ソーシャルゲームの開発において、
スマートフォン向けゲームのデザインのポイント
- ――グループスでは、
どのような流れで画面デザインが決まっていくのでしょうか。 児玉氏
(以下、 企画の担当者が仕様書の中で大まかな画面デザインを考えて、敬称略): それをデザイナが受け取って実際に画面を作り込んでいくという形でした。そこでデザイナやエンジニアが作業を進めていく中で疑問があれば、 企画担当者を交えて随時コミュニケーションしながら煮詰めていくというやり方です。 荒井: 企画担当者が考えた画面デザインはざっくりとしたイメージなので、
私たちデザイナは企画について理解しつつ、 どういうデザインがよいかを考えていきます。単純に企画担当者が考えた画面どおりにデザインするというわけではないですね。 - ――デザインのポイントとして気をつけている部分はありますか。
荒井: 一番良くないのは、
やっぱりわかりづらいデザインですね。企画の段階だと、 どうしても機能を盛り込みたいという欲が出てしまい、 画面にもいろいろな要素を詰め込むことが少なくありません。そこでデザイナ側では、 ゲームにとって何が重要かを考え、 それぞれの要素に優先順位を付けてデザインしていくことが重要だと考えています。 - ――デザインというところでは、
最近ではフィーチャーフォン (従来からの携帯電話) からスマートフォン、 という流れがあるかと思います。両者のデザインで、 もっとも違う点としては何が挙げられるでしょうか。 児玉: 1つはボタンですね。確かにスマートフォンは解像度が高くデザインしやすいのですが、
あまりに凝ってしまってボタンであるとわかりづらいデザインになってしまったり、 あるいは画面に多くの要素を詰め込むために小さく押しづらいデザインのボタンになってしまうことがあります。プレイヤーの方から見れば、 当然遊びにくいということになってしまうので、 その点は気をつけています。 丸山: 1つのページの中に5つもボタンが配置されていて、
その並び順の規則もよくわからないというような状態では、 プレイヤーを悩ませることになってしまいます。そのため、 単純にデザインだけでなく、 たとえば色や大きさ、 形を工夫して見た目で差別化し、 プレイヤーが悩むことなくスムースにゲームが進められることが重要だと思います。あと、 ボタン上のテキストも大切だと考えている部分です。あまり見かけない特殊な単語を使うと、 ぱっと見で何のためのボタンかわからないということになってしまいますよね。たとえば、 メインとなるページへ戻るためのボタンに対して 「マイページ」 というテキストが割り当てられていれば、 それを押すことでどのページに遷移するのかをイメージすることができます。そういったプレイヤーへの配慮は欠かせないところではないでしょうか。
エンジニアとデザイナのコミュニケーション不足の弊害
- ――デザイナから画面イメージを受け取ったエンジニアは、
どのような作業を行うのでしょうか。 児玉: グループスではMicrosoft Windows上のASP.
NETを使ってゲームを提供しているので、 まずは画面イメージをaspx (編集注:ASP. NETでページを記述するためのファイル) に落とし込んでいきます。この部分は基本的にエンジニアの作業のため、 デザイナ側がASP. NETであることを意識する必要はありません。このように最終的にはaspxファイルに置き換える必要があるので、 画面イメージ全体を作り込んだファイルよりも、 ボタンやテキストを表示するためのフレームなど、 要素単位でマークアップしたファイルのほうが作業は楽というのはありますね。 - ――デザインした画面イメージを実装するフェーズでトラブルが起きることはありますか。
丸山: どうしてもありますね。具体的なトラブルとして多いのは、
デザイナが作成したHTML/ CSSがそのままでは実装できないというケースです。その背景としてまず挙げられるのは、 デザイナ間のスキルの差ですね。たとえばHTMLやCSSに精通しているデザイナであれば問題ないのですが、 そうでないデザイナの場合には 『このままでは実装できないので修正してほしい』 とエンジニアから差し戻されることもあります。 グループスには数多くのデザイナが在籍しているため、
スキルのばらつきが生じるのは仕方がない面もありますが、 今後解決していくべき課題であると感じています。またフィーチャーフォン向けに提供していたゲームのスマートフォン対応で、 トラブルが起こることもあります。具体的には、 フィーチャーフォン向けのデザインをスマートフォン上で再利用しようとしたときに適切に表示されない、 といったトラブルがありました。 - ――ソーシャルゲームやスマートフォン向けのアプリ開発の現場で、
エンジニアとデザイナのコミュニケーションが問題になることが少なくありません。この問題を解決するには、 どういった工夫が必要だとお考えでしょうか。 丸山: 先ほどのデザイナの間でスキル差があるという話にも関係するのですが、
