VPSのメリットはサーバを自由に操作できるroot権限が提供されることですが、一方でOSや各種ミドルウェアの設定をコマンドラインで自分自身で行う必要があり、サーバ運用の経験がないユーザには敷居が高いのも事実でしょう。こうした課題を解決するべく、データホテルが提供するVPS「EX-LITE」で提供されているのが「Plesk」です。
多彩な機能を備えたサーバ管理ツール
データホテルが提供している「EX-LITE」は、月額わずか1050円で利用することができるVPSサービスです。単純に月額利用料が安価であるだけでなく、回線費用が月額利用料に含まれているため、利用状況によってコストが増加してしまう不安がないなど、極めてコストパフォーマンスが高いサービスになっています。また無停止でのスケールアップが5段階まで可能なため、突発的なアクセス数の増加に対応できることも大きなメリットでしょう。
オプションも豊富で、たとえば契約した仮想サーバ同士をLANで接続することも可能で、2台のサーバを契約して1台をバックアップ専用に利用したり、あるいはWebサーバとアプリケーションサーバ、データベースサーバと役割を分けて使ったりすることもできます。こうした柔軟性の高さは、EX-LITEの大きな魅力と言えます。
また、VPSを本格的に使うのは初めてというユーザにとって嬉しいのが、わかりやすいGUIを使ってサーバを管理することができる「Plesk」がオプションとして用意されていることです。Pleskは数多くのVPSで採用されているサーバ管理ツールであり、SSH経由でのコマンドライン操作に自信がないユーザでも、WebブラウザベースのGUIを使ってさまざまな設定や管理作業を行うことを可能にしています。
Pleskのホーム画面。サーバを設定・管理するための多彩な機能が用意されている
Pleskで提供されている機能は多岐に渡ります。ユーザの作成や削除、Webサイトの構築や更新作業、あるいはメールの管理といったものに加え、当該サーバを利用した複数のユーザでのファイル共有、サーバの統計情報のチェック、さらには「WordPress」をはじめとするアプリケーションをインストールするためのインターフェイスまで用意されています。またそれぞれの機能には細かなオプションや設定があり、サーバの運用経験はないが、本格的なVPSを使ってみたいというユーザにはピッタリの機能だと言えるでしょう。
多機能なWebコンテンツ編集機能を搭載
レンタルサーバやVPSの主な用途の1つに、Webサイトの公開が挙げられます。このため、特にレンタルサーバではすばやくWebサイトを公開できるよう、あらかじめWebサーバやFTPサーバの設定が行われており、コンテンツをアップロードするだけでWebサイトを公開できるというサービスは少なくありません。PleskにPower Packオプションを導入すると同様の仕組みが用意されていますが、注目したいのは豊富なテンプレートを使ってすばやくWebサイトを制作できる仕組みが用意されていること。テンプレートの数は100種類以上で、「 サービス」や「小売業」 、「 エンターテイメントおよびレジャー」などさまざまなジャンルが用意されています。
PleskでWebサイトの構築と管理を行う「ウェブサイトとドメイン」画面
テンプレートを選び、会社名や住所など基本的な住所を入力して先に進めると、そのテンプレートに即したWebページが自動的に生成されます。ユーザはこれに対してテキストを入力したり、あるいは画像を追加したりしながらWebサイトを制作します。編集機能も豊富で、サイドバーの有無などページ全体のレイアウトを調整できるほか、サイト全体の色を調整するための仕組みもあります。サイト構成を編集するための画面もあり、新たにページを追加したり、並び順を調整したりすることも可能となっています。手っ取り早くWebサイトを作成したいユーザにとって、こうした機能は重宝するでしょう。
実際に標準で用意されているテンプレートを使ってWebサイトを作成したところ
Webサイトはテンプレートをベースにさまざまなカスタマイズが可能
ファイルマネージャの機能もあり、たとえば運用しているWebサイトにコンテンツを追加するといった場合、WebブラウザのGUIを使ってファイルをアップロードすることができます。もちろんFTPも設定済みで、PleskのGUI上からユーザを追加することが可能です。
