はじめに
初回 は能書きだらけで退屈だったと思います。2回目の今回は、Android Studioをインストールしてウェルカム画面を見るところまでいってみましょう。
Android Studioの入手とインストール
Android StudioはベースとなったIntelliJがそうであるように、JavaのSwingで作られたアプリケーションです。Javaアプリケーションであるためプラットフォームを選ばず、Windows/Mac/Linuxで動きますが、実行環境にはJavaの開発環境(JDK) が必要です(JREではありません。JDK です)が必要です。
JavaのSwingアプリケーションというだけでテンションが下がる方もいらっしゃいますが、Android Studioがこうゆう仕組みなので、観念してJDKを導入しておきましょう。
導入するJDKのバージョンはJava6以上であれば何でも構いませんが、より新しいほうが望ましいです(とは言えJava8は遠慮したほうがいいでしょう) 。なおWindows版のJDKが32bitか64bitかについてですが、IntelliJそのものは64bit対応しているので、Android Studioもおそらく64bit対応しているのかと思われます。ただ、筆者の環境では32bit版でしか確認できていませんので、ご了承ください。
Android Studioは、実行時に必要なJDKの詳細について詳細に言及していませんが、ベースとなっているIntelliJと同じ条件なのだと推測できます。IntelliJのシステム要件は、以下から確認できます。
Download IntelliJ IDEA 12
それぞれのプラットフォームのSystem requirementsを確認してください。
IntelliJ IDEA 12で要求しているJDKの詳細は表1 のとおりです。
表1 プラットフォームごとのJDKの要求レベル(IntelliJの場合)
プラットフォーム 要求しているJDKの詳細
Windows 1.6以上(32bit/64bitの指定はありません)
Mac JDK6(JDK7は推奨していません)
Linux 1.6以上のOracle JDK(OpenJDKは推奨していません)
Macの場合はJDK6以上 ではなく、JDK6限定 です。Mac版のAndroid Studioを立ち上げると、その環境にJDK7が入っていたとしてもJDK6で起動していることがわかります(連載第1回目のアバウト画面 に注目) 。
Android Studioの入手
Android Developersサイト のダウンロードページ から、それぞれのプラットフォームに対応したパッケージをダウンロードしてください。
図1 Android Studioの入手
Android Studioのインストール
プラットフォームごとのパッケージに応じて、それぞれインストールしてください。そうは言っても、Windows以外はパッケージを展開するだけなので、インストールにつまずくことは無いと思います。
Windowsの場合
インストーラが起動しますので、質問に答えていきましょう(すべてデフォルトで良いです) 。JDKが導入済みであれば、すいすい進むと思います。インストーラのはじめのほうにJDK探索があり、運悪く図2 のようにJDKではなくJREを見つけてしまうときがありますが、後でリカバリ可能なので気にせず進みましょう。
図2 インストーラ:JDKの探索(c:\windows\system32\java.exe
はJDKではなくJRE)
Macの場合
DMGファイルをマウントすると、Android Studioのアプリケーションファイルがあります。これをApplicationsフォルダにコピーせよとありますが、別にどこに置いても構いません。
Linuxの場合
tgzファイルを展開して任意の場所に配置します。
インストールが完了したら、Windowsはスタートメニューから/MacはApplicationフォルダからAndroid Studioのアイコンをダブルクリックして起動してみましょう(Linuxは、studio.sh
を実行します) 。
新規インストール直後の場合、図3 のような「Complete Installationダイアログ」が表示されます。これは旧バージョンの設定引継ぎを行うかどうかを問い合わせているのですが、引き継ぐ環境などありませんので「I do not have a previous version of Android Studio or I do not want to import my settings」を選択してください(既存のIntelliJユーザならご存じの画面です。IntelliJの設定を引き継ぐこともできますが、やり方はわかりますよね) 。
図3 Complete Installationダイアログ
その後、スプラッシュスクリーンが出てウェルカム画面が表示されたら起動成功です。
図4 Android Studioのスプラッシュスクリーン
図5 Android Studioのウェルカム画面
Android Studioが起動しない場合
主にWindowsで多く見られる初期トラブルだと思いますが、Android Studioが起動しないことがあります。十中八九「起動用のJDKが見つからない」または「JDKのつもりがJREだった」なのですが、ログも警告も出さずにダンマリになるので、遭遇した人はこの時点で「Android Studioなんてダメ!ぜったい!」と思ったのではないでしょうか。