デザイナとエンジニアが歩み寄っていくためには、 同じ土俵でコミュニケーションができる必要があると感じています。そのためには、 やはりデザイナ側でも知識を身に付けていかなくてはならないでしょう。従来のグループスで言えば、 デザイナは単純に画面イメージを作成して納品するだけで、 それ以外の部分でエンジニアと関わることは多くなかったんです。 一方エンジニアも、
ただデザイナから送られてきた画面イメージを実装するだけで、 コミュニケーションが足りているとは言いづらい状況でした。このようにコミュニケーションが不足すると、 思い込みで作業を進めるといったことにもなり、 実は必要な画像を作成していなかった、 といった事態にもなりかねません。そこで単純に自分の仕事だけで考えるのではなく、 もうちょっと先のところまでお互いが意識できれば自然にコミュニケーションも増えると思いますし、 業務全体のパフォーマンス向上といったことにもつながるのではないでしょうか。
UI/UXチームが担う大きな役割とは
- ――グループスでは、
そうした課題にどのように対応しているのでしょうか。 児玉: 今回
『業界No. 1のUI/ UXを生み出すこと』 を最終目標として、 UI/ UXグループチームを新規に立ち上げました。このチームの役割としては、 UI/ UXの品質と生産性の向上、 ノウハウの蓄積があります。すでに具体的な取り組みも始めており、 まず新規コンテンツを対象にバリバリと設計や実装を始めました。運用中のコンテンツに対しては、 専門の検証チームが効果検証を行い、 UI/ UXを改善するためにPDCAサイクルを回していく予定です。 荒井: デザインの基準を作ることも、
UI/ UXチームの役割です。たとえばボタンの大きさについて、 最低限これだけの大きさを確保しなければならないといったルールを作れば、 グループスのゲーム全体で使い勝手を均質化できますよね。あと、 社内的に推進しているのは、 画像のリクエスト数をどれだけ減らすかという取り組みです。ゲーム内で頻繁にサーバへのリクエストが発生すると、 快適に楽しむことができないという状況に陥りかねません。そこで1画面あたりのリクエスト回数は何回までといったルールをUI/ UXチームで作り、 たとえばCSSスプライトのようなテクニックを活用することによって、 サーバへのリクエスト回数を減らすといった取り組みを行っていきます。またUI/ UXにまつわるライブラリの作成や既存コンテンツに向けたスタディなどを随時行っていく予定です。
- ――UI/
UXチームができることにより、 グループス内でのゲーム作りはどのように変わるのでしょうか。 荒井: 現状のソーシャルゲームを見ていると、
違うゲームでも同じようなインターフェースが使われていることが多いですよね。それがベストという判断なのかもしれませんが、 もっと踏み込んで考えることが必要なのかなと思います。今回、 UI/ UXチームという専門部隊ができたので、 これから大きくUI/ UXを進化させていきます。 児玉: すでにソーシャルゲームの開発プロセスに踏み込み、
改善を進めています。具体的には、 従来は設計まで企画側で考えていましたが、 ここをUI/ UXチームで行うことにしました。企画担当者の話では、 画面構成を考えたりワイヤーフレームを作ったりするのに時間がかかっているみたいなんですね。そうすると、 デザイナはその作業の間は待つしかなく、 また企画担当者は当然UI/ UXの専門家ではないので品質にも限界があります。 それであれば、
手書きでも構わないので早期にUI/ UXチームに投げてもらい、 こちらでしっかりとした設計を行おうというわけです。最低限必要な要素と、 それぞれの画面の役割、 そのソーシャルゲームにおける世界観などを把握することができれば、 デザイナとしては十分に作業できますし、 柔軟な発想でUI/ UXを作り込むことができます。 - ――最後に、
グループスでは現在デザイナを募集中とのことですが、 どういったデザイナが求められているのでしょうか。 丸山: 何でもどん欲にやりたいと思える人でしょうか。任せられたことしかやらないというのではなく、
もう自分からガツガツと積極的にプロジェクトに関わるような人であれば、 グループスで活躍できるのではないかと思います。あとゲームのデザインというところで、 アニメーションを考えることが多いんですね。なので、 たとえば単純な見た目だけではなく、 キャラクターを操作したときにどういう動きをするのかなど、 細かなところを考えるのが得意というデザイナも向いていると思います。 児玉: ソーシャルゲームが好きかどうかも重要ですね。グループスでは
「作業者はいらない」 と言っているんですが、 単にデザインするだけ、 あるいはコーディングするだけというのではなく、 自分が好きなものを作り、 それを多くの人に楽しんでもらいたいと考えている人。そういった人に活躍の場を提供できるのがグループスのいいところです。 荒井: 一緒にソーシャルゲームのスタンダードを作っていける人ですね。自分たちが作ったゲームを他社が真似るというのは、
ある意味でクリエイターとして光栄だと思います。そういった新たなソーシャルゲームのスタンダードを作りたいという人と一緒に仕事をしたいですね。
グループスでは、