SE稼業は忘己利他(もうこりた)─現場に転がる箴言集

第12回楽へ流れる自主自律

はじめに

自律性とは、自分が遭遇した問題に対して、自分自身の観察力で判断し自分の力でそれを解決していく能力のことを意味します。自律性の発揮は、自力更正とか自助・自主自立という形で現れてきます。この自律性の力は人間の思考や行動のベースとなる重要な能力であると言えます。

#78:水の低きに就くがごとし(孟子)

水は低いほうへ低いほうへと流れていくように、人は楽なほう楽なほうを選ぶ。いつもの慣れた方法が現実に合わなくなってもなかなか変えようとはしない。ついにはいつもの方法も手抜き仕事となり、構造物は傾き、製造物は不具合の山となる。

いつものやり方~無意識の習慣に気づくこと

人は恐ろしいほど習慣に支配されている。何かを覚えると、無意識のうちにその方法ばかりを使い続けてしまう。100人に同じ情報を与えると、99人はそれを事実として受け入れるが1人は「これをこうしたらどうだろう」と考える。自然界と同様、99%は何の変化ももたらさないが、100に1つは突然変異し、進化につながる。

フレドリック・ヘーレン、⁠スウェーデン式アイデアブック』

#79:“一歩前へ”出られないわけ

「あきらめ」から「あきらめない」に向かう次の一歩を踏み出すための8つの法則。

  • 他人に対する不信感を追い払おう!
  • 自分に対する不信感を追い払おう!
  • 不安を取り除くのではなく不安の原因を取り除こう!
  • 苦手意識から自分を解放しよう!
  • 完璧を目指すのではなく妥当さを目指そう!
  • 希望や欲を発見しよう!
  • 自分の一番安心できるホームポジションを持ち、心のコンパスを働かせよう!
  • とらわれ(我執)から自分を解放しよう!

新しいことは学びたいが、すでに知っていることから十分な見返りを得ているため、身動きできない。

G.M.ワインバーグ

損失回避の原則
  • 未確定の将来の大きな利益よりも、現在の小さくても確実な利益を選ぶという心理傾向のこと。一方、損失の局面においてはリスクをとってでもその損失を抑える選択肢を選ぶ。
  • 人は、同額の利益から得る満足より、損失から受ける苦痛のほうがはるかに大きい。

ダニエル・カーネマン、行動経済学プロスペクト理論より

#80:自分事? 他人事?

どのような仕事であったとしても、その依頼主の問題が自分事として心配でなければ、その仕事を引き受ける資格はないと言える。

依頼主のことや依頼主の問題が心配でなければ、コンサルティングを引き受けるな。

G.M.ワインバーグ

#81:他人依存は自分を弱くする

他人に依存するところからリスクは発生してくる。他者依存・自律性のない人のリスクは高くなる。相互依存的な寄りかかり関係の人々のリスクは高くなる。

自らの貢献は何かという問いからスタートするとき、人は自由となる。

ピーター・ドラッカー

#82:自分の頭で考える訓練を~自律的連帯

連帯感で結ばれたチームは、まるで1つの生きた生命体のように自律的に効率的な行動をとることができるだろう。チームプレーとはリーダーがいちいちメンバーに行動を指示することでもないし、メンバーはいちいちリーダーの指示を待つことでもない。

一番うれしいのは、監督が動かすのではなくて、選手同士がチームを動かす組織を目指していたということ。

岡田武史、サッカー前日本代表監督

#83:モグラタタキからの脱出法

あちらを直せばまたこちらがおかしくなるというような品質問題の渦に巻き込まれた場合の効果的なポイントは次のとおりである。

  • いつまでも効果の出にくい方法にこだわって時間を浪費しないこと
  • 「仮説と検証」による対策を実施すること

問題の真因についていくつか仮説を立て、可能性が高いと思われるところに集中的に複数の対策を同時ないしは連続的に実行すること。広範囲拡散型の対応をやめ、弱点と思われる箇所に集中的な対策を実施すること。⁠仮説と検証」は未知の問題解決の有力な武器となる。

下手の考え休むに似たり

うまく考えられないのなら、考えすぎるな。うまくいかなかったことがあったら、他のことをやれ。

G.M.ワインバーグ

#84:万機公論に決すべし~オープン&親密な会話

開発内部における密なコミュニケーションはチームの協調性を育て、日々変化する要求に対する柔軟性を強化し、自分の頭で考え行動する自律性をもったチームを育成する。また顧客との密なコミュニケーションは顧客価値の発見に有効に機能し、重要な顧客要求に開発のリソースを集中させることを可能にし、無駄な開発を減らす。また協力会社間との密なコミュニケーションは相互の認識違いによる誤った開発を防止し、やり直しなどの無駄な開発を減らす。

スクラムミーティング
  • なぜ、日次スクラムミーティングが必要なのか。前日の報告、新たな課題の報告、翌日予定の報告だけならWebデータベースに記載すれば全員が内容を確認できるのに
  • 人同士の交流は自動化すべきでない(自動化できない)
  • スクラムミーティングは単に情報を集めるだけのミーティングではなく、チームの相互コミュニケーションのためのミーティングである
  • 報告者の肉声の発表の場であり、内容によっては助けを申し込むこともできる
  • 互いに面と向かって問題を管理する
  • これにより、全員が勇気と正直さを持ち、問題を解決するプレッシャーに対抗する手段を得ることができる
  • また、メンバーが次に何を行うかを全員の前で約束する。そうすれば、テストに対する信憑性と信頼性が増す
  • スクラムは、深い社会的な相互関係でチームメンバー間における信頼を確立する

ケン・シュエイバー/マイク・ビードル 著、⁠アジャイルソフトウェア開発スクラム』

おわりに

自律性の思考・行動プロセスサイクルは次のフローで表すことができます。

  • (1)観察:目前の問題や課題などの現実を自分の目で観察する
  • (2)判断:観察した状況を自分の頭で判断し、意味を発見する
  • (3)決定:判断の内容に従って自分の意思で対応策を決定する
  • (4)行動:決定した対応策を自分で主体的に行動に移す

このフローは現実の問題や課題が解決されるまで何回も繰り返す必要があります。

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