[公式]Evernote API徹底活用レシピ

第7回TOSHIBA Bulletin Board:Evernote API活用事例

Evernote APIの活用事例として、TOSHIBA Bulletin Board(以下ブリティンボード)の開発に携わっている方々にお話を伺いました。今回はその内容をお伝えします(以下敬称略⁠⁠。

Q:まずブリティンボードの概要や開発経緯などを教えて頂けますか?

八木:ブリティンボードは現実の掲示板や、Windowsのデスクトップを模したアプリケーションです。開発のきっかけは、ユーザのデスクトップにガジェットやショートカットなどが大量に置かれていたり、さらにその上に付箋紙が貼られていたりしているのを見て、改善したいと思ったからでした。ブリティンボード1.0は、自由にボードにファイルやガジェットを貼りつけられるというものでした。複数のボードをカテゴライズして管理することも可能です。

1.0は自分の情報を管理するツールでしたが、2.0ではそれを手軽に他人と共有できるようにしたかったのです。たとえば保存した家族の写真を共有するなどが考えらます。この共有機能の部分にEvernote APIを使っています。

Q:データはアプリケーションで持っていて、ユーザが共有したいときだけEvernote APIを使っているということですか?

八木:そうです。

Q:開発時期・期間についてお願いします

石垣:1.0はWindows 7に合わせてリリースしたので、2009年冬になります。開発時期はWindows7のRCからで、ディスカッション自体はもっと前からやっていました。ユーザ評価に1年、コンセプトを作るのに数ヶ月かかっています。

八木:ブリティンボードはトップダウンでやることが決まっていたので、時間をかけることができました。

Q:トップマネジメントからというのはよくあるのでしょうか?

八木:よくありますが、大きい企業なのでそれが全てではありません。

Q:元々Evernoteユーザでしたか

八木:共有機能の話があるまでは知りませんでした。

齊木:日本語化される前から使っていました。使い続けた理由はWebクリップをしたかったからです。現在はブリティンボードと併用しています。

Q:ターゲットのユーザは?

八木:Windows 7を使っているすべてのユーザになります。Evernoteについては、個人の情報を共有して他人とコミュニケーションしたい人です。

石垣:ブリティンボードはなるべくシンプルにして直感的に使ってもらえるようにしています。

Q:ユーザからの反応はどうでしょうか?

石垣:コンセプトの段階でユーザ評価を海外で行いましたが、女性に人気でした。

Q:これまで社外のAPIを製品に組み込むという事例はありますか

八木:ソフトウェアとしてはEvernoteが初めてになります。2.0に共有機能を付けようとなったときに何社か提携候補を挙げました。その中でEvernoteが一番レスポンスが早く、タイミングが良かったというのが決め手になっています。この時点ではAPIの詳細を調査してはいませんでした。

Q:そのような経緯だということは、開発も協力して行ったのでしょうか

八木:いいえ、開発自体はこちら側でAPIの仕様を読みながら行って、細かい質問があるときに問い合わせるという形で行いました。

石垣:APIドキュメントが良くできていたので、見ながらやっていたらできてしまいました。オフィシャルのクライアントを作れるくらいのAPIが提供されているので、苦労したところはそれほどありませんでした。

Q:開発環境や体制については

石垣:C#+Visual Studioです。2.0は半年弱で作りました。

八木:Windowsクライアントは石垣を含め3名のチームで開発しました。デザインに関してはまた別にいます。

Q:クラウド版についてもお聞きしたいと思います

谷内:クラウド版は、クライアントアプリケーションから招待メールをもらうとブラウザからも共有閲覧できるというものです。すでに5/20から提供しています。クラウド版の開発について意識した点は、最低限クライアントと同等の操作性をもたせるということでした。

Q:機能はクライアントと同等なのですか

八木:今は閲覧機能のみになります。まず、Windows以外の人にも共有できるようにすることに注力しました。Webでやれば大体サポートできるので、Web上で閲覧機能を作りました。

Q:将来的には全機能を提供するのですか?

八木:そこにはハードルがあります。たとえばTVからアクセスしたときにユーザが入力や編集をしたいのか、現時点ではよくわかっていません。ユーザからの反応を見て考えたいと思っています。

Q:クラウド版は携帯からも閲覧可能なのですか?

齊木:現在Flashで実装しているので、Flashをサポートしている携帯なら見られると思います。HTML5でもOperaやFirefoxで見られる程度には作ってみたのですが、ブラウザごとの挙動が異なっていて辛かったので、デスクトップでのHTML5採用は見送っています。モバイル向けにはHTML5で提供していこうとしています。ただし、iOSのサポートについては、Evernote WebがiOS専用のWeb UIを提供していない点が障害になっています。

Q:開発のやり方にアジャイルなどの特徴はありますか?

石垣:WindowsクライアントはPCのリリースサイクルに合わせて更新するので、アジャイルではありません。ウォーターフォールでもありませんが。

齊木:クラウドのブラウザ側は毎日HTML5とFlashを日々更新しています。アジャイルですね。テスト用コンテンツを見られるかどうかはチェックしています。

Q:サーバ側で気にした点は?

谷内:お客様の情報をどう扱うかが一番重要なので、セキュリティです。Evernote APIに関しては、ドキュメント読めば5分以内にわかるので苦労した点はほとんどありません。

Q:何かAPIで苦労した点はないでしょうか?

石垣:日本語の外字問題がありましたが、サポートに問い合わせたらすぐ直してくれました。

Q:良かったAPIを挙げてもらえますか?

石垣:findNoteです。検索系のAPIが充実していて嬉しい。OCRの情報はまだ使っていません。

Q:逆にAPIの不満な点があれば教えてください

石垣:ブリティンボードには手書き入力もありますので、それをInkNoteとして保存したかったのですが、形式が公開されていませんでしたので2.0では断念しました。

Q:InkNoteはWindows版特有の機能です。同様の機能をプラットフォームに依存しない形で実装することを検討しています。そのときにはAPIも公開できるでしょう

齊木:装飾情報などを保存するためにENMLの仕様を読みましたが、DTDで定義されているのが嫌でした。せめてXML Schemaで書いてほしかったです。また、見た目と構造の分離をして、見た目の部分についてEvernote側で取り決めをしてくれると、ビューアーを作る人達は嬉しいと思います。

谷内:ユーザに見えない開発者だけが使えるデータの格納先が欲しいです。現在は必要なデータをノートに保存していますが、ユーザが誤って消してしまうというリスクがあります。

Q:今後の展開についてお願いします

八木:Windowsクライアント版やクラウド版を開発したことで、すでにフレームワークはできました。これからはユーザの声を聞きながら、メリットがあるシナリオや使い方を模索して提供していきたいと考えています。

Q:お忙しい中どうもありがとうございました
インタビュイー
八木 秀規(Yagi Hideki)
設計開発センター デジタルプロダクツ&サービス設計第3部
参事
谷内 謙一(Taniuchi Kenichi)
設計開発センター デジタルプロダクツ&サービス設計第3部 第5担当
主務
石垣 智(Ishigaki Satoru)
設計開発センター デジタルプロダクツ&サービス設計第3部 第5担当
主務
齊木 晃治(Saiki Kohji)
設計開発センター デジタルプロダクツ&サービス設計第3部 第5担当
主務

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