前回紹介した検索やネット掲示板などは、当初はインターネットの存在を早くから知る一部の技術者などがPCからアクセスするものでしかありませんでした。ですが、やがて技術者以外のユーザからもインターネットにアクセスされるようになってくると、文字のやり取りが主たる目的ではないWebアプリケーションも現れ、それらはサービスとして位置づけられるようになります。
ネット通販(ECサイト、eコマース)-携帯電話からのアクセスがPCを上回る
ネット通販市場白書2007(矢野経済研究所)によると、2005年度のBtoC Eコマース規模は3兆4,575億円だそうです。言い換えると、1年間でそれだけの金額がネット通販によってやり取りされているということです。
Webブラウザもコンピュータ上で動作しています。もともとコンピュータが得意なのは、名前の通り計算です(*1)。ですから代金や送料の計算はお手のものです。そしてインターネットであれば、アクセス可能である限り顧客が世界のどこにいても注文できます。また、商品の送り先などのデータは顧客が直接入力したものがそのままデータベースに保存されますので、通販業者が手書きの注文票を見てデータを入力しなおす手間も省けます。
インターネットをビジネスに生かそうという試みは、日本では1995年に開始された「マルチメディア情報流通実験」までさかのぼれるでしょう(*2)。この実験ではネット通販のことを「サイバーモール」と呼んでいますが(1996年2次リリース)、当時は他にも「バーチャルモール」という呼び方もありました。
また、「実験」であったということは、この当時は本当にネット通販というものがユーザに利用されるのかを探っていた段階であったことも、窺い知ることができます。
今でこそ代表的なネット通販サイトとして知られる楽天が「楽天市場」を開始した1997年当時に(*3)、これほどネット通販の規模が拡大すると予測できた人はほとんどいなかったのではないでしょうか。
ネット通販の拡大は、1999年に開始された携帯電話のiモードによって加速します(*4)。iモードは携帯電話からインターネットに接続するサービスです。これにより、それまでPCを使ったことの無かった一般のユーザもネット通販サイトにアクセスする機会を得て、いつでもどこでも予約や注文ができることのメリットが、広く一般に認識されるようになりました。
前述の白書でも、携帯電話端末利用者がPC利用者を上回り、過半数はPCと携帯を併用していると報告しています。
音声/動画の配信-ブロードバンドとプラグインが可能にしたWebアプリケーション
総務省が2007年6月7日に発表した、同年3月末時点のブロードバンドサービス契約数は2,677万件でした(*5)。インターネット接続のブロードバンド化は着実に進んでいます。
それとともに発展してきたのが、ポッドキャスト(Podcast)と呼ばれる音声配信や、YouTubeのような動画配信です。
これらのWebサイトにアクセスすると、再生ボタンやダウンロードの進行状況を示すインジケータなどが表示されます。これらはWebブラウザ自身が持つ機能によるものではなく、一緒にインストールされるFlashプラグインによって実現されています。言い換えると、再生ボタンなどはWebブラウザがFlashプラグインの機能を借りて表示しているのです。
プラグインとは、Webブラウザ自身では実現できない機能を画面上で実現するためのソフトウェアを言い、現在広く用いられているWebブラウザでは、前述のFlashプラグインがあらかじめインストールされています。PDFファイルを開くためのAcrobatプラグインがインストールされている場合もあります。
これにより、Webブラウザ画面で動画を再生したり、PDFファイルを閲覧したりできるようになっているのです。このところ増えている、アニメーションを多く取り入れているWebサイトでは、その多くがFlashによるものといってよいでしょう。
1つの画面上で、文字・音声・動画など多くの情報を扱えるようになったことは、ハードウェアの進化やブロードバンド化など、技術的に多くの要素が積み上がって可能になりました。その一方で、ユーザがあまりに多くの情報をやりとりしていると、Mixi疲れ、ブログ疲れなどという言葉に表されるように、それに振り回され、そして疲れてしまうのではないかという懸念もあります。
技術が発展することはとてもすばらしいことですが、それをどのように活用していくかは、これからのネット社会の課題ではないかと筆者は思っています。
この連載は今回で最後となりました。2部8回にわたりお付き合いいただきまして、ありがとうございました。