余談ですが、IntelliJのWindows版は自分自身を起動するためのJRE(正確に言うと、ちょっと不完全なJDK)がバンドルされていて、このようなトラブルとは無縁なのです。しかし、Android Studioにはどういうわけか 起動用のJREが含まれておらず、このような面倒を引き起こします。きっと大きな声では言えない大人の事情があるのでしょう。
起動用JDKの解決方法は、公式には
JDKをインストールして
JDKの場所を環境変数 JAVA_HOME
に定義する
ことで解決するとありますが「環境変数 JAVA_HOME
に定義する」は正直、面倒な作業です。そのため、ちょっとした裏技を教えます(裏技と言っても、ベースとなったIntelliJのまっとうなやり方です) 。
JDKを導入しなければならない点は変わりありませんが、環境変数を設定する代わりに、そのJDKをAndroid Studioのインストールディレクトリ(デフォルト設定だとc:\Users\<yourid>\AppData\Local\Android\android-studio
)にjre という名前でコピーすればOKです。
以下に手順を示します。スクリーンショットのディレクトリがデフォルトと異なりますが、適時読み替えてください。
図6 JDKをAndroid Studioのインストールディレクトリにコピー
図7 コピーしたJDKの名前を"jre"にリネーム
これで再度、Android Studioアイコンを実行すれば、無事Android Studioが起動すると思います。
Android Studioの構造(設定ファイル置き場など)
Android Studioが無事立ち上がり、さっそくあれこれ使ってみたいと思いますが、それは次回にゆずり、残り記事でAndroid Studioの構造や設定ファイルの格納場所について説明します。今後、いろんな設定をする上でも、このあたりの情報をおさえて置くとイザというとき焦らないで済みます。特にプラグインまわりに手を出し始めると、よく起動しなくなったりしますのでご注意を。
便宜上、表2 のように利用するディレクトリをそれぞれシンボルで記述します。
表2 シンボル一覧
シンボル名 意味
AS_INSTALL
Android Studioのインストールディレクトリ
AS_HOME
Android Studioのホームディレクトリ
AS_CONFIG
Android Studioの設定ディレクトリ
AS_SYSTEM
Anrdoid Studioのシステムディレクトリ
プラットフォームやインストール時の設定によって、それぞれの具体的な場所は微妙に異なります。以下にまとめてみました。
AS_INSTALL
Windowsの場合
c:\Users\<yourid>\AppData\Local\Android\android-studio
Macの場合
Android Studioのパッケージの中がAS_INSTALLになります。
図8 Mac版Android Studioのパッケージの参照方法
Linuxの場合
パッケージ(android-studio-bundle-<version>.tgz)を展開した場所(任意)
AS_HOME
Windowsの場合
c:\Users\<yourid>\.AndroidStudioPreview
Macの場合
該当ディレクトリなし
Linuxの場合
$HOME/.AndroidStudioPreview
AS_CONFIG
Windows、Linuxの場合
<AS_HOME>/config
Macの場合
$HOME/Library/Preferences/AndroidStudioPreview
AS_SYSTEM
Windows、Linuxの場合
<AS_HOME>/system
Macの場合
$HOME/Library/Caches/AndroidStudioPreview
余談ですがAS_HOME
, AS_CONFIG
, AS_SYSTEM
などのディレクトリ名が「AndroidStudioPreview 」となっているのは、正式版がリリースされた暁には、これらの名称が「AndroidStudio 」になり、前述した初回起動時の「Complete Installationダイアログ」による設定の引継ぎが行われるのだと想像しています。
続いて、それぞれのディレクトリの中身を実際に覗いてみましょう。
AS_INSTALLの中身
プラットフォームによって若干の違いがありますが、基本的には同じ構造をしています。
図9 AS_INSTALLの中身(Windows版)
図10 AS_INSTALLの中身(Mac版)
Linux版の図はありませんが、Windows版と大方変わりありません。Mac版もContents ディレクトリがあるかないかくらいの違いです。
IntelliJと比べたAndroid Studioのインストールディレクトリの特徴は以下の2点です。
起動用JRE(正しくはJDKっぽいJRE)が無い
この「JDKっぽいJRE 」が気になる人は、IDEA CEをインストールして比べてみましょう。
Android SDK(<AS_INSTALL>/sdk
)が付属している
