Webゆえに考える テキスト編集のテクニカルコンセプト

第10回公開に差し支えのある問題を無くそう(2)必須の校閲項目/品質編

内容面のチェックが済んだところで、最後に考えなくてはならないのが品質面のチェック、いわゆる「文字校正」です。

特に広告目的のコンテンツでは、文中に残る"アラ"が取り引きをためらわせる直接的な要因にもなるため、極力見逃しの無いようにしなければなりません。

編集・ライティングの中で、最も機械的で、面白みも少なく、正直なところただただ面倒な作業ですが、根負けせずに頑張りましょう。

文章の破損箇所を無くす

コンピュータを使った執筆作業は、文章の修正が簡単にできて便利ですが、タイプミス、変換ミス、文字の消しすぎや消し忘れ、コピー&ペーストの失敗などから、文章の破損箇所も多く発生します。

誰が見ても"間違い"とわかる問題だけに、あまり多く残してしまうとひどく"いい加減"な印象をユーザーに与えてしまいます。1文字1文字ていねいなチェックを心がけましょう。

【例文】
  • 脱字:お安くなています → お安くなっています
  • 誤字:当日発想可能です → 当日発送可能です
  • ダブり:いつでも対応しします。。 → いつでも対応します。

言葉の間違い、日本語としての本則からのズレを無くす

言葉は時代と共に変化していくものです。日常会話では、相手に伝わりさえすればどんな言葉の使い方をしても構わないでしょうが、広く一般に公開する文章、特に企業や団体の公式な文書でそうはいきません。ユーザーに書き手の国語力を疑われないためにも、日本語の本則に従って記述しておくのが基本です。

辞書や各種の用語集、文化庁が発表している国語表記のガイドラインなどを参考に、正しい表現・正式な表記にしておくよう気をつけましょう。

意味の履き違い・用法の間違い

説明の魅力・説得力を引き上げようとするあまり、語感ばかりを優先して、その言葉本来の意味から外れた表現を使ってしまうことが良くあります。例文のように、半ば一般化しているものであっても、企業や団体の文書では、より正確に表現しておくべきでしょう。

【例文】
  • 再チャレンジで汚名を挽回しましょう
    → 再チャレンジで汚名を返上しましょう or 再チャレンジで名誉を挽回しましょう
  • とてもエコロジーな商品です
    → とてもエコロジカルな商品です or とても環境に優しい商品です

固有名詞の表記の間違い・本則とのズレ

社名・商品名・個人名のように漢字/かな/カナの表記が厳密に決められているものは、間違った表記になっていないか十分なチェックが必要です。また外来語・外国人名のようにカタカナ表記になるものについても、できるだけ本則に従った表記にしておきましょう。

【例文】
  • 三菱電気 → 三菱電機
  • キャノン → キヤノン
  • アボガド → アボカド
  • モルジブ → モルディブ
  • ベートーヴェン → ベートーベン

ら抜き言葉

かつて「若者言葉」であった「ら抜き言葉」は、既に広く一般に定着しているものですが、現時点では国語審議会に正式な標準語として認められていません。公的な文章では本則に従った形にしておく方が良いでしょう。

【例文】
  • 食べれます → 食べられます
  • 止めれます → 止められます

環境に依存する文字をなくす

Webコンテンツ特有のチェック項目として、いわゆる"機種依存文字"があります。閲覧環境によって文字化けするだけでなく、制作チームの中に異なるOS使用者がいる場合には作業の妨げになる場合があるので、テキストから一切排除しておくのが基本です。

ビジネス文書でよく使われるローマ数字、丸付き文字、括弧つき文字は、環境依存をおこす可能性が高い文字なので、できるだけ他の文字に変更できないか検討してみましょう。問題性がある文字を抽出してくれるツール・マクロも数多く出回っています。

もっとも、文字の振る舞いを全て把握するのは難しいのが実際のところで、問題となる文字・ならない文字は、使用するフォントセットやエンコードの種類によっても異なります。あまりツールに依存してしまうと、本当なら使えたはずの文字を、わざわざ他の文字に置き換えてしまうことにもなるので要注意です。やはり、対象とする全ての閲覧環境でチェックすることが、本当の理想であることをお忘れなく。

【例文】
  • 「ⅠⅡⅢ⁠⁠→⁠I II III」
  • 「①⁠⁠→⁠1⁠⁠ or ⁠(1)」
  • 「㈱」⁠℡⁠⁠→⁠(株)」⁠TEL」

表記揺れを無くす

長い文章を書いていると、どうしても言葉の使い方や表現手法に"揺れ"が生じてしまうものです。文章には書き手の個性が現れるため、複数の人間で作ったコンテンツにはかなり多くの表記揺れが発生します。

ひとまず、1ページ内の表記さえそろえておけば、ユーザーが不快に感じるほどの揺れは無くなります。それを最低限のタスクと考え、なるべくサイト全体での統一を意識して作業を進めましょう。

文体

【例文】
  • 私たちは、日々技術の向上に努めている。なぜなら、お客さまの期待に添うには、どこにも負けない技術が必要だからです。
    → 私たちは、日々技術の向上に努めています。なぜなら、お客さまの期待に添うには、どこにも負けない技術が必要だからです。
    (ですます調に統一)

見出し・箇条書きにおける文末句点の有無

【例文】
  • こんな魅力が満載の電子レンジです。
    • スイッチ1つでセンサーが最適な時間を計算
    • オソン殺菌でお掃除知らず
    • 回転テーブルが無いのでぎりぎり一杯まで入ります。
    • → こんな魅力が満載の電子レンジです
      • スイッチ1つでセンサーが最適な時間を計算
      • オソン殺菌でお掃除知らず
      • 回転テーブルが無いのでぎりぎり一杯まで入ります
        ⁠句点を打たない形に統一)

数字・単位

【例文】
  • 十時から17時の間にご連絡ください。当店から10km圏内なら当日中に、50キロ圏内は翌日中に修理にうかがいます。
    → 10時から17時の間にご連絡ください。当店から10km圏内なら当日中に、50km圏内は翌日中に修理にうかがいます。
    (英数に統一)

半角と全角

【例文】
  • 常識を覆す16GBのメモリ容量。MP3形式でなんとCDで24000枚分の音楽を収録できます。
    → 常識を覆す16GBのメモリ容量。MP3形式でなんとCDで24000枚分の音楽を収録できます。
    (英数は半角に統一)

漢字・仮名表記

【例文】
  • ○×インターを出て国道○号をまっすぐ進んでください。電車でお越しの場合は、△□駅で降りて下さい。
    → ○×インターを出て国道○号をまっすぐ進んでください。電車でお越しの場合は、△□駅で降りてください。
    (⁠⁠ください」に統一)

カタカナ用語の表記

【例文】
  • 何か素敵なアイディアがあれば、ぜひお知らせください。これまでもお客さまのアイデアをもとにした作品がたくさんあります。
    → 何か素敵なアイデアがあれば、ぜひお知らせください。これまでもお客さまのアイデアをもとにした作品がたくさんあります。
    ⁠アイデア」に統一)

用語の選択

【例文】
  • PCの常識を打ち破る「超」簡単設定。このパソコンなら、初心者の方でも、たった5分でインターネットを始められます
    → パソコンの常識を打ち破る「超」簡単設定。このパソコンなら、初心者の方でも、たった5分でインターネットを始められます
    (⁠⁠パソコン」に統一)

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