あの人はだれ?
Perlの世界でいちばんホットな話はIRCでかわされている、ということを知っていくつかのIRCチャンネルに入ってみたはいいものの、そこで話をしているのがいったいだれかわからない、という経験はだれしも一度はするもの。なかにはIRC上でのニックネームとCPAN/PAUSE ID(と本名)が同じ、という人もいますが、さまざまな事情からIRCとCPANでは似ても似つかぬ名前を使っているという人も(筆者を含めて)少なくありません。
今回はそんな「だれがだれだかわからない」「 業界の勢力図を知りたい」という悩みや希望にお応えして、おもにIRC上のPerl関連チャンネルでよく見かける人をPAUSE IDつきで簡単に紹介してみます。人選については、筆者が入っているいくつかの英語チャンネルの過去ログから、今年特に活発に発言していた人を機械的に抽出してみました。
マップにするとこんな感じ
単純なリストでは関係がわかりづらいと思いますので、まずはCPAN explorer というサイトでも利用されているGephi というツールを使って、発言数と、だれがどのチャンネルに入っているかという情報からおおざっぱな相関図を用意してみました。
緑のノードはIRCチャンネルの名前、オレンジ色のノードがIRC上でのニックネームです。大きなノードはだいたいこの一年で数万件程度の発言があった人。全体的なバランスを考えて、発言数が800件以下の人や、有効なノード数が少なかったチャンネルはばっさり省略しました。ときおりボットの名前が混じっているのはご愛敬ということで。
以下、おもなノードについて説明していきますが、特に記載のない方はIRC上のニックネームがPAUSE IDです。また、日本語の敬称については性別によらずすべて氏で統一しました。国籍や母語がわかっている人についてはなるべくその読み方で表記するようにしましたが、はっきりしなかった方については英語風に表記しています(今回は人数が多かったので、ごく一部の人を除いて名前の読み方を確認するメールは送っていません。間違いがありましたらご指摘いただけると助かります) 。その人が書いたCPANモジュール等についてはCPAN検索サイトにリンクをはってありますのでそちらでご確認ください。
では、順に見ていきましょう。
Moose界隈
200人以上の人が集まっているMoose 系のチャンネルで今年もっとも発言回数が多かったのはperigrin ことクリス・プレーサー(Chris Prather)氏。やや離れて、今年のYAPC::AsiaではKiokuDB の話をしてくれたnothingmuchことユーヴァル・コグマン(Yuval Kogman、PAUSE IDはNUFFIN )氏や、CPANモジュール数世界第3位のrjbs ことリカルド・シグネス(Ricardo Signes)氏、最初のCatalyst本 の著者で今年のYAPC::Asiaでは大トリをつとめたjrockway ことジョナサン・ロックウェイ(Jonathan Rockway)氏、同じく今年のYAPC::AsiaでMooseコースを担当したSartak ことショーン・ムーア(Shawn M Moore)氏、この連載でも何度となく登場したmstことマット・トラウト(Matt S Trout、PAUSE IDはMSTROUT )氏、Mooseの生みの親であるstevan ことスティーヴン・リトル(Stevan Little)氏、IRC上ではautarchを名乗っているDateTime プロジェクトのデイヴ・ロルスキー(Dave Rolsky、PAUSE IDはDROLSKY )氏、今年のYAPC::Asiaのゲストのひとりでもあったraflことフロリアン・ラグヴィッツ(Florian Ragwitz、PAUSE IDはFLORA )氏ら、日本でもわりとよく知られた名前が並びます。
また、日本ではなじみが薄いかもしれませんが、MooseX::NonMoose などで知られるdoy ことジェシー・ルアズ(Jesse Luehrs)氏や、confoundことハンス・ディーター・ピアシー(Hans Dieter Pearcey、PAUSE IDはHDP )氏、arcanez ことジャスティン・ハンター(Justin Hunter)氏、joelことジョエル・バーンスタイン(Joel Bernstein、PAUSE IDはRATAXIS )氏、gphat ことコリー・ワトソン(Cory Watson)氏らの姿も見えます。
ちなみに、ときどき会話に参加してくるpurl (「 パール」 )は、同名のPAUSE IDまで持っていますが、Smart Monkey(「 賢いお猿さん」 )という名前からも想像がつくように、生身の人間ではなく、URLなどを暗記させておくためのボットです(もちろんこの名前はperlとurlを引っかけたものです) 。
Catalyst界隈
300人近い人が集まっているCatalyst 系のチャンネルでは、実質的なチームリーダーであるマット・トラウト(mst/MSTROUT)氏を筆頭に、最近さまざまなCatalyst系モジュールのメンテナを引き継いでいるt0mことトマス・ドラン(Tomas Doran、PAUSE IDはBOBTFISH )氏や、フロリアン・ラグヴィッツ(rafl/FLORA)氏、『 The Definitive Guide to Catalyst 』の共著者でもあるkdことキーレン・ダイメント(Kieren Diment、PAUSE IDはZARQUON )氏、Catalystチーム最古参のメンバーのひとりでもあるmarcusことマルクス・ランベルグ(Marcus Ramberg、PAUSE IDはMRAMBERG )氏、Catalyzed.org というドメインでモダンPerl系のブログを書いているjayk ことジェイ・クリ(Jay Kuri)氏といった面々のほか、dhoss ことデヴィン・オースティン(Devin Austin)氏、hobbs ことジェフ・ホッブズ(Jeff Hobbs)氏、Caelumことラファエル・キトーヴァー(Rafael Kitover、PAUSE IDはRKITOVER )氏、abraxxa ことアレクサンダー・ハルトマイヤー(Alexander Hartmaier)氏、buu ことロバート・グライムズ(Robert Grimes)氏、jhannah ことジェイ・ハンナ(Jay Hannah)氏らの発言が目立ちます。また、Moose系チャンネルの方で紹介したハンス・ディーター・ピアシー(confound/HDP)氏やジャスティン・ハンター(arcanez)氏の姿も見えます。
なお、サブプロジェクトであるReaction のほうはいまはそれほど活発な議論は行われていませんが、マット・トラウト(mst/MSTROUT)氏のほか、groditi ことギレルモ・ロディティ(Guillermo Roditi)氏やedenc ことエデン・カルディム(Eden Cardim)氏、mateu ことマテュー・ハンター(Mateu X. Hunter)氏の発言がやや多めになっています。
DBIx::Class界隈
この連載ではまだ取り上げていませんが、Catalystとともによく使われるO/Rマッパ、DBIx::Class のチャンネルでは(参加者は200人弱です) 、現在リリース・マネージャをしているribasushi ことピーター・ラビットソン(Peter Rabbitson)氏とプロジェクトリーダーのマット・トラウト(mst/MSTROUT)氏を双璧として、robkinyonことロブ・キニョン(Rob Kinyon、PAUSE IDはRKINYON )氏、ドキュメントチームのリーダーをしているcastawayことジェス・ロビンソン(Jess Robinson、PAUSE IDはJROBINSON )氏、frew ことアーサー・アクセル・シュミット(Arthur Axel Schmidt)氏、ash ことアッシュ・ベルリン(Ash Berlin)氏らが会話の中心になっています。また、ジャスティン・ハンター(arcanez)氏や、ラファエル・キトーヴァー(Caelum/RKITOVER)