新春特別企画

2010年のArk

あけましておめでとうございます。面白法人カヤック村瀬です。

はやいもので、Arkの開発をはじめてもうすぐ1年になります。2年目の今年はよりいっそう使いやすいフレームワークにしていきたいと考えています。

●Arkとは

カヤックが開発しているPerlによるWebアプリケーションフレームワーク。Catalystライクなディスパッチャー、軽快な動作、HTTP::Engine対応という特徴を持つ。主に社内用フレームワークとして開発していたものだが、最近では、Ark Jobeetチュートリアルなど、対外的なドキュメントにも力を入れはじめている。

リリース年であった2009年は基本的な機能を提供してきました。2010年前半は、今後のWebアプリケーションに必要とされるであろう機能を追加し、より汎用的なアプリケーションを目指す予定です。

モバイル対応

社内ではArkを使って位置情報を使ったモバイルサービス「しらべる」などの携帯アプリケーションも開発していますが、そのためのモジュールとして、以下のようなモジュール群を開発しています。

  • Ark::Controller::MobileJP
  • Ark::Plugin::MobileAgent
  • Ark::Plugin::Session::State::URI
  • Ark::Plugin::RelativeURI
  • Ark::View::MobileJpFilter
  • Ark::Plugin::Authentication::Credential::MobileID

しかし、現状ではこれらをArk本体に取り込んでいない状況です。これらをマージし、携帯アプリもArkを使ってスムーズに開発できるようにしていきます。

ソーシャルアプリ

携帯アプリの次は、2010年も注目が集まりそうなmixiアプリ、モバゲーアプリなどのソーシャルアプリ用のモジュール群も用意する予定です。

PSGI

2009年はPSGIが誕生した歴史的な年になりました。PSGI(Perl Web Server Gateway Interface)とは、Python のWSGIやRubyのRackなどにインスパイアして開発された、PerlアプリケーションとWebサーバ間のインターフェースを定義する仕様です。

PerlにはいままでPSGIのような統一された仕様が存在しなかったため、CGIアプリケーションはCGI用に、mod_perlアプリケーションではmod_perl用にと、サーバの仕様に合わせてアプリケーションを作成する必要がありました。PSGIの登場により、PSGIの仕様に沿ってさえいれば、PSGI対応のサーバ上であればどの環境でもアプリケーションを動かすことができるようになります。

同じような目的のために、 Arkが使用しているHTTP::Engineというモジュールがあります。こちらも同様にWSGIやRackにインスパイアされたアプリケーションの実行環境に依存しないインターフェースを提供してくれます。しかし、これはPSGIのように仕様が決まっているわけではありませんでした。

PSGIのような仕様が定義されたことで、より幅ひろい実装が生まれる余地ができました。現時点でもリファレンス実装としてのPlackをはじめ、mod_psgiというApacheモジュールなど、いろいろな実装が出ています。Arkも開発版ではこのPlackを使用したものにさし変わっています。そちらも近日中にリリースしようと思います。

非同期アプリケーションのサポート

Plackに対応する利点として非同期アプリケーションのサポートが挙げられます。Arkでは、現在は従来型の同期Webアプリケーションしかサポートしていませんが、今後は非同期アプリケーションも書けるフレームワークを目指します。

ソーシャルアプリの需要が高まるにつれ、内部でSNSなどのAPIをたたいて、その結果を待つまでレスポンスを返さないというようなWebアプリケーションを作成する機会が多くなってきました。このような場合に、従来型のWebアプリケーションではプロセスやスレッド数が増え、非常にたくさんのサーバが必要になってしまいます。

しかし、非同期アプリケーションではレスポンス待ちの処理を非常に効率良く行えるため、そのようなアプリケーションでもたくさんのリクエストをさばくことができます。今後の時代の流れとして対応は必須とも言えます。現在はこの対応をメインで開発しており、twitter sushiは非同期アプリケーションのテストも兼ねたものとなっています。近いうちに公開できると思いますのでお楽しみに!

ドキュメンテーション

昨年末にアドベントカレンダーとして公開したチュートリアルが好評だったこともあり、今年はよりドキュメントに力を入れていきます。基本的なドキュメントからよくある質問のまとめ、そしてTIPS集などをどんどんアップしていきたいと考えています。

Arkは主にカヤック社内のエンジニアによって開発されていますが、2009年は多くの外部の技術者からパッチをいただいたり、モジュールを作っていただいたりしてきました。ご協力くださった皆さん、ありがとうございました。開発における議論はおもにirc.perl.org #arkにて行っております。興味のある方は参加してみてください。

本年もArkをよろしくお願いいたします。

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