サイバーエージェントを支える技術者たち

第26回プライベートクラウド構築プロジェクト[前編]

クラウドコンピューティングの実現形態の1つに、自社専用のクラウド環境を構築して利用する「プライベートクラウド」があります。サイバーエージェントにおいても、1年ほど前からプライベートクラウドの構築に取り組んでいるとのこと。今回はそのプロジェクトに関わる、アメーバ事業本部 プラットフォームディヴィジョンの前田拓氏と坂本佳久氏、そして前田耕平氏の3名にお話を伺いました。

サイバーエージェントが構築するプライベートクラウド環境

現在、インターネット上ではIaaSやPaaS、SaaSなどさまざまなクラウドサービスが提供されており、それに伴って企業でのクラウド活用も本格化してきました。クラウドにはさまざまなメリットがありますが、必要なときに必要な分だけ即座にサーバを利用できることや、スモールスタートが可能で、サービスの成長に合わせて柔軟にサーバ構成を変更できることなどがメリットとして挙げられるでしょう。また、仮想化技術の活用により、サーバリソースの有効活用が可能なことも大きな魅力です。

サイバーエージェントでは、このクラウド環境を自社で運用する「プライベートクラウド」の構築プロジェクトを約1年前にスタート。現在は前田拓氏と坂本佳久氏、そして前田耕平氏の3名で取り組んでおられます。このプロジェクトのミッションについて、前田拓氏は次のように話します。

前田拓氏
前田拓氏

「現状、サイバーエージェントでは物理サーバのほうが使われている数が多いのですが、プライベートクラウドの構築によってこの比率を変え、仮想サーバの利用を増やしていくことが目的の1つです。ただ、仮想サーバに強くこだわっているわけではなく、物理でも仮想でも使いたいときにすぐに使える環境を構築することが最大のミッションだと考えています」⁠前田拓氏)

アプリケーションのテスト環境に構築したプライベートクラウドを活用

では、どのようなきっかけでプロジェクトがスタートしたのでしょうか。前田拓氏が説明するのは、サーバの構築から提供までの時間を短縮したいという思いです。

「サーバを構築するには、データセンターに出向くところから始まり、ラッキングやネットワーク設定、OSのインストールなど、さまざまな作業が発生します。さらに最近では、近場のデータセンターを借りづらくなったという状況もあり、依頼を受けてからサーバを提供するまで、ある程度の時間が必要になっていました。このままではアプリケーションエンジニアを待たせることになり、最終的にはリリーススケジュールにまで影響しかねないということで、安定していたVMwareの製品をひとまず使って、プライベートクラウドを構築することになったわけです」⁠前田拓氏)

プロジェクトがスタートした当初は、おもにエンジニア向けのテスト環境用としてプライベートクラウド上の仮想サーバを提供していました。

「それ以前は、テスト環境の構築にもいちいち物理サーバを構築する必要があり、急いでいるときはエンジニア間で貸し借りなどが行われていました。しかし現在では、ほぼプライベートクラウドを使ってテスト環境を構築できています」⁠前田拓氏)

前田耕平氏
前田耕平氏

なお、現在はプライベートクラウドの基盤ソフトウェアとして、VMware製のものに加え、オープンソースで提供されている「OpenStack」が利用されています。それぞれの環境における仮想サーバの提供時間は「VMwareなら1~2時間程度、OpenStack環境なら10秒ぐらいですね」⁠前田耕平氏)と、迅速に仮想サーバを提供できる環境が整っているようです。

坂本佳久氏
坂本佳久氏

ただ、坂本氏によれば、⁠OpenStackはマニュアルが全然整備されていないほか、現バージョンではマルチNICをサポートしていない点など、苦労することも多かったです」とのこと。次回は、こうした課題を乗り越えて構築されたプライベートクラウドが、現在どのように運用されているのかを伺っていきます。

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