これまで3回にわたって、Webアプリケーションとはどんなものか、ということについて概観を述べてきました。Webアプリケーションとは、サーバに配置されているアプリケーションプログラムのことで、もともとは一方的にWebブラウザを眺めるユーザに対して情報を送信するものでした。
その後、ブログなどによって多くのユーザがデータを投稿をするようになり、コミュニケーションツールとしての位置を確立しました。そして、Ajaxが画面の操作性を高める手法として注目を集めるようになり、デスクトップアプリケーションの機能をWebアプリケーションでも実現しようという動きが具体的に出始めています。
これをふまえて今回は、Webアプリケーションがこれからどうなっていくのかについて述べていくことにします。
注目されるキーワード
これからのWebアプリケーションを表すキーワードとして、「RIA」と「サービス化」の2つが注目されています。1つ目のRIAとは、Rich Internet Appicationのことで、中核はWebアプリケーションなのですが、画面の見た目や操作性などにかかわる処理をユーザのPCにインストールして、サーバの負担を軽くしようというものです。2つ目のサービス化は、コンピュータとユーザではなく、コンピュータ同士が互いのWebアプリケーションにアクセスしあって情報をやりとりするものです。
RIA(Rich Internet Appication)
RIAでいうRichには、画面の見た目や操作性だけでなく、ユーザのPCで処理できる部分をWebブラウザよりも多くするという意味も込められています。こうすることで、サーバにアクセスが集中する事態を緩和できますし、ユーザ側もボタンをクリックするたびに待たされてしまうといったことが、それまでのWebアプリケーションよりも少なくなることが期待されています。
それをにらんで、Adobe AIR(Adobe Integrated Runtime)や、マイクロソフトのSilverlightといった製品がベータ版ながら出始めています。
その代わり、Webブラウザ以外にもユーザのPCにインストールしなければならない機能が増えますので、バージョンアップのたびにそれをインストールしなおす必要があり、企業システムなど管理する台数が多いと、手間がかかるようになることが心配されています。
サービス化
サービス化とは、システム内部でどんな処理が行われているかにかかわらず、決められた情報を入力すれば、それに対応した出力を提供するということです。レストランで客がメニューに示された食事を注文したとき、客が注文したメニューのレシピを知らなくても、食事をいただくことができるのと同じです。
最近では、外部からシステムにアクセスする機能を公開し、一定の条件の下で自由に利用してもらえるようにする動きも出てきています。それを「システムのサービス化」と呼ぶことがあります。また、サービス化を実現するシステムをSOA(Service Oriented Architecture)という概念の下で設計する動きも一部で起こっています。このとき、システムが外部からのアクセスを受け付ける機能は、Webアプリケーションによって実現されます。
システムのサービス化においては、システム内で稼動しているアプリケーションがレシピに相当します。レストランにとってレシピは門外不出であるのと同様、システム上のアプリケーションは、サービスを提供する側の競争力の源泉として位置づけられます。
まとめると、
- これからのWebアプリケーションとして「RIA」「サービス化」が注目されている
- RIAでは、画面の見た目や操作性が向上することが期待される一方、インストールの手間が増えることなどが心配されている
- サービス化においては、システム内で稼動するアプリケーションが競争力の源泉になる
ということになります。
これから数年で、Webアプリケーションの姿は大きく変わることになるかもしれません。