はじめまして。hxxk.jpの望月真琴です。ふだんはWebと全く関係のない業種で仕事をしていますが、このように時々テクニカルライティングを行っています。
2007年3月に株式会社 九天社から『実践Web Standards Design』(通称:ホップ本)という(X)HTMLとCSSのガイドブックを共著で出版し、2度の増刷を経て、このたび新装版としてここ技術評論社から再刊行させていただくことになりました。
技術評論社から刊行される新刊図書は、新刊ピックアップというページで紹介がなされるのですが、打ち合わせの中で編集担当の高橋さんから「せっかく3人が共同で執筆されているのだから、発売にあわせてgihyo.jp上でリレー連載なんてどうでしょう?」という話が持ち上がり、「それ、面白そうですね!」と私が一も二もなく賛同したことからこの連載が実現しました。
――その時は、他の2人は打ち合わせに参加できなかったので、事後承諾になってしまいましたが。
今回を皮切りに、著者それぞれが得意とする分野で短期集中連載という形で書かせていただきますので、よろしくお願いします。
Web制作を学ぶ際の最良の学習資料って?
さて、皆さんは小学生や中学生の頃に国語や算数、英語などの学習をする際に、学習資料は何を使っていたでしょうか。ほとんどの人は、学校指定の「教科書」を使って学習していたと思います。この場合の「教科書」は文部科学大臣の検定を受けたもので、同じ科目、同じ学年用であっても多くの種類があります。
では、Web制作を学習する際に使う学習資料は何を使うのでしょう? Webの場合は、国語や英語と違い、技術仕様に基づいて学習を行うべきなので、W3CやISOなどが策定している仕様を直接読んで学習することが、最も正確な理解への近道といえます。先生や先輩に指導をしてもらったり、第三者が書いたガイドブックを用いて学習をしたりする場合は、どうしても仕様の記述に関する第三者の解釈が混ざってしまいます。
もちろん、仕様書自体も人間が作るものではありますが、多くのエディタが議論を重ねながら段階を経て策定を行い、また一般ユーザからの意見を反映して改訂なども行われますので、やはり仕様書を直接読みとることが一番です。
ガイドブックを選ぶなら仕様に沿ったものを
しかし、仕様書はその仕様を正確に、詳細に記しているため、一読しただけで仕様を理解するのはかなり難しいと思います。そこで、やはりガイドブック等を副読本にしながら仕様を読み解いていくことになりますが、そのガイドブックの選択はどうすればよいでしょうか。
まず、仕様に基づいた解説を行っているものを選ぶ、ということが最低条件です。今でこそWeb標準が重要視されるようになり、仕様書の内容に沿っていない本は少なくなりましたが、まだまだ全ての本が仕様書の記述を基に適切な解説をしているとは限りません。
そこで、事前にその本の情報をWebで収集し、選択の参考にすることをお勧めします。書店に足を運び、現物を手にとって内容を確認することができれば良いのですが、一般書に比べ比較的大規模な書店にしか在庫が無かったり、あるいは在庫があっても、店頭の確認だけで「仕様に基づいているか?」という判断を行うのはなかなか難しかったりするでしょう。Web制作に関するガイドブックの場合は、ジャンルの特性上著者自身がWebサイトを持っていることが多く、ポートフォリオを見つけるのも比較的容易です。また、各種オンライン書店や個人のブログ上での書評も、一般書に比べ豊富に書かれています。
『実践Web Standards Design』の内容は?
――と、前置きが長くなりました。私自身、これまで何冊ものWeb制作、とりわけ(X)HTMLとCSSの本を中心に購入して学習してきました。ある程度学習が進み、直接仕様書から学習をするようになった後も、他の人がどんな解釈をしてどんな解説を書いているかを知るために購入を続け、今では(X)HTMLとCSSのガイドブックだけでも10冊以上所持しています。
『実践Web Standards Design』では仕様書――主にXHTML 1.0 (Second Edition)およびCSS 2.1の内容を重要視しているため、それらの既存のガイドブックの内容は直接的には参考にしていません。しかし、それらを読んできたことで「自分だったらこういう解説をするなあ」「こういうポイントを重点的に解説してほしいなあ」という視点を育て、自分が最も欲しい、読みたいという解説を書き記しています。
『実践Web Standards Design』は、今回初めて世に出るガイドブックではありません。もしかしたらあなたの身近な人が以前購入しており、感想を直接聞くことができるかもしれませんし、Amazonのレビューなども多く寄せられています。『実践Web Standards Design』でGoogle検索することで書評を探すこともできます。
著者たちのポートフォリオについては共有ドメインであるlh3.jpから辿ることができますし、また書籍の詳細な紹介、サポート情報などもそのサイトで提供しています。本連載という場で、しかも著者自身がこう発言するのはよろしくないかもしれませんが、この連載だけで判断するのではなく、事前に情報を充分に収集した上で、購入の選択肢に加えていただけると幸いです。
そうそう、2007年3月に株式会社 九天社から刊行した際に、表紙デザインにホップ(ビールの原料)が使われていたので、迷うことなく通称が「ホップ本」となったのですが、技術評論社版でもその意向を汲んでいただき、ホップをあしらったデザインになっています。新装版ですが、通称は引き続き「ホップ本」ですのでよろしくお願いします。
素材に使った乾燥ホップはサッポロビール株式会社北海道原料研究センター様にご提供いただきました。また、写真の撮影はphoto.67.orgの鞆岡 隆史様に手がけていただきました。
ちなみに、私は常々ビール好きということを公言しているためかよく尋ねられるのですが、九天社から刊行した版では私から「表紙をホップにしてください!」といったお願いはしていません。お任せしていたらそうなったんです。本当です。今回も「通称が引き続きホップ本になるように」とだけお願いしていたのですが、まさか愛飲しているビールを作られている会社から素材の提供を受けるということは予想していませんでした。」
――なんだか、次回の連載はこのままビールの話になりそうですが、次回からはこの連載のための書き下ろし(X)HTML+CSSネタを、書籍の内容と連動しながらお届けします。