ついにGoogle FriendConnectのAPIドキュメントが公開されました。この衝撃が分かるでしょうか。2009年3月13日はインターネットが大きく変わった日として歴史に刻まれるかもしれません。
GFCがなぜそんなに大事件なのか、いくつかの例をもって順に説明していきます。
なお、本文中で使用する言葉をあらかじめ定義しておきます。
- GFC:Google FriendConnect。
- プロバイダ:GFCにソーシャルグラフを提供するGoogleやTwitterなどのサービス。
- コンシューマ:GFCのAPIを使ってサービスを提供するソーシャルグラフを活用したウェブサービス。ブログ等も含む。
- ユーザー:コンシューマまたはGFCを利用する人。
オープンソーシャルウェブがついに本格始動
Facebookはじめ様々なSNSがオープン化以降取り組んできたのが、あらゆる外部サイトにソーシャルグラフ(人間関係)をエクスポートし、SNSの一部かのように取り込むことでした。Facebookは既にFacebook Connectとしてこの環境を提供し、影響力は徐々に拡大しつつあります。
対するGoogleは2008年12月、FriendConnectを一般公開し、簡単なHTMLとJavaScriptによるガジェットを貼るだけでウェブサイトをソーシャル化する手段を提供し始めました。しかし、これまではあくまでガジェットを貼るだけの連携過ぎず、サービスの一部として取り込むような連携は実現されていませんでした。
実はこれまでも、MySpaceIDやOpenSocial RESTful APIなど、オープン勢によるAPI自体は存在しており、理論的には上記のような連携は可能でした。ただ、その敷居の高さから、実際に利用されている例はほとんどなく、いかにコンシューマを呼び込むかが課題となってきました。
それがここに来て、GFCは既存の簡易な認証機構とAPIの公開という組み合わせをもって、オープンソーシャルウェブはひとつの完成形を迎えたのです。
簡易な認証機構の提供によるコンシューマの取り込み
サービス提供者にとって、今回公開されたGFCの認証機構は魅力です。OpenIDを使ってすら複雑なサーバー実装を必要とした認証が、HTMLファイルとJavaScriptの設置だけで実現できるのです。認証機能を完全に外部にたよることで、Cookieのパラメータでログイン状態を判断し、さらにそれを認可にも用いることで、サービス提供者は開発の手間を劇的に減らすことができます。
それだけではありません。ユーザー獲得の第一関門となるプロフィール項目も連携サービスからインポートできるため、サービス登録の敷居はグッと下がり、通常の登録プロセスを踏ませるよりも遥かに高い確率でユーザーを獲得することができるようになるのです。
ソーシャルグラフを活かした機能
ただプロフィールをインポートするだけなら、OpenIDでも良いかもしれません。OpenIDのIDPからプロフィールをインポートする方法もあります。しかしGFCは、プロフィールだけでなく、ソーシャルグラフをもインポートすることができます。
同じプロバイダに登録しているユーザーはGFC上で自動的に友達として扱われるため、コンシューマはこのソーシャルグラフを生かした様々な機能を提供することができます。
アクティビティストリームによるバイラル効果
せっかく簡単に登録できたり、友達が居ても、サービスを見つけてもらえなければ存在しないも同然です。そこでアクティビティストリームが登場します。
アクティビティストリームは常に友達の最新情報を伝えてくれる、ソーシャルネットワークならではの機能です。mixiの最新日記やFriendFeedのタイムラインを思い浮かべていただければ分かりやすいでしょうか。
GFCのコンシューマとなったサービスは、このアクティビティストリームを通じて、ユーザーの最新情報を伝えるだけでなく、サービスの魅力をユーザーの友達に伝えていくことができます。
FacebookのSocialAdsが一時期話題になりましたが、同じものと思ってもらって間違いありません。ただ広告を見せられるのと、友達が実際に使っている様を見せられるのと、あなたならどちらにサービスの魅力を感じるでしょうか?
ソーシャルアグリゲータとしてのGFC
実はここまでの特徴は、GFCでなくても、他のオープン勢であるMySpaceやYahooでも、機能さえ実装すれば実現可能なことでした。GFCの最大の特徴は、アイデンティティとソーシャルグラフのアグリゲーション(束ねること)にあります。
現在GFCでは、Yahoo, Google, AIMまたは任意のOpenIDを使った認証が可能です。また、Google, orkut, Plaxo, Twitterからソーシャルグラフをインポートし、束ねることができます。
これらには大きく2つの意味があります。
一般ユーザーが参加しやすい仕組み
先ほどコンシューマとなるサービスへの登録の敷居が大きく下がると述べましたが、それはあくまでGFCの会員であることが前提です。これはFacebookでも、MySpaceでも、mixiでも変わりありません。しかしGFCの場合、対応サービス(Google, Yahoo, AIMまたは任意のOpenIDプロバイダ)のいずれかに登録していれば、簡単にメンバーになることができるのです。2クリックのみで登録できる可能性すらあります。
Facebook Connectであれば、簡易とはいえ登録フォームを埋めなければならないことを考えると、これはGFCの大きな特徴のひとつと言えるでしょう。
さらに、参加がしやすければしやすいほど、登録したサービスに自分の知り合いが参加している可能性は高まり、その可能性はGoogleやTwitterといったプロバイダとなるサービスが充実していればいるほど、さらに高まることも特筆に値します。
世界最大のソーシャルグラフホルダーへ
インターネットサービスのほとんどはビジネスモデルを広告に頼っています。広告をさばくのに最も必要なのはトラフィックであり、トラフィックを生むのはユーザーです。さらに言えば、登録ユーザー数よりもソーシャルグラフの方が獲得が難しく、コミュニティ性もあることから、価値が高いものであることは、説明するまでもないでしょう。
そして、これまでに述べてきた特徴から、今後のGFCの成長ぶりも容易に想像がつくのではないでしょうか。世界中に無数に張り巡らされたGFCの入り口から、多くの人々が簡単な手続きで会員になってゆくのです。
では、その先に待っているのは何か?
ソーシャルグラフの統合です。GFCは連携するプロバイダのソーシャルグラフを飲み込み、いずれは世界最大のSNSへと成長してゆくでしょう。気付いた頃には、Googleが世界一のSNSになっている可能性は、十分にあり得ます(当初FacebookもGFCのプロバイダに加えられていて、Facebook側から禁止されるなんてことがありました、※1)。
まとめ
ソーシャルウェブを夢見る一人として、今回のFriendConnectのAPI公開は、興奮を抑えられない衝撃でした。この熱は伝わったでしょうか?
日本のソーシャルウェブも負けてはいられません。SocialWeb Japanでは、日本のソーシャルウェブを盛り上げるため、GFCやFacebook Connectのようなサービス形態も含め、OpenIDやOAuth、OpenSocialのような、様々なソーシャルにまつわる技術の情報交換を行っています。第2回勉強会も近いうちに開催いたしますので、ぜひこの機会にご参加ください。
日本にもソーシャルウェブの波を起こしていきましょう!