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第4回可読性を高める(3)"音のつながり"をきれいにしよう

しどろもどろのスピーチを聴くのは誰でも苦痛なものです。文章も同様に、読んでいて"息苦しさ"や"テンポの悪さ"を感じさせるポイントがあると、読者は強いストレスを感じます。単に"分かる"ようにするだけでなく、"音のつながり"を美しく整えておくことは、文章の可読性を考える上で最も重要な課題の一つです。

人は頭の中で声を出しながら文章を読んでいきます。まずは以下を参考に、実際に声に出してみたときに不自然な部分をなくしていきましょう。誰もが"流ちょう"だと感じるレベルまで美しくするのは大変ですが、閲覧を妨げるほど"聴くに堪えない"状態からはすぐに抜け出せるはずです。

読点は出来るだけ少なめに、適切な位置に

はじめに注意したいのが読点「、」の数と位置です。読点は文意を区切るだけでなく、無音の1文字=いわば文章の"4分休符"としての役割も持っており、数が多すぎたり、誤った位置にあると、読み上げたときのリズム感が大きく崩れます。そうはいっても、読点を全く打たないのも"息苦しさ"の原因になります。

例文のように無いと読み間違える・紛らわしさが出る部分にはしっかりと打って、あとは出来だけ減らすように心がけましょう。慣れないうちは読点をいったん全部消してから、改めて打ち直してみると上手くいくはずです。

【例】

むやみに打たない
  • 「防水性の、高い製品なので、どんな大雨でも、安心です」
    ⁠防水性の高い製品なので、どんな大雨でも安心です」
無いと言葉の切れ目がはっきりしないときに打つ
  • 「当社でははっきりとした対応を~」
    ⁠当社では、はっきりとした対応を」
情報を列挙するときに打つ
  • 「この商品のサイズは高さ90cm幅130cm奥行き100cmです」
    ⁠この商品のサイズは、高さ90cm、幅130cm、奥行き100cmです」
接続詞の後に打つ
  • 「そしてこの商品の最大の特徴が」
    ⁠そして、この商品の最大の特徴が」

一文は短めに区切る

次に注意したいのが、句点「。」で区切られる一文の長さです。一文が長いと読点を打つ量も増え、読点の位置を決めるのが難しくなります。また、一文は「どんな・何が~どうだから・どうした」というメッセージの最小単位であり、あまりに長すぎると理解の妨げにもなります。一般的には、大体40~60字程度におさえるのが良いと言われていますが、字数にとらわれる必要はありません。⁠なるべく短く、細切れにならない程度に」と意識しておきましょう。

【例】

  • 「忙しい毎日を頑張っているお父様のために、毎月1回、専門医が直接ご家庭に訪問して、健康診断と栄養指導を実施するとともに、万一の入院時にはなんと2日目から休業保障が付くなど、とにかく"安心"を第一に考えてご用意した保険プランです。」⁠113字)
  • 「忙しい毎日を頑張っているお父様のために、とにかく"安心"を第一に考えてご用意した保険プランです。毎月1回、専門医が直接ご家庭に訪問して、健康診断と栄養指導を実施。万一の入院時にはなんと2日目から休業保障がつきます。」⁠48字 32字 26字)

接続詞は出来るだけ減らす

説明的な文章ではついつい接続詞を多く使ってしまいがちです。接続詞が多いと"ぶつ切り感"が出て文章のリズムを崩します。話の展開が大きく変わる部分を除いて、出来るだけ削ってしまいましょう。そもそも接続詞は前後の文の因果関係をハッキリさせるために使うものであり、大半は無くても意味が通じるはずです。

同じ形を3回以上繰り返さない

文中で同じ音が何度も繰り返されると、しつこくて"耳障り"です。連続して同じ音でつながない、同じ文末表現を繰り返さないように気を付けましょう。筆者の経験では、3回以上同じ形が連続する部分は、誰が読んでもしつこさを感じるようです。

【例】

連続して同じ音でつながない
「あなた指定ジャンル新譜CDを毎週お届けします」
⁠あなた指定したジャンル新譜CDを毎週お届けします」
同じ文末表現を繰り返さない
  • 「小腹が空いたときにピッタリの量になっています。たった5分で出来たてのおいしさを再現します。カロリー控えめでダイエットにも向いています。」
    ⁠小腹が空いたときにピッタリの量になっています。たった5分で出来たてのおいしさを再現。カロリー控えめでダイエットにも効果的です

修飾部/被修飾部の配置に気を付ける

修飾部はメッセージの「どんな・何が」における「どんな⁠⁠、被修飾部は「何が」の部分のことです。修飾部が被修飾部の意味を詳しくすることで、説明は具体的なものになっていきます。

もし修飾部と被修飾部が離れていたり、記述する順番がまずいと、頭の中で意味のつながりを整え直すことになり、結果として閲覧のリズムを崩します。ひとまずは「修飾部はそれが直接修飾するものに近づける」⁠並列する修飾部が2つ以上ある場合は長いものから順に書く」この2点に気をつけて配置しましょう。

【例】

修飾部は被修飾部と近接させる
  • 明確な、弊社の特徴は・・」
    ⁠弊社の明確な特徴は・・」
長いものから順に書く
  • 「一般的な、あらかじめストックされた商品を加工する製法とは異なり・・」
    ⁠あらかじめストックされた商品を加工する、一般的な製法とは異なり・・」

長い括弧書きの挿入は避ける

説明の意味を補足するために、文中に括弧書きの説明を挿入することがよくあると思います。しかし、日常会話では括弧書きを使うような話し方はしません。あまり長い説明を挿入すると説明が間延びしてしまいますので、難しい言葉の注釈であったり、引用文の引用元を紹介するようなやむを得ない場合を除いて、括弧書きを使うのは出来るだけ避けるようにしましょう。

冗漫な表現を削る

同じ意味の言葉を重ねてしまったり、無くても意味が通じる言葉を間に挟んでしまうといった冗漫な表現も、"間延び"の原因となる要注意ポイントです。削れる言葉は無いか、もっと短く言い換えられないか、よくよく見直しておきましょう。

【例】

同じ意味を持つ言葉の重複を無くす
  • 「8/1~8/31の一ヶ月間に限り~」
    ⁠8月に限り~」
無くても意味が通じる言葉を削る
  • 「~することが出来ます」
    ⁠~出来ます」

まとめ

以上3回にわたり、文章の可読性を確保するための初歩的な注意点をいくつか紹介してきました。後半2回の内容は、ツールなどを用いて機械的にチェックすることも出来るのですが、それはあくまで基本が身に付いていてのこと。はじめから全てを頭に入れて作業に臨む必要はありませんので、簡単に出来そうなことから少しずつ取り組んでみてください。大体数千~一万字も経験を積めば、あえて"乱文"を書こうとしても、もはや書けなくなっている自分に気付くはずです(ツールについては連載の終わりの方でお話ししたいと考えています⁠⁠。

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