6月6日から8日にかけて、横浜のみなとみらい地区にあるパシフィコ横浜にてLinuxCon Japan 2012が開催されました。昨年を大きく上回る650名以上の皆様に会場に足を運んでいただき、会場は3日間を通して大変な熱気に包まれていました。
この3日間、世界のLinuxコミュニティ開発の中心地は間違いなく横浜でした。
「教えてもらう」から「発信する」へ
さて、前身のJapan Linux Symposiumを含めると今回で4回目を迎えるLinuxCon Japanですが、今回のLinuxCon JapanはこれまでのLinuxCon Japanではできなかったいくつかの試みがなされており、昨年までとはちょっと趣が変わっていたことに、皆さん、気づきましたか?
今回新たに試みたことは実際いくつもあったのですが、一部を以下に紹介します。
Linux Community 101 for Students という学生向けのセッションを設け、若い人材に『コミュニティ』を紹介し、コミュニティへの参加を支援
アジアへ向けて積極的なプロモーションを行い、日本以外のアジアからの講演者、参加者を増やし、アジアの人材との交流を活性化
とかく『閉じた世界』になりがちなオープンソースのリーガル分野に対して、「 Collaborationによる問題解決」というコンセプトを提起
などなど。
実は、このように数多くある「新たな試み」の根底には、すごく根本的かつ重要なコンセプトがありました。それは、LinuxCon Japanの持つ「意味合い」を少し変えることです。
つまり、これまでのLinuxConは海外(特に欧米)から「教えてもらう場所」であったのに対して、今年はグローバルなLinuxエコシステムに対して能動的に発信し、より大きな「貢献をする場所」に意味合いを少しシフトさせる、ということです。
もちろん、これまで通り、海外のトップカーネル開発者の話を聞き、交流し、議論を行う貴重な場所を提供する、というこのスタンスも不変です。実際、今年もその点には、今まで以上に力を入れていました。
一方で、過去3回のLinuxCon Japanを通して、日本の企業や開発者の、コミュニティや開発貢献に対する理解が深まって来ていることを感じていました。そして情報家電や自動車など日本に強みがある分野でのLinux利用が盛り上がっている結果、海外の企業やコミュニティ開発者からの日本(企業、開発者、LinuxCon Japanを含め)に対する期待が高まっていることも感じていました。
これは言い方を変えると、日本のLinux産業・コミュニティは、成長し、次の段階に進んだ、とも表現できるのではないでしょうか。
そういった気運の高まりを受けて、今年はいかに日本の企業や開発者が世界に対して発信し、グローバルなLinuxエコシステムに対してより大きな貢献が出来る機会を提供するか、という点にも力を注ぎました。
ひとつの例として、今年は基調講演に、Tizen Associationのチェアマンを努めるNTT DOCOMO執行役員 マーケティング部長の永田清人氏や、日本の情報家電企業の主導によって立ち上がったLong Term Support Initiative(LTSI)のリーダーであるNEC OSS推進センター センター長の柴田次一氏に登壇いただきました。Tizen、LTSIという新しく、かつ重要なグローバル・プロジェクトのリーダーを努める日本人からのメッセージ発信は、大きな意味があったと思います。
また、基調講演以外のセッションも、海外から日本に聞きに来る価値が十分あったプログラムだったと思います。実際、今年CFPに対して応募頂いた発表提案の質は極めて高く、審査に大変苦慮しました。結果として、昨年よりも大幅にセッション枠を広げ、更には少しでも多くの方に登壇頂くためにLightening Talkの時間まで設けました。それでも半分のCFPは不採択にせざるを得ませんでした。
それだけ質の良い、価値の高いセッションが多かったため、国外からの参加者の関心も惹き付け、結果として、海外からの参加者が昨年の1.5倍以上増加しました。
海外からこれだけ多くの方が、飛行機代を払って日本のカンファレンスに来るということは、それだけ聞くに値するセッションがあり、意見交換をするに値するグローバル人材がたくさんいる、ということを意味していると思います。
来年はもっとすばらしい人たちに会いたい
Linuxのコミュニティは、言語、国境、文化、企業の壁を超越して人材が集まる真にグローバルな世界だと私は思います。日本におけるグローバル人材不足が言及される昨今ですが、少なくとも世の中で最もグローバルな場所であるLinuxコミュニティの世界には、すでたくさんの人材が日本にいることがLinuxCon Japanを通して明らかになりました。
この世界で価値を発揮出来る人材が、日本でも増えているということは大変素晴らしいことだと思います。
グローバルで戦える人材を求める企業は、グローバル人材の育成という観点からも、積極的にLinuxをはじめとしたオープンソースコミュニティへの人材投入を検討してみてはいかがでしょうか。
最後に、学生トラックで発表した7名の学生の皆さん、大変素晴らしかった! こういう若い人材がもっともっと増えて欲しいです。
来年のLinuxCon Japan 2013の課題のひとつとして、取り組んでいきたいと思います。