小飼弾のアルファギークに逢いたい♥

#11Twitter Evan Williams

今回のゲストは、TwitterのCo-founderであるEvan Williamsさん。対談は2007年11月16日、Web 2.0 EXPOでO'Reilly MediaのTim O'Reillyさんとの「A Conversation with Evan Williams」と題したキーノートのあとに行われました(以下、敬称略⁠⁠。

(左)Evan Williams氏、⁠右)小飼弾氏(撮影:平野正樹)
(左)Evan Williams氏、(右)小飼弾氏(撮影:平野正樹)

今日は働いています

弾:Hello there!

Evan:Hi!

弾:今日はTwitterを見ながら対談しましょう。

Evan:そりゃすごい。今日誰か落ちてるって言ってたけど。

弾:今は動いているみたい。

猫はニャン匹?

弾:Twitterを動かすのに猫は何匹必要?[1]

Evan:多過ぎて数えられないよ(笑⁠⁠。

弾:まじめな問題、Twitterの稼働率ってどれくらい? 当初はずいぶんと不安定だったけど。

Evan:アクセスの急増に資源増強が追いつかなくて。でもだいぶましになってきたとは思う。信頼性の向上は、我々の最重要課題。とはいえ、まだまだ我々は小さな会社で、エンジニアは4人しかいないし…[2]⁠。

弾:その中にあなたは含まれてる?

Evan:ノー。私はコーディングからは手を引いている。最初のうちはちょびっと書いたけど。

Ruby on Rails

弾:Ruby on Railsを選択したのは誰?

Evan:それは私。

弾:きっかけは?

Evan:オーディオ関連のサイトを作っていて、そこで使っていたので。

中にErlangはいないよ

弾:Erlang使っているって聞いたけど。

Evan:Erlang? ハア?

弾:Erlang言語をメッセージングサーバに使っているって聞きましたが、本当?

Evan:ああ、そのErlang。ノー。Rails以外のサーバはあるけど、すべてRubyベース。

弾:全部?

Evan:今は全部…だと思う。将来はともかく、現在は。

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Twitterのコードは引退したけど

弾:で、もうコードは書いていないと。

Evan:ノー[3]⁠、もう書いてません。Twitterには、エンジニアとしては関わっていません。指針は示したけど、コードを書いているのは猫、じゃなくて人ですが[4]⁠、その中に私はいません。

弾:じゃあ何をしてるの?

Evan:共同設立者で会長。運営にはタッチしていない。Twitterには雇用されてませんwww

弾:www

Evan:キツい仕事は猫任せ。僕、イタダく人、キミたち、作る人。

弾:(笑)

Evan:がやっているのは戦略と経営。Jack DorseyがCEOでもう1人の設立者で、彼と話をするのが私のTwitterにおける一番の仕事。

弾:じゃあコードはまったく書いてないの?

Evan:Twitter以外では書いてる。主に実験的なこと。実は2つあって、うち1つはまだプロトタイプ段階で、関わっているのは自分だけ。もう1つはナイショ。

Googleとの遭遇

弾:Timとのインタビューで、ネブラスカ出身で大学ドロップアウトをして、Bloggerを作ったらそれがGoogleに買われて、そこで2年過ごしたということを話してたけど。

Evan:2年弱かな。20ヵ月ってとこ。

弾:Googleの1%(従業員数的に⁠⁠。

Evan:それより少なかったかな。我々が6人で、それ以外が800人。私が辞めるときにBloggerに関わっていたのが、20人ぐらい。

Rubyとの遭遇

弾:で、そのときはRubyは…。

Evan:知らなくて、知ったのは辞めた後。

弾:Googleにいるときは…。

Evan:まるで使われていない、というわけではないけど、社内の選択肢にRubyはなかったので。友だちが勧めてくれて使い始めた。Ruby on Rails(RoR)はまだ出たばかりだったかな。2004年ころだったかな。

弾:そうそう。DHHにはインタビューした。

Evan:それはすごい。Googleの連中もRoRは注目していた。実地で使うにはまだ仕様が固まってなかったけど。

弾:TwitterはRoRのサイトとしては圧倒的に最大級なのだけど、スケーラビリティに不安は?

