GyaTV――Webページを自動的に表示する
楽するためには作業の絶対量を減らさなければなりません。ソフトウェアを作成する場合は、良い言語やエディタを使って効率を上げるのは基本でしょう。似た操作を繰り返す場合は、次の操作を予測することによって作業量を減らせることもあります。
しかしいくら作業を減らす工夫をしても何もしないことにはかないません。何も作業せずにソフトウェアは作成できませんが、情報を眺めたり収集したりという程度であればまったく手を動かさなくてよい可能性があります。テレビのニュースをつけっぱなしにしておくと、なんとなく世間の新しい情報について知ることができます。記憶したい情報をずっとどこかに表示しておくようにすれば、知らないうちに覚えてしまうかもしれません。
GyaTV(ギャツビー)は、登録しておいたURLをスクリーンセーバのようにランダムに表示させるWebサービスです。原理は簡単で、私が運営しているGyazzというWikiのページに登録したURLのリストから、定期的にランダムにURLを1つ選択してそのページを表示するというものです。Web上のコンテンツの中身を吟味して選択したり観賞したりしているといくら時間があっても足りませんが、自動的に表示されたものを眺めるだけなら楽です。GyaTVの原理はとても単純ですが、さまざまな応用ができて便利に利用できます。
デジタルフォトフレーム
自分のデジカメ写真をランダムに液晶画面に表示する「デジタルフォトフレーム」という製品が流行ったことがあります。こういう製品は最近あまり話題になっていないようですが、デジカメ写真をスクリーンセーバのように表示するのは気持ちが良いものです。
手持ちのパソコンやタブレットコンピュータでGyaTVを動かしておけば、デジタルフォトフレームとして使うことができます。きれいなイラストや写真のまとめがよくWebに投稿されていますが、私は「東京タワー」(図1)や「スミソニアン博物館」(図2)の写真をGyaTVで表示して楽しんでいます。
GyaTV.com/xxxというURLでスライドショー表示を行うためには、Gyazz.com/GyaTV/xxxというWikiページにURLリストを登録します。たとえば図3のようにhttp://Gyazz.com/GyaTV/towerにURLのリストを登録しておけば、http://GyaTV.com/towerでスライドショーを楽しむことができます。
Wikipediaのランダム表示
あまり知られていないかもしれませんが、Wikipediaページの左側には「おまかせ表示」というリンク(図4)があり、これをクリックするとWikipediaのランダムなページに飛ぶようになっています。
Wikipediaの情報は膨大ですので、ランダムにページを表示したとき、自分が知ってる内容が出ることはほとんどありません。クリックするたびに新しい情報に触れることができるのは楽しいものです。手動でクリックしても楽しいのですが、GyaTVにおまかせページを表示するURLを登録しておけば、一定間隔で新しいページが表示されることになるのでなかなか新鮮です(図5)。
単語帳の表示
「門前の小僧、習わぬ経を読む」と言われるように、何度も同じものを見聞きしていると知らない間に覚えてしまうことがありますが、この性質を勉強に利用できます。英単語とその意味、用例、画像を並べたWebページを用意しておき、これをランダムに表示するようにしておけば、ときどき画面をチラ見しているうちに単語とその雰囲気を覚えてしまうでしょう。私はこのようなWikiページをたくさん用意しており、これをGyaTVで表示することによって単語力を上げようとしています(図6)。
画像を検索すると単語の用例が直感的に理解できることもあります。「convocation」という単語を普通の辞書で調べると「会合」のような意味が出てきますが、Google画像検索を行うと図7のような写真ばかり出てきます。どうやらこの単語は「卒業式」で使われるらしいということがわかります。こういう画像をずっと眺めていると「convocation」という単語の雰囲気を理解できます。
ニュースの表示
昔は街中にニュースを表示する電光掲示板がよくあったものです。現在でも新幹線の車両の端ではニュースが表示されていますし(写真1)、ニュースを知るために家でテレビをつけっぱなしにしている人も多いでしょう。