IntelliJユーザから見ると、起動用JREが無いことより「Android SDKが付属している 」ことがAndroid Studioらしいなと思いました。
AS_INSTALL
の中で比較的重要なディレクトリは、<AS_INSTALL>/bin
です。このディレクトリ内にあるstudio.exe.vmoptions
(またはstudio64.exe.vmoptions
)とidea.properties
の2つが重要な設定ファイルです。
idea.properties
はこの後で説明しますが、xxx .vmoptions
ファイルは次回説明します。非常にややこしいのですが、このxxx .vmoptions
ファイルはプラットフォームによって名称が微妙に 異なります。
Windowsの場合
前述のとおりstudio.exe.vmoptions
かstudio64.exe.vmoptions
Macの場合
idea.vmoptions
のみ
Linuxの場合
studio.vmoptions
またはstudio64.vmoptions
AS_INSTALL
は、Android Studio本体が含まれるディレクトリですが、アップデートや何からの理由による再インストールなどで消されても特に困らない程度のディレクトリです。
AS_CONFIGの中身
AS_CONFIGはAndroid Studioを起動した時に作成されます。手動で削除しても、Android Studioを起動すると初期状態で再生成されます。ここには、Android Studioの設定情報が格納されます。つまり、自分好みにあれこれ試して育てていったAndroid Studioの設定が格納されるわけですので、ついウッカリ消してしまったりすると大変哀しい思いをするので大事に扱いましょう。このディレクトリを丸ごとバックアップしておくと何かと安心です。Android Studioの機能で設定情報のエクスポートやインポートも可能です(設定ファイルのほどんとはXMLファイルです) 。
ちょっと先走った説明になりますが、Android Studioに追加したプラグインは、<AS_CONFIG>/plugins
に格納されます(Macだけ場所が異なります) 。ちなみに、このディレクトリはプラグインを追加しないと作成されません。初期状態では存在すらしません。
先ほど説明したAS_INSTALL
にもプラグインディレクトリ(<AS_INSTALL>/plugins
)がありますが、こちらはAndroid Studioにバンドルしているプラグインの格納場所で、それ以外のプラグインはすべて<AS_CONFIG>/plugins
にインストールされます。
AS_CONFIG
内のサブディレクトリ名から何の設定がどこに格納されているか推測できると思います。
図11 AS_CONFIGの中身
AS_SYSTEMの中身
AS_SYSTEMにはAndroid Studioが内部的に作成するキャッシュやインデックス、ローカルヒストリなどが格納されます。要するにAndroid Studioの作業用ディレクトリで、それほど重要なディレクトリではありません。間違って消してしまっても、すぐ再作成されます(消えて困るのはローカルヒストリくらいですかね……) 。
図12 AS_SYSTEMの中身
このディレクトリ内でもっとも重要で、場合によっては頻繁に参照することになるのはログファイル(<AS_SYSTEM>/log
)だと思います(Macの場合は、$HOME/Library/Logs/AndroidStudioPreview
になります) 。Android Studioがなかなか立ち上がってこない/ウェルカム画面まで出たがプロジェクト作成できない/など不調になったときは、まずはログを確認することをオススメします。大抵、試しに入れてみたプラグインが悪さをしている場合が多いです。
ログファイルは、Android Studioのメニューバー(Help→Show Log in Explorer/Finder)からもたどり着けますが、残念なことにウェルカム画面では、メニューバーが表示されないためあまり役立つことがありません(トラブルの多くは起動時に起きます) 。
Macの場合、Finderのアプリケーション/ユーティリティにある「コンソール 」から参照できるので、Finderでログファイルの場所を探すより便利だと思います。
図13 「 コンソール」からAndroid Studioのログを参照
Android Studioが起動しようとしているがどうかを確認する手がかりに、Android Studioのプロセス名を知っておくと良いのですが、調べてみたところWindows版のAndroid Studioのプロセス名は「java.exe
」でした(結構ヒドい……) 。
なおプラグインの削除は、先ほど紹介した、<AS_CONFIG>/plugins
から該当プラグインを直接削除するだけでOKです。
まとめ
これでAndroid Studioのディレクトリ構造はほぼ把握したと言っても過言ではありません。インストーラを用いるWindows版と言えど、Android Studioはパッケージを展開するだけでOSのレジストリなどは一切変更しません。完全にAndroid Studioを削除したい場合は、今回紹介したAS_INSTALL
, AS_HOME
(AS_CONFIG
, AS_SYSTEM
含む)を削除すれば済みます。
