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AWSのモノ作りと2013年振り返り

アマゾンウェブサービス(AWS)は、2013年に240以上の新サービス、新機能の発表を行いました。2012年の159回と比べるとさらに進化の速度を早めています。本記事では、2013年のおもだった新発表について振り返りを行いたいと思います。ただし、240あまりの新発表をすべてご紹介することはできませんので、AWSブログのアクセス数をもとに人気のあったTop10発表を中心に紹介したいと思います。また、そのTop10発表を振り返る前に、なぜAWSが、それほど多くの新サービス、新機能発表を行うことが出来るのか、そのモノ作りの考え方を紐解いてみましょう。

AWSのペース・オブ・イノベーション

出来るだけ早くお客様のもとにモノを届けるというのは、AWSに限らず、Amazonの企業文化でもあります。そのためにユニークなモノ作りを行っています。

まず、Work Backwards from the Customer(お客様をスタート地点に)という考え方を非常に大切にしています。具体的には、新しいサービスの開発を始める前に、そのプレスリリースを書きます。新リリースが、実際にお客様の課題をどう解決するかを徹底的に評価するのです。お客様にとってムダなものを作らない有効な方法と言えるでしょう。

Amazonの開発チームは、2 pizza ruleというルールに則っており、2つのピザを分け合える人数でチームが出来ています。アメリカのピザは大きいですが、さすがに10人以上で2つのピザを分け合うことは出来ませんね(笑⁠⁠。そのチームは、起業家精神を持った自律的なチームで、担当しているサービスのロードマップに関して権限を持っています。

新リリースの開発が決まると、この小さなチームは、最低限しかし必要十分な機能持ち(Minimum Valuable Product⁠⁠、品質面での安定性、高いスケーラビリティを確認できた初期リリースを、出来るだけ早くお客様のものに届けることに集中します。そして、一旦初期リリースを行い、お客様に実際に使いはじめてもらうと、お客様のリアルなフィードバックに基づいて、追加の新機能をどんどん開発していくのです。

このようにプレスリリースを最初に作成し、自律的な小チームで、出来るだけ早く初期リリースを出し、実際のお客様のフィードバックに基づいて改善していく、というやり方を採っています。たとえば、2012年末にプレビュー発表されたデータウェアハウスのクラウドサービスであるAmazon Redshiftは、2013年に20以上の新機能をリリースしています。このような手法により、2013年に240回以上の新発表を行っています。まさに、AWSはお客様の声によって育てられているといっていいでしょう。

2013年の人気AWSブログ発表

さてここから、AWSブログのアクセス数を基に人気のあったTop10発表を見ていきたいと思います。

  1. Amazon Workspacesのプレビュー発表
  2. デフォルトVPC(Virtual Private Cloud)
  3. 新しいAWSコマンドラインインタフェースの正式リリース
  4. Amazon CloudFrontの独自SSL証明書とルートドメインホスティング
  5. Amazon RDS for PostgreSQL
  6. Amazon ElastiCache for Redis
  7. DynamoDB Local
  8. AWS OpsWorksの発表
  9. AWS IAMのAmazon, Facebook, GoogleのID連携サポート
  10. Amazon Kinesisの発表

まず初期費用無料、月額$35から利用できる仮想デスクトップサービスであるAmazon WorkSpacesのプレビュー発表は大きな注目を集めました。Windows 7相当の仮想デスクトップ環境が用意され、Windowsパソコン、Mac、Android,やiOS、Kindle端末からアクセスできます。この料金で50Gバイトのユーザーストレージがついているのが特徴で、オプションでMicrosoft Office Professional 2010も追加できます。現在プレビュー状態ですが、今後正式リリースとともに、AD統合やVPC連携などが可能になり、BYODを容易に実現できるようになるのが楽しみです。

Default VPCの発表により、Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)利用者はデフォルトでAmazon VPCの高度なネットワーキング機能を使えるようになっています。

AWSコマンドラインインターフェース(CLI)は、Pythonベースで30種類以上の主要サービスに同じやり方でアクセスできるようになっています。これまではサービス毎に若干違うCLIが用意されていたのでより便利になったと言えるでしょう。

Amazon CloudFrontの独自SSL証明書とルートドメイン対応(例:⁠cloudfront.com⁠など)は大きな注目を集めました。CloudFrontは、この他にもPOST、PUTなどの追加メソッドサポート、CNAMEのワイルドカード対応(例:⁠*.cloudfront.com⁠⁠)など多機能なCDNサービスとして進化を続けています。

Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)は、MySQL、Oracle、Microsoft SQL Server、に加えPostgreSQLもエンジンとしてサポートを開始しました。Amazon RDSも2013年は沢山の新機能をリリースしており、ストレージサイズ3Tバイト、30,000PIOPSまで拡張可能になったのをはじめ、ログファイルアクセス機能などユーザーから要望の多かった機能が実装されました。また、Amazon EC2そのものにおいても、Amazon Machine Image(AMI)のリージョン間スナップショットコピーがサポートされ(たとえば東京リージョンのAMIをシンガポールリージョンにコピーできる⁠⁠、Amazon RDSにおいてもリージョン間スナップショットコピー、Amazon RDS(MySQL)のクロスリージョン・リードレプリカに対応しています。

インメモリキャッシュサービスであるAmazon ElastiCacheは、これまでmemchchedをキャッシュエンジンとしてサポートしていましたが、新たにRedisが加わり、さらにVPCの中でも使えるようになりました。

DynamoDB Localは、ローカル環境で実行できるJavaアーカイブであり、Amazon DynamoDBを使った開発や検証を、ネットワーク接続のないローカル環境で利用料金をかけることなく行えます。NoSQLに使い慣れていないディベロッパーには朗報と言えるでしょう。

新サービスであるAWS OpsWorksが発表されました。Chefによる自動化は日本でも盛り上がりをを見せています。初期リリースの後にも、Chefのバージョン11、カスタムAMIもサポートし、ChefレシピとカスタムAMIと使い分けながら効率良く運用できるようになりました。

AWS Identity and Access Management(IAM)もさらに進化し、Amazon.comやFacebook、Googleにより認証されているアプリケーションのユーザーのためにAWSの一時的なセキュリティ証明書を発行できるようになりました。パブリックなIDプロバイダを認証に利用するアプリケーションの開発がさらに容易になるでしょう。

2013年末のAmazon Kinesisの発表も大きな反響がありました。大規模なストリーミングデータをリアルタイムで処理するクラウドサービスです。たとえば、数百万のセンシングデバイスから湧き出てくるデータを、Amazon Kinesisに放り込めばデータを落とすこと無く冗長的にしっかりと24時間保持してくれます。大量で連続的なデータをしっかり保持する難しい部分をAmazon Kinesisが担当してくれるので、デベロッパーは、そのデータをAmazon S3に保存したり、Amazon DynamoDBやAmazon Redshiftで解析する部分にフォーカスすることが出来ます。

アーキテクトの注目する2013年の発表

以上が、AWSブログを基にした2013年の人気リリースですが、下記は、アマゾン データ サービス ジャパン⁠株⁠のソリューションアーキテクトチームで投票して決めた2013年のベスト発表Top10です。

  1. C3インスタンスの発表
  2. Amazon WorkSpacesの発表
  3. デフォルトVPC(Virtual Private Cloud)
  4. EBSプロビジョンドIPOSが最大4000IOPSまで指定可能に
  5. VM Import for Linux
  6. Amazon Kinesisの発表
  7. Amazon RDS for PostgreSQL
  8. AWS CloudTrailの発表
  9. Amazon RDSで3Tバイト、30,000PIOPSまで拡張可能に
  10. AWS Management ConsoleでAuto Scalingをサポート

AWSブログでの人気ランキングと見比べてみると、アーキテクトがアーキテクチャ設計を行っていくうえで、大きく改善があった部分がTop10に入っていることが特徴的です。

たとえば、C3インスタンスは、2.8GHz Intel Xeon E5-2680v2(Ivy Bridge)プロセッサ、SSD、高いネットワーク性能を持ち、高い性能を安く使えるよう設計されており、東京リージョンでも非常に人気のAmazon EC2インスタンスとなっています。

Amazon Elastic Block Store(Amazon EBS)のプロビジョンドIPOS(PIOPS)も最大4000IOPSまで指定可能になったため、よりIO性能を要するシステム構成も設計手段が増えました。

VM Importは、Windowsに加えLinuxも対応したため仮想環境からAmazon EC2移行の大きな手助けになるでしょう。

AWS CloudTrailは、AWS Management Console(Webコンソール)を含めAWSへのAPIコールをAmazon S3に保存してくれるので、これまで別の手段でAPIコールを保存しなければいけなかったケースが楽になるでしょう。AWS Management ConsoleでのAuto Scalingサポートは、お客様から非常に待ち望まれていた機能の1つと言えるでしょう。

さて、ここまでAWSの開発スピードを支えるモノ作りの考え方と、2013年の発表の振り返りを行ってきました。2014年も日本のお客様の声を反映して、ますます便利で使いやすいクラウドインフラストラクチャを提供していきたいと思いますので、是非、皆さまのフィードバックをお聞かせください。

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