今回、弾さんが逢いに行ったのは、(株)ライブドアでRSSリーダー「livedoor Reader」、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「livedoor フレパ」をはじめさまざまなコンテンツを持つlivedoorのポータルを開発している、池邉智洋さん、谷口公一さん、ma.laさん。弾さんがライブドアの前身、オン・ザ・エッヂ時代にCTOを務めた古巣は、すでに面影もなく新しい時代を築いているのかそれとも…。
開発体制
弾:まずは自己紹介から。
池邉(以下、池):ポータルを展開しているメディア事業部に、エンジニアとデザイナー、コーダー、それにネットワークエンジニアがちょっといる開発部という部署がありまして、その統括をやっています。
谷口(以下、谷):開発部の中の、プログラマの一部チームをまとめるマネジメントとかをやっています。
弾:それで、顔出しNGの…(笑)。
ma.la(以下、ま):ぼちぼち入社丸1年になります。
弾:身体を張ったギャグ[1]を1年続けてみた感想は?
谷:結局ライブドアを振って、実はグーグルに行くとか考えなかった? あれすらツリだとかいう…。
ま:でも、ライブドアに入りたくて入ったので…。
弾:それで、開発部は今何人くらい?
池:デザイナーもいるので合わせて40名くらい。プログラマ、いわゆるエンジニアが20名くらいですね。
弾:意外と私がいたころと変わらない規模なのかな。私がいたのが1999年から2001年の2年弱。この中で池邉さんが一番の古株?
池:僕がたぶん弾さんと入れ替わりくらいだと思います。
弾:あいかわらず社内の開発言語はPerlがメイン?
池:だいたいPerlですね。
谷:共通言語だしね。
ま:ちょこちょこ使うツールとかはRubyやJavaScriptで書くことはあったりしますね。
ライブドア事件
弾:一応この質問は外せないんだよねー。「そろそろライブドア事件について一言いっておくか」というma.laさんのエントリがありましたが、あの「中略」の部分には何があったのか[2]?
ま:秘密じゃないですか。
谷:(就職先は)わりとどこでもよかったんでしょ? 働けたら働けたでいいしー。じゃなく、働けなくてもいいしーみたいな。
ま:働く条件としては、社長がプログラマじゃなきゃイヤっていうのが第一条件としてあって、だから、(前社長の)堀江さんがプログラマなのでライブドアが条件になるという。自分がちゃんと動けるかどうか。
弾:それで、動けてます?
ま:まぁそれなりに動けてる。少なくともたぶんヤフーとかだったら(livedoor Readerのようなものは)作れなかったと思うし、1人でやるよりはずっと効率よく動けてるとは思う。
弾:それを聞きたかった。
ま:ゆっくりでいいんだったら1人でも、ボソボソとモノ作ってWebにアップして発表していけば、誰かしらが見つけて伝わっていくんだけど、やっぱりそれで世の中にドカンと影響を与えるには、会社、企業で1つのプロダクトとして出すっていうのは影響力がでかいから、そのほうがいいんじゃないかなぁと。
弾:同感でもあり、逆に世の中に影響を与えるがゆえに会社というフレームワークではできないということもあり。僕は両方やった。自分がまだ「オン・ザ・エッヂ」と呼ばれてたころのCTOとしていたときは、まさに個人ではできなかったことをやりたかった。データセンタを作るとかね。でもオープンソースにばかばかコミットするっていうのは、株主様が許さないわけですよ(笑)。だから、Perlの開発のほうは辞めてから。
ま:今、やっぱりオープンソースの開発って実際ニートが支えてるっていっても…(過言ではない)。
池・谷:(笑)
弾:そうそう、ニートになるので、お許しくださいって(笑)。会社にいながらうまくコミットしてっていうのは、本当に難しいと思うんだよね。
ま:宮川(達彦)さん[3]は?
弾:少なくともSix Apartは、上場を標榜するとか、時価総額がビリオンダラーズという会社ではないでしょ?
谷:宮川さんは、「オン・ザ・エッヂ」時代からいろいろモジュール作ってはCPANにアップして、みたいなのを…。
弾:私が薦めた(笑)。というよりも、こういうのがあるよって紹介しただけ。あとはみんな勝手にやった。
谷:たぶんそれで我々もついていったのもあるし、世の中的にもうちの会社に限らず、いろんな会社でそういう文化が自然と根付いてきたっていうのは、たぶん、弾さんがお薦めしてからそういう流れが生まれたんじゃないかなと思う。
弾:お薦めしてとか押し付けとかっていうよりも、放置ね(笑)。でも放置って一番難しいよ(笑)。当時私、上の娘だけいたのだけど、退職後娘がもう1人増えて、いろいろ動く。動くとつい「あれやるなこれやるな」って言いたくなっちゃうじゃない? 言わないでいるのって大変なんだよねー(笑)。
谷:でも気にしつつってことですよね。
弾:そうそう。本当に怪我しそうになったら、身を挺して救わなきゃいけないし。私は自分で自分の減俸処分書いたことがあるし、そのときには堀江さんにもつきあってもらった。各自のやることに口は出さないけど、面倒見ないということではない。ライブドア事件で不可解なところも実はそこ。
谷:そうですね。
ま:ネットと世間との温度差が…。ライブドアなくなっても困らないよって思っている人が結構な数いるっていうことなんじゃないかなって。インターネットにどっぷり浸かってる、あるいはなんらかの形で関わってるとかPerlを仕事で使ってるとかそういう人であれば、ライブドアがどういう企業でどういう動きをして、ネットに対してどういう立ち位置にあるのかっていうのが理解できるんだけども、そういうのと無関係でいる人からすると、なんか悪いことした会社だ、なくなっても別にいいんじゃない、ヤフーもあるし、みたいなスタンスになっちゃうのかなと。
弾:こういうと世の中の人は怒るかもしれないけれど、なくなっちゃダメな会社なんてないんだよね。
ま:逆になくなっちゃダメな会社があるっていうことがリスキーで、グーグルがなくなっても…。
弾:うん、困らない、おれ作れるもん(笑)、十分な資材さえあれば。アルキメデスが「十分長い棒があれば、地球動かせるよ」っていうのと同じで十分長い棒を用意するには十分なお金も用意しなくちゃいけなくて、そこまでの能力はないのだけど。なくなったら困る産業ならあるよね。たとえば今ネットがなくなったら、やばい。たとえばテレビそのものが全部なくなったらやばい。でもたとえばライブドアだけがなくなるとか、フジテレビだけがなくなるとか、特定の会社がなくなるのはそんな困らないよね(笑)。
ま:困らないようにオープンにしてるのもあるし。
弾:それでいいと思うんだよね。かといって、世の中の誰にも必要とされないとなると、単に寂しいというだけではなくって、やっぱり存在意義を問われちゃう。なくなったら世の中が困るほどクリティカルだと、仕事するときに重たいし、かといって、世の中にあってもなくてもいいかと言われるとやっぱりやりがいがなくなっちゃうし。