別の言い方をすると、Windows版はマシンを1台犠牲にしてAndroid Studioをインストールしたなら、そのAS_INSTALL
をまるごと他のPCにコピーするだけでそのPCにインストールすることができます。
さあ、これで後腐れなくAndroid Studioを使い倒す準備ができました。次回は、簡単なプロジェクトの作成とプロジェクトまわりの設定について説明します。
おまけ:AS_HOMEやAS_CONFIGなどの場所の指定について
これらの場所はどこに指定があるかというと、<AS_INSTALL>/bin/idea.properites
にあります。同ファイルをテキストエディタで開き、以下の設定をすることでAS_HOME
などを任意の場所に変更できます。
リスト1 <AS_INSTALL>/bin/idea.properties
#---------------------------------------------------------------------
# Uncomment this option if you want to customize path to IDE config folder. Make sure you're using forward slashes
#---------------------------------------------------------------------
# idea.config.path=${user.home}/.AndroidStudioPreview/config
#---------------------------------------------------------------------
# Uncomment this option if you want to customize path to IDE system folder. Make sure you're using forward slashes
#---------------------------------------------------------------------
# idea.system.path=${user.home}/.AndroidStudioPreview/system
#---------------------------------------------------------------------
# Uncomment this option if you want to customize path to user installed plugins folder. Make sure you're using forward slashes
#---------------------------------------------------------------------
# idea.plugins.path=${user.home}/.AndroidStudioPreview/config/plugins
#---------------------------------------------------------------------
# Uncomment this option if you want to customize path to IDE logs folder. Make sure you're using forward slashes.
#---------------------------------------------------------------------
# idea.log.path=${user.home}/.AndroidStudioPreview/system/log
"# idea.xxx
" の先頭にあるコメント記号(#
)を削除し、それぞれ任意のディレクトリを指定します。Mac版のidea.properties
は上記のようにコメント状態になっていませんので、idea.config.path
やidea.system.path
などを適時追加していってください。
リスト2 Mac版<AS_INSTALL>/bin/idea.properties
の設定例
idea.config.path=~/.AndroidStudioPreview/config
idea.system.path=~/.AndroidStudioPreview/system
idea.plugins.path=~/.AndroidStudioPreview/config/plugins
idea.log.path=~/.AndroidStudioPreview/system/log
Mac版ではユーザのホームディレクトリを指す${user.home}
は有効になりませんでした(<AS_INSTALL>/bin
に${user.home}
というディレクトリが作られる) 。ホームディレクトリを指定する場合は、${user.home}
の代わりにチルダ(~
)を使って下さい。Linux版は試せていないのですが、Mac同様チルダ(~
)を使うのではないかと思います。
この設定を上手に行うことで、USBメモリで持ち運び可能なポータブルAndroid Studioなども作成できますので、腕に覚えのある方はチャレンジしてみてください。