Webサイト関連ではそれ以外にも多数の機能がありますが、その中でも面白いのは個人用Webサイトを構築するための機能が用意されていることでしょう。Pleskの豊富なWebサイト編集機能を使うことはできませんが、FTPでファイルをアップロードし、個人用のWebサイトを公開することが可能です。組織のWebサイトとは別に、個人用のWebサイトを構築したいといった場面で利用できそうです。
個人用Webサイトを作成するユーザを設定しているところ。PHPやPerlの利用可否も設定可能だ
スパム/ウイルスメールフィルタを標準装備
メールサーバを管理するための仕組みも用意されています。個々のユーザ用にメールボックスを作成できるのはもちろん、メール転送の設定やメールエイリアスの作成、自動返信といった設定にも対応しています。
メールアカウントの設定画面。受信したメールの転送も指定できる
注目したいのはスパムフィルタやアンチウイルスの機能が提供されている点です。スパムやウイルスやセキュリティに関わるだけに数多くのソリューションが提供されていますが、Pleskを利用すれば別途ソリューションを導入することなくスパムやウイルス付きメールを排除できるというわけです。
Webブラウザでメールを送受信できるWebメールの機能もあり、新規メールの送信や返信、受信したメールのチェックなど一通りの機能を備えます。EX-LITEをメールサーバとしても使うのであれば重宝するでしょう。
標準で付属するWebメール。基本機能はひととおり備えている
なおメールサーバには細かなオプションがあり、たとえば最大メッセージサイズやメールリレー時の認証方法(POP before SMTP/SMTP認証) 、DomainKeysやSPFの設定、DNSブラックホールリストを使ったSPAM防御の有効/無効などが切り替えられるほか、ホワイトリストやブラックリストを指定するためのインターフェイスも備えています。
意外と便利なのが「ファイル共有」機能です。自分だけがアクセスできる「パーソナルファイル」 、従業員間でファイルを共有できる「共有ファイル」 、外部のユーザとファイルを共有できる「パブリックファイル」の3つの項目があり、たとえば共有ファイルを使えば社内のファイルサーバの代わりにEX-LITEを使うことができます。物理的に離れた場所にいる同僚とファイルを共有したい、といった場面で便利でしょう。
パブリックファイルはURLを知っているユーザだけがファイルをダウンロードできるという領域で、メールでは送ることができない、大きなファイルを外部の人に送りたいといった場面で活用できます。パスワードを使ってファイルを保護することも可能です。
スマートフォンを使ってサーバを監視可能
ユーザ権限を設定するための仕組みもあり、たとえばPlesk全体の管理者と、日々Webサイトの更新を行うWebマスターをそれぞれPlesk上でユーザ登録し、利用できる機能の権限を役割に応じて制限するといったことが可能になっています。サーバ全体の管理者にはすべての機能を付与しつつ、WebマスターにはWebサイトの作成や更新に必要な機能だけ利用を許可できるというわけです。
iPhoneやAndroid、BlackBerryといった端末でPleskがインストールされたサーバのリソースをモニタリングができるアプリが提供されていることも注目でしょう。これを利用することにより、外出先でもメモリ使用量やCPUの平均負荷、サービスのイベントなどを参照できます。さらにPower Packオプション搭載の場合、「 Mobile Server Manager」を導入すれば、これらのモバイルデバイスで稼働しているサービスの確認やサービスの開始/停止、イベントの登録/解除、サーバの再起動といった操作も可能になります。サーバ管理者には有用なツールと言えるでしょう。
iPhoneから専用アプリを使ってサーバに接続したところ。CPU負荷やメモリ使用量をチェックできる。「 Mobile Server Moniter」での状況監視のみならPower Packなしでも利用可能だ
このほかにもPleskには多数の機能があり、コマンドラインで操作することなくサーバを幅広い用途で活用することを可能にしています。Pleskプランの月額利用料は1ユニットの場合で1575円。通常プランに比べると若干高くなりますが、コマンドラインの操作に不慣れなユーザであれば、十分にその価値はあるでしょう。また複数のユーザでサーバを管理する際において、ユーザごとにサーバ運用のスキルに差があるといったケースでもPleskは有効ではないでしょうか。