ニュースのような情報ソースは、真剣に見るのではなく、なんとなく聞こえてくるのが好まれるということでしょう。新しいニュース情報をWikiページに書き込んでおけば、GyaTVでいつも最新のニュース情報を表示させておくことができて便利です。
表示順序の制御
GyaTVでは、登録したURLがランダムに表示されますが、“http://GyaTV.com/tower?play=seq”のようにオプションを指定するとリストした順番のとおりにページを表示できます。旅の写真を順番に表示したい場合や、スライド的に情報を伝えたいような場合はページの順番が大事になるので、このオプションを付けて表示するのが良いでしょう。
情報共有や情報通知
GyaTVページはWeb上にあってどこからでも見えますから、自分のきれいな写真を自動再生するGyaTVページを作って他人に自慢できます。写真を並べて旅日記を作っておけば、自分で楽しめるうえに他人に自慢もできるのでうれしいでしょう。
コンピュータを使うのが苦手な老人などにネット経由で情報を伝えたい場合、そのような人の家のiPadなどで常にGyaTVのページを表示するようにしておき、情報を伝えたい人がGyazzの内容を書き換えるようにしておけば、常にその人に対するメッセージを表示し続けることができます。
表示時間の指定
GyaTVでは標準では15秒ごとにページが更新されますが、URLの後に数字を書いておけば表示する秒数を指定できます。読むのに時間がかかるページや、長く表示しておきたいページは長時間表示し、急いでたくさんのページを表示したい場合は小さい数字を指定すれば良いでしょう。また、きちんと秒数指定しておけば、YouTubeなどで音楽や動画を順番に表示させることもできます。
置くだけ再生
AndroidスマホやタブレットにはNFCリーダーが登載されており、SuicaのようなRFIDカード/タグを読み出すことができます。Androidの場合、端末をタグに近付けることによってアプリケーションを起動することもできるので、タグを置いた場所に置くだけでGyaTVのページを開くことができます。この機能を利用すると、タブレットやスマホを特定の場所に置くだけでスライドショー/予定表/時計などを表示できるので便利です(写真2)。
自動表示で気づくこと
GyaTVを使っていると次のようなことに気づきます。
時間感覚のあやしさ
15秒ごとにランダム表示を行っている画面をずっと見ていると、なかなか画面が更新されないことにイライラするものです。一方、仕事をしているときに別のマシンでGyaTVを動かしているときは更新の遅さが気にならないどころか、更新が速すぎると感じることもあります。どうやら人間は、自分が注目しているものとしていないものに関して時間感覚がかなり違うのだろうと思います。小さいと思っていた親戚の子供に久しぶりに会ったら成長ぶりに驚くことがよくあります。あまり興味のないWebサービスが開始したと思ったらいつの間にか終了していることもあります。自分が深くかかわっていないものは進行速度が速く感じられる気がします。つまり、仕事に極度に集中すれば時間の進行が遅く感じられ、離れたところに置いたものは時間の進行が速く感じるのでしょう。このような時間感覚を活用できれば、大事なことには時間をかけつつ、どうでも良いことはすぐに終了させることができるのかもしれません。
乱数感覚
ランダム表示を行うとき、普通の乱数を利用するとランダム感が得られないことがあります。10枚の写真をランダムに表示させると、10回に1回は同じ写真が連続して表示されることになります。これを避けるためにはrand()のような乱数関数を利用するかわりに、履歴を考慮したニセ乱数関数を使うのが良いと考えられます。実際、音楽プレーヤのシャッフル再生機能では、本当の乱数の代わりにニセ乱数が利用されているようです。
インターネットの黎明期、ニュースをスクリーンセーバのように配信するPointcastというサービスが注目されたことがありましたが、結局あまり流行しませんでした。また、たくさんの写真を自動的に表示してくれるデジタルフォトフレームも最近あまり流行していないようです(図8)。
これらのシステムがあまり流行らなかった理由はいろいろあるのでしょうが、ネット上の情報を自動表示すること自体は有益なはずです。ぜひGyaTVを使っていろいろ楽して楽しんでみてください。
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