海外テック情報局

プロダクトの大々的なローンチはやめよう

画像

Origamiという家族向けSNSを運営するVibhu Norby氏が、その前身であるEverymeというアプリを大々的にローンチさせた際の苦い経験をもとに⁠Don't Launch Your Product⁠というブログ記事に書いていました。

Everymeは2012年4月10日に公開されたiPhone向けアプリで、チームは3週間前からカウントダウンページを用意したり、TechCrunchなどのテックサイト向けインタビューを準備したりとローンチに向けて万全の体制が作られていました。

計画では、まず公開後に2万5,000~5万件のダウンロードを集めてApp StoreのSNSカテゴリでトップになり、それをベースに自然流入によるダウンロードを増やしていき、翌月にはAndroidアプリとWeb版も公開、うまくいけばMark Zuckerbergからディナーの誘いがきて10億ドルの小切手を手にできる、というもくろみだったようです[1]⁠。だいぶ強気の計画でしたが、EverymeはY Combinatorへの参加やシードラウンドの資金調達、TechCrunchへの記事掲載といった、有望なスタートアップがたどる道を通っていたため、それも自信につながっていたようです。

アプリ公開日の朝、投資家からのお祝いメールが届き、ツイートやFacebookへの投稿などが増え始めましたが、1時間もするとチームは様子がおかしいことに気づきます。ダウンロードペースは2万5,000件にはとても及ばず、TechCrunchからは数百人しか訪問者が来ない。ツイートはあるけれど、どれも実際のユーザのものではない。結局、初日の成果はSNSカテゴリで35位、1万1,000ダウンロードでサインアップは6,000件というもの。そのあとは、日を追うごとにサインアップ数が前日を下回り、数値の減少がチームの生産性や士気にも影響を及ぼしていく悪循環に陥りました。

この経験を踏まえて、大々的なローンチ戦略は次の点で間違っているとNorby氏は書いています。

  1. 「ローンチ」は評価指標を歪めてしまう。初日に膨大なサインアップがあり、翌日はそれが半減したような場合、そのあとの意思決定をミスリードしてしまう
  2. ターゲットではない層に向けた告知や集客からのフィードバックもミスリードを引き起こす
  3. 停滞による「悲しみの谷(trough of sorrow⁠⁠」に落ち込む。乱高下する指標に耐えるのは精神的につらい
  4. 次の資金調達時に不利となる。投資家に「6,000ユーザ中、熱烈なユーザは111人です」といったプレゼンをするのは難しい

「ローンチという言葉は、サービスから長期的な視点を欠落させて一種のギャンブルにしてしまう」とも。サービスを持続していくには、サインアップページを用意したあと、少数でもよいので熱烈なユーザを獲得してフィードバックを得ていくことが重要で、そのためにはメディアに頼るのではなくSEMSearch Engine MarketingやFacebook広告を活用していくのがよい、とのことです。

当然、同氏が現在運営しているOrigamiも明示的なローンチはいっさい行わない方針で運営されているそうです。

URLhttp://philosophically.com/dont-launch-your-product

著者プロフィール

安藤祐介(あんどうゆうすけ)

9/14に東京で開催されるPHP カンファレンス 2013に向けて準備におおわらわです!

Twitter:yando

小倉純也(おぐらじゅんや)

合併や買収で終了していく海外のサービスを動態保存してコレクションしたいのですが、良い方法はないでしょうか。

Twitter:junya

溝畑考史(みぞはたたかし)

日本に向けて出張する可能性が出てきました。

Twitter:beatak

おすすめ記事

記事・ニュース一覧