4月27日(日)に、名古屋でThe Student Day というイベントが行われました。
このイベントは、現在一線で働くエンジニアから近未来のIT活用についてのプレゼンテーションがあったり、全国高専プログラミングコンテストの優勝チームの作品が展示されているなど、未来を担う学生たちがヒントを得る場、有益な出会いがもたらされる場です。
このThe Student Dayの目玉の1つであるプログラムが「Imagine Cup 2008 日本大会」です。
事前に選ばれた上位3チームがプレゼンテーションを行い、1位となったチームが7月の世界大会「Imagine Cup 2008」に出場するソフトウェアデザイン部門日本代表となります。
さてさて、どんなプレゼンテーションが見られたのでしょうか。以下、amachangのレポートをご覧下さい。
会場は名古屋駅から見えるほど近いHAL名古屋。 校舎の入っているビルは今年の3月に完成したスパイラルタワーズ。
若い熱気に包まれたイベント会場
まず、会場に入って最初に感じたのは観客の多さでした。
学生しか参加できないイベントということで、参加者が少ないのではないかと思っていましたが、会場は満席でした。会場は若い学生たちの熱気に包まれていました。
会場は溢れんばかりの人
世界大会への道のりを説明するマイクロソフト 田中達彦氏
今年のテーマは「環境保護」 。このテーマに基づいて、日本大会の最終選考に残った3チームは次のようなソフトウェアを作ってきました。
グローバル消費電力管理システム「ECOGRID」 :NISLab(同志社大学)
3R促進ウェブサイト「Reco」 :IAMAS(国際情報科学芸術アカデミー)
新次元地図情報システム「moQmo」 :Team EMET(東京大学大学院/北陸先端科学技術大学院大学)
どれもそそるタイトルですね^^
そして、この中で見事Imagine Cup 2008世界大会への出場を果たしたのは、NISLabでした!本当におめでとうございます!
家電を遠隔操作して省エネ「ECOGRID」
今回、世界大会に出場が決まったNISLabの「ECOGRID」とはどんなサービスなのでしょう。「 ECOGRID」は次の2つの機能を提供します。
家電機器を自動制御する
地図上に参加者の家庭をマッピングし、消費電力情報を共有する
これらの機能によって、全世界が同じ問題を共有しながら快適さを維持したうえで、消費電力を削減することができるそうです。
おお。なるほど。
確かに、国を超えて家庭の消費電力がわかれば、多くの電力を消費している先進諸国は電力削減の意識が芽生えるのではないでしょうか。電力をどうやって減らすかということはもちろん、意識を変えるというところにも着目しているのが素晴らしいと思いました。
ユーザインタフェースもかなり洗練されていて、シンプルな操作で、ユーザのやりたいことはほとんどできてしまうように感じました。また、地図やグラフなども、視覚的にわかりやすいものになっています。
「 ECOGRID」はSilverlightで実装されており、Silverlight対応のブラウザがあれば誰でも世界とつながることができます。そんな技術面の手軽さもいいですね。
ちなみに「ECOGRID」という名前は、グリッドコンピューティングの考え方をエコにもいかせないかという発想から付けられたものだそうです。
NISLabのメンバーの今大会で一番思い出に残っているのは
「 前々日に、みんなで徹夜してプレゼンを何度も直したこと」
だそうです。その徹夜の中でさまざまなことを語り合い、チームの結束がさらに増したようです。青春ですね。いいですね^^
ソフトウェアが絆になった瞬間ですね(大げさですか?)
