Webゆえに考える テキスト編集のテクニカルコンセプト

第11回公開に差し支えのある問題を無くそう(3)効率的な作業のための原則的テクニック

校正は何かと細かい作業です。基本的には、文章に含まれる全ての文字を"飛ばさず"に読んでいく必要がありますし、問題を問題として見つけ、それを正しく修正できるだけの様々な知識も必要になります。

だれでも楽に、完璧な校正ができるようになる"万能薬"のようなテクニックはありませんが、作業の効率や精度は工夫次第で随分と高まります。たとえば、以下のような基本的な注意を徹底するだけでも結果は大きく変わりますので、一通り頭に入れておきましょう。

別の人のチェックを入れる

自分で書いた・編集した文章は、なかなか"アラ"を見つけにくい・直しにくいものです。内容面での間違いや、言葉の誤用などはまったく気づかない場合もありますし、言葉のつながりがまずい部分も考えた末にその状態になっているわけであり、微妙だとは感じつつもそれが最善だと判断してしまいがちです。

したがって、校正作業は、基本的には一人で行うべきものではありません。チェックする人数が多ければ多いほど校正漏れは減りますので、少しでも多くのスタッフを確保しておくのが望ましいでしょう。

しばらくしてからチェックする

どうしても一人で校正をしなければならない場合には、原稿を一度"寝かして"から作業に入るようにしましょう。頭の中からその文章のことを一回消去することで、あたかも他人になったように、冷静な視点で文章のアラを見つけられるようになります。

どれだけの時間を置くべきかは、人によっても、原稿のボリュームによっても変わりますが、筆者の場合、最低でも半日以上は間を空けるようにしています。

〆切間近で急ぐときはそんなに悠長に構えていられないかもしれませんが、そのまま無理に続けるより作業の精度は間違いなく上がりますし、効率が上がる分、むしろ時間を短縮できることもあります。もちろん、はじめから"寝かす"分の時間を考えて、スケジュールを組んでおくことが肝心です。

"音読"でチェックする

校正するときは原稿を"音読"でチェックするのが理想的です。一字一句声に出すことで、流し読みすることがなくなって語脱字の見逃しが減りますし、説明のわかりにくい部分、リズム感の悪い部分もかなりハッキリとします。

静かなオフィスなど、音読するのが難しい場合もあるでしょうが、そういったときでも、心の中で声を出すイメージを持ってチェックするように心がけましょう。ただの"黙読"とは作業の質が変わってきます。

もしスクリーンリーダーなどの音声読み上げソフトを持っているなら、パソコンに音読させてしまうというのも上手なやり方です。

プリントアウトしてチェックする

一般的に、文章を一度プリントアウトして紙でチェックする方が、ディスプレイ画面上でチェックより精度の高い校正ができます。ディスプレイ画面上の文字は、印刷物よりずっと見づらいため、どんなに気をつけているつもりでも、細かい部分を読み飛ばしてしまいやすいのです。

一見、紙の無駄にも思えますが、問題を見つけたときその場所に直接指摘を書きこめること、複数の人間で校正する際にその結果をまとめやすいことなど、編集上のメリットも見逃せません。

Web編集に関する参考書のほとんどが紙での校正を推奨していますし、実際に多くのWeb制作業者が、テキストの最終チェックを紙で行っています。

各種の校正支援ツールを活用する

パソコンで文章を編集している以上、自動化できることは、極力自動化しておきたいものです。校正支援を目的としたツール・スクリプトは、有償/無償を問わず多数公開されていますので、日ごろからアンテナを伸ばしておくと良いでしょう。以下、筆者がお勧めするツールをいくつか紹介しておきます。

Microsoft Word

意識して使ったことのある人は少ないかもしれませんが、Wordには表記揺れ、ダブり、日本語表記の本則から外れる表記、タイプミスといった問題を、抽出/強調表示する機能が付いています。使い方次第で強力な校正ツールになりますので、マニュアルやヘルプページを一度よく確認しておきましょう。普段Wordでは文章を書かないのに、校正作業のためだけにインストールしているライターも、たくさんいます。

図1 Microsoft Word
図1 Microsoft Word
ジャストシステム JustRight

用字用語チェック、表記統一、校正辞書の共有、各種アプリケーションとの連携機能など、とにかく内容の充実した本格的な校正支援ソフトです。どう使いこなすかに悩むことはあっても、機能不足は感じないはずです。どちらかというとプロユースのソフトですが、初心者にも使いやすく、3万円弱と安価なので、日常的に校正作業に従事している人は、購入しておいて損はないでしょう。

図2 ジャストシステム JustRight
図2 ジャストシステム JustRight


Dreamweaver CS3 全角・半角変換拡張機能

Dreamweaver CS3用のプラグインです。複数のファイルに対して、カナと英数字の全半角の置き換えができるほか、機種依存文字を通常の文字に変換することもできます。同様のプラグインは各種のテキストエディタにも用意されていますが、Dreamweaver上でそのまま変換できるのは、Web制作者としては大きな魅力です。

図3 Dreamweaver CS3 全角・半角変換拡張機能
図3 Dreamweaver CS3 全角・半角変換拡張機能


Text-SS

Yamashita-Yさん作のフリーウェアです。複数のファイルに対して、複数語句の置換を同時にかけることができ、サイト全体での表記統一に大変役立ちます。残念ながらUTF-8未対応のまま更新が止まっており、公式サイトも閉鎖されていますが、様々な人がこのツールの活用方法を紹介しているので、情報には困らないはずです。

図4 Text-SS
図4 Text-SS


日本語文章校正ツール

筆者が公開している無償のWebツールです。Yahoo!Japanが無償公開しているAPI「校正支援Webサービス」を利用したもので、BlogやCMSの管理画面からチェックできる機能も持たせてあります。同APIは、多くの編集者が校正のガイドラインとして使っている日本新聞協会の「新聞用語集」共同通信社の「記者ハンドブック」を参考にしているため、用字用語の問題については、かなり的確に指摘してくれます。機種依存文字のチェックもできるので、ぜひ一度試してみてください。

図5 日本語文章校正ツール
図5 日本語文章校正ツール

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