Evan:あったけどなんとかした(笑⁠⁠。スケーリングにあたっては、キャッシュを多用している。でもトリッキーでもある。Twitterはリアルタイム性にこだわっているので、常にアップデートされているデータをキャッシュするには独特の難しさがある。

Web 2.0 EXPO TokyoのキーノートでTim O'ReillyとやりとりするEvan
Web 2.0 EXPO TokyoのキーノートでTim O'ReillyとやりとりするEvan

Twitter活用術

弾:技術的以外な側面で、Twitterの難しい点は? たとえば私には現在[5]997人のFollowersがいるのだけど、多過ぎてどう管理してよいのやら途方にくれてるんですけど。

Evan:www

弾:今のところ、ブログの更新を通知しているだけ[6]⁠。もっと有効活用したいのですが。

Evan:まずはFollowersを絞ったほうが…。

弾:当初は私をfollowする人をすべてfollowしたのですが、このポリシーは48時間で破綻しました。で、実際に絞ろうとしたら、猫が出て来て「今はメンテ中」だと。で、面倒で。

Evan:放置と(笑⁠⁠。1つは、まめにFollowersを調整すること。もう1つは、API経由でアクセスすること、かな。API経由なら、少なくともブラウザの世話になることはないので。

弾:でも、そのAPIも結構不安定で。つーかAPIのほうが不安定だったような。

Evan:そう? でも安定性は個々のAPIによって違うと思うけど…。

弾:一番簡単な、メッセージ更新用のだけど。

Evan:うーん、たいていは、安定性はWebのそれと同じはずなのだけど、なんとも言えないなあ…善処します。

技術より製品

弾:これは必ず尋ねている質問なのだけど、次にヒットする技術は何でしょう? RoRとTwitter以外で。

Evan:うーん、わかりません(笑⁠⁠。

弾:技術にはもうあまり時間を割いてない?

Evan Williams氏
Evan Williams氏

Evan:そうかも。でもAIR(Adobe Integrated Runtime)には結構興味があるかな。私は技術そのものよりも製品に興味を抱いていて。たとえばSMS(Short Messaging Service;アメリカのケータイメール⁠⁠。これをなんとかしたい。SMSって利用率低いよね?

弾:うーん、そうかな。日本ではむっちゃ使われているのだけど。長いメールも書けるし、ケータイ以外ともメールを交わせるし。

Evan:そりゃすごい。

自分で作ったほうが早かった

弾:技術者としての経験は、どれくらい起業家として役に立ってる?

Evan:ものすごく。計算機科学の教育はきちんと受けたことがなくて、すべて自習なのだけど。

弾:実は私も大学はドロップアウトしていて。

Evan:それはそれは。私にとって、テクノロジというのはアイディアを実装する手段で、その過程で技術を学んだのだけれども、その過程でものごとの構造もよく見えるようになって、何が可能で、何が簡単で何が難しいのか、実際にやる価値があるのは何なのかを見抜けるようになった。実際にそれがどういう風になるのか、思い描くことができるようになったんだ。

あと、私の場合、実際に作っちゃったほうが、人に「こういうものだ」と説明した上で作ってもらうよりずっと早かったということもある。いちいち人にやってもらってダメ出しするより、自分でいじくり回したほうがよくわかる。

弾:うんうん。

Evan:で、これでイケるという感触をつかんだら、もっと上手に仕上げるエンジニアを雇えばいい。

弾:で、今までどうやって技術を習得してきたの?

Evan:うーん、いじくりまわしながらかな。初めてHTMLに触れたのが1994年ごろ。その前にちょろっとだけVisual Basicに触った経験があって…。とにかく作りたいものがまずあって、それに必要な技術を学んできたという感じ。自習にはWebは本当にありがたくて、何をどうやってやればいいのか、ほとんどすべてそこから学ぶことができた。

「できる」より「好き」であれ

弾:Webサイトを作るにあたって最も重要なことは? 2.0でなくてもいいので(笑⁠⁠。

Evan:情熱かな。できると見込んだらやる、という。人を見るときには、技術力よりもその人の持っている情熱に注目している。Webはまだ15歳ぐらいで、可能性はまだまだたくさんある。そういうところでは、⁠それを貫く能力」より「好きを貫く」力のほうがものをいう。⁠できるからやる」というのは、新しいことをやるには向いていない。

失敗しなきゃ何もわからない

弾:今まで何度も失敗してきているのに、落ち込みっぱなしにならなかった秘訣は?

Evan:私が失敗しても下りずに済んできた(failing without quitting)のは、うーん…諦めの悪さかな。失敗すれば落ち込むけど、失敗というより、過程なんだよね、うまくいくための。失敗しなきゃ、何もわからない。

弾:ということです、⁠人生オワタ\(^o^)/」が口癖の日本のみなさん。

Evan:すでに手をつけたことに関しては、簡単に諦めなかったのが私がうまくいった理由。Bloggerはもう動いていた。諦めてしまうにはあまりにしっかりと。あなたは、人生に手をつけてはいないのですか?

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