登録している家や企業を地図で一覧でき、電気を使い過ぎているところがわかりやすく表示される
NISLabメンバー。左から松下知明さん、清水誠さん、加藤宏樹さん、中島申詞さん
まさに接戦
今大会は審査員が口を揃えて「僅差」だったと言うほど、甲乙の付けがたい接戦だったようです。
残念ながら2位、3位に終わってしまったIAMASの「Reco」とTeam EMETの「moQmo」ですが、これらのソフトウェアもまた素晴らしいものでした。
「世界大会で上位を目指すには、アピールしたい部分をもっと明確にして、具体的な数字を出すなどで説得力を持たせた見せ方を考えること」2004年~2006年の3年連続で世界大会に出場、Imagine Cup 2006では世界ベスト6に入賞した経験からアドバイスをする審査員 中山浩太郎氏(東京大学知の構造化センター特任教授)
「どのチームもまだまだクリアすべき課題はある。1位になったNISLabチームは世界大会に向けて、2位、3位になったチームはどんどん機会を設けて露出し、さらに作品を磨き上げていってほしい」と話す審査員竹内郁雄氏(東京大学大学院教授、未踏ソフトウェア創造事業プロジェクトマネージャー)
3Rを軸にした「Reco」
「Reco」は、消費者、企業、自治体が協力しあって、ゴミの「Reduce(削減) 」 「 Reuse(再使用) 」 「 Recycle(再利用) 」 ( 3R)を促進しようというWebサイトです。
具体的には、製品のエコに関する情報を蓄積したり、不要になった製品をトレードする場を設けることで、ゴミを減らしていこうとするものです。
ユーザがこのサイトを利用することによって、製品の再使用需要情報、エコ情報が蓄積されデータベースができあがっていき、それが消費者の製品を選択する一つの指標になっていけばとのことでした。
「 Reco」はモバイルでも使えるサービスで、iアプリで製品のバーコードを写し、製品の情報を入力することもできるようです。
分別方法をユーザが記入し、地域の情報として蓄積していく。サイドにはその地域のごみ回収日のカレンダーが表示される
時間ごとに変化する地図情報を見られる「moQmo」
「moQmo」は、地図に時間という新たな次元を付け足し、地図上に乗せる情報をプラガブルに追加できるようにしたものです。
一見、環境保護とは無関係なようですが、この地図でゴミ集積場のゴミ量の変化を見ることなどができるそうです。
この地図がものすごくよくできていて、時計を回すような操作で地図上の情報が変化していく様子に感動してしまいました。
クライアントはすべてJavaScriptを使って書かれているのですが、かなり洗練されていてまるでFlashのようだと感じてしまいました。
右上の時計を進めたり戻したりすると、それに応じたごみの量の変化や電車の運行状況を見ることができる
プレゼンの上手さに脱帽
また、どのチームもプレゼンがうまかった!というのが大会全体を通しての感想です。
課題を見付け
ゴールを設定し
コンセプトを決め
ソリューションを提供する
この流れが完璧でした。
会場に問いかける、インパクトのあるデモを見せる、音や視覚を効果的に取り入れるなど、細かいこだわりもばっちりでした。
どのチームのプレゼンを見ても、本当に学生なのかと思ってしまいます。本当にすごいです><
NISLabは会場から京都にある研究室のライトを操作してみせた
Team EMETは始めにスピード感のあるデモビデオを流し、一気に会場に興味を持たせた
さらに広まるImagine Cupへの熱い想い
大会が終わって見に来ていた高校生たちが「Imagine Cupに出たい」と言っているようです 。
「 若い人の頑張りを見て、さらに若い人がやる気になる」これは本当に素晴らしいことだと思います。今回、高校生たちをそのような気持ちにさせた彼ら3チームは、ある意味で最高の結果を残したのではないかと思います。
NISLabのみなさんには、今のソフトウェアをもっともっと素晴らしいものに洗練させて世界に挑んでいってほしいと思います。7月の世界大会が楽しみです!
審査員、マイクロソフト関係者と一緒に。左からIAMAS(準優勝) 、NISLab(優勝) 、Team EMET(3位)
大会後にインタビュー。技術面で工夫したところや、10分というプレゼンの制限時間のため削らざるを得なかった説明などを聞き、彼らがこの大会にかけた時間と意気込みを改めて知る
すばらしい作品は大会の外にも
The Student Dayでは、Imagine Cupの日本大会の他にも学生のパワーを思い知らされました。
会場の廊下では全国高専プログラミングコンテストの最優秀作品が展示されており、休憩時間には各ブースを見る人でごったがえしていました。その中でも個人的におもしろかったのは、課題部門最優秀賞に輝いたビーズ編み支援ソフト「Beauty and the Beads」( 弓削商船高等専門学校)です。
かわいらしいビーズ編みとはいえ、実際はものすごく複雑な組み合わせで色をマッピング、立体空間にビーズを配置、ビーズがばらけないように糸を通すなどたくさんの難しい課題を解決しなければなりません。
しかも、この作品はユーザインタフェースもすばらしく、操作のしやすさ、両手でビーズを編めるように足踏みボタンを採用するなど、とてもよく考えられていました。
完成作品を3Dで確認し、糸の通し方や色配置を支援する
「今は5人で開発しています」と小柳亜由美さん(左)と長尾詩織さん(右) 。ぜひとも1000speakersで話してほしい