IT化において組織の観点は不可欠
一般的には、情報システム部門が担う役目は、社内のさまざまな業務のIT化と、それによって経営に貢献することだととらえられていると思います。この社内のIT化というテーマを推進していくと、どうしても避けて通れないものがあります。それは「組織」です。
会社というのはある程度の規模になると組織だった構造になっていきます。そしてIT化が求められるのは規模の問題を解決することだったりします。では組織が抱える規模の問題とは何か。それは、「コミュニケーション」です。
組織の2つの側面
そもそも組織には2つの面があります。1つは「機能体としての組織」であり、もう1つは「共同体としての組織」です。機能体というのは、組織が目的を達成するために遂行すべき仕事のまとまり/しくみとしてのものです。そして共同体というのは、そこに集う人たちの人間関係の場としてのものです。
この両者はコインの表裏のような関係にあります。機能体がずさんだと、人は疲弊します。一方でいくらしっかりとしたルールなどを作って機能体としてまとまっていても、そこにいる人たちの関係が悪ければそのルールは機能しません。
そして機能体/共同体のいずれにおいても、上手く回るために重要なものがあります。それが「情報」です。
情報はコミュニケーションのためにある
機能体における情報というのはイメージしやすいことでしょう。たとえば顧客データとか請求データのようなものです。まさに情報システム化の対象となるものです。一方で共同体においても、実は情報が大切な役割を果たしています。
先に述べたように共同体としての組織というのは人間関係の場です。たとえば隠しごとがあったりするとどうでしょうか。人間関係がスムーズにいきません。しごとがあったという事実がわかるとぎくしゃくしてしまうでしょう。では一体何を隠しているのか。実はそれが「情報」です。
上司が/部下が/同僚が、一体何を考えているのかわからない。それは不安です。一緒に仕事をするうえでうまくやっていけないかもしれないと感じてしまうかもしれません。そのような気持ちを抱いたままで、果たして機能体の一員としてうまく役割を遂行できるか。残念ながら人間は機械ではありません。そういう感情の機微が判断を惑わせたり、手先に影響したりします。言葉以外のボディランゲージに不信感が表れるかもしれません。それを受け取った側がさらに不安と不快感を持って増幅されていくかもしれません。
これらが高じていくと、相互不信の蔓延した組織になってしまいます。そうすると閉塞感と停滞感の漂った、保守的/後ろ向きな、他人を許容しない、変化を許さない組織になってしまいかねません。こんな状態でいくらコンピュータシステムの導入を推進して機能体の能力を改善しようとしても、共同体としての組織が変化を拒絶するのですからIT化がうまくいかないのも道理と言えるでしょう。
社内コミュニケーション推進役としての情シスへ
情報システムというと、これまでは機能体としての組織が分業を推し進めるなかで生じるフォーマルな情報の流通を改善することが主眼でした。なぜなら、かつては飲みニケーションやレクリエーション、そして喫煙所でのちょっとしたやり取りが共同体における情報流通の場として存在し、それで十分だったからです。共同体を気にしなくても大丈夫だった土台があるから機能体を向上させることができました。しかしそれは80年代までの話です。今は、まず共同体としてのコミュニケーションをマネジメントしなければならないほどに土台が脆弱になってしまっています。
では、この問題にどの部署が取り組めば良いのか。私は情シスこそがそれを実現できる力を持っていると感じています。では情シスとして、具体的にはどのような取り組みをすれば良いのでしょうか。このお話、次回に続きます。