が異なります。制作者が普段使用する環境ではなく、まずはスタンダードな閲覧環境での完成度・ユーザビリティを第一に考える必要があります。場合によっては、マイナーな閲覧環境での可読性についても考えなければなりません。

9.ハイパーリンクで情報がつながる

Webは、任意の文字列・オブジェクトから他の場所にジャンプすることのできるハイパーテキスト文書です。外部リンクを上手くつかうことで情報の価値を高めることが出来ます。また、基本的にはサイト内のページを移動するのにもリンクを用います。サイトを深く読み進めて貰うためには、リンクバーの配置や、アンカーテキストのコピーライティングの質が大変重要になります。

10.各種の技術仕様に縛られる

Webは様々な仕様/規格に基づいて作られる電子文書であり、文章構造や文字や見栄えに一定の縛りがあります。特に、HTML/XHTMLの仕様を理解しないままコンテンツをまとめてしまうと、後のコーディング作業が難解・複雑なものになりがちです。単にテキストを調整するだけでも、一定の知識を持った上で作業に臨むべきでしょう。

「あたりまえ」と軽視せずしっかり頭に入れておこう

他にも色々挙げられると思いますが、テキストの編集に関係するものは大体こんなところだと思います。

「なんだ当たり前のことばかり」そう感じる方もいるでしょうが、その"当たり前"が出来ていないサイトの方が多いのも事実です。軽視せずしっかり頭に入れておきましょう。

それでは、次回からは、どんな点に注意して、文章をどのような「状態」にすべきなのか、具体的に説明していきます。

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