というわけで、Larry Wallの来日とともに、いきなり連載スタートです。3月29~30日に開催されたYAPC::Asia::2006に合わせて5年ぶりに来日したLarryは、実は我が家の賓客でもありました。またとない機会なのでインタビューしてみた次第。なお、Larryが日本語で話した部分は《~》でくくっています。
弾(筆者):日本語はどれだけ話せるのですか?
ラ(Larry):《簡単に会話を遅くします。でもペラペラじゃない。5年かけて少しずつ勉強しました。でも、練習することがあまりできません。本だけで簡単に…》
弾:ひょっとしてまだ1977年版Honda Accordに乗っているんですか?
ラ:はい。もう29歳です。廃車にすると、環境条例でカリフォルニア州が500ドルくれるのですが、まだ乗ってます。
弾:最近お気に入りのアニメは?
ラ:《あずまんが大王! ちよちゃん大好き!》(ちよちゃんの歌「つくりましょう!」を歌い出す)
弾:…ちよちゃんの話はこれくらいにして、次いきます。お子さんたちもPerlユーザですか?
ラ:末っ子だけです。娘たち2人はアーティストで、プログラムはほとんどしません。長男は理論物理学者ですが、コンピュータさえほとんど使いません。
弾: O'Reillyを首になってから、どんな仕事をしていましたか?
ラ:しばらくは公的に失業していました(苦笑)。幸い不動産の値上がりがあったので、リバースモーゲージで生計を立てていました。最近になってNetlogic Microsystems社に雇用されていますが、時間のほとんどはPerl 6につぎ込んでいます。
弾:失業中に給与が支払われていたとしたら…。
ラ:3000万円ぐらいになっていたでしょう。
弾:3000万円棒に振るとは、太っ腹ですね。
ラ:《(私は)金持ちです》。どれだけ持っているかではなく、どれだけ与えることができるかというのが金持ちの定義なら。
弾:昨今のスクリプト言語の人気についてどう思いますか?
ラ:とてもいいことです。
弾:でも、言語ファン同士で「宗教戦争」になったり…。
ラ:しますね、ときどき。でも言語開発者同士は非常に仲がいい。GuidoさんもMatzさんも親友[1]。喧嘩しがちなのはそのまわりの人かな。
弾:Perl6はいつリリースされそうですか?
ラ:クリスマスまでに。でもどのクリスマスかは秘密です(笑)
弾:Pugs[2]はどう思いますか?
ラ:素晴らしいです。私もコミッタになりました。
弾:私も。
ラ:問題は、Haskellで書かれていること。Cと違ってPerlハッカーにはHaskellを使える人が少ないのです。
弾:でも、これでトンネルを両側から掘り進めるようになりましたよね。
ラ:弾さん、それ私の(言いたかった)せりふです(笑)。真ん中でトンネルがくっつけばいいのですが。
弾:でもAudreyの勢いだと…。
ラ:なんか山が全部なくなっちゃいそうです(爆笑)。
弾:Parrot[3]が実際に使われるようになると、Perl以外の言語にどのような影響があるのでしょうか?
ラ:動的言語はすべて恩恵を受けるでしょう。Javaや.NETなどのVirtual Machineはすべて静的言語を対象としています。
弾:Lisp Macineに近いのですか?
ラ:そう。動的言語は、いわばLispの「スキン」とも言えます。Perl 6はその中でベストの「スキン」になることを目指しています。
弾:TMTOWTDI(There's More Than One Way To Do It)(※4)はどのようにして生まれた言葉なのでしょうか?
ラ:子供の頃は、すごく戒律の厳しい宗派の家で育ったのですが、大学でそれ以外の世界を知りました。神は自由意志を持つことを知ったのです。
弾:ソフトウェアエンジニアとして、技術の知識以外に必要なことは何でしょうか?
ラ:文化、でしょうか。どれだけ優れたソフトウェアでも、文化を持たないものは普及しません。《プロトカルチャ~(※5)》
弾:ヤックデカルチャ![5]
…と、このような調子で話は続いていったのですが今回はこの辺で。おわかりの通り、Larryは気さくを通り越しておちゃめな人です。Perlをここまで普及させたのは、この人柄にあるのでしょう。不肖、私もそこに惹かれた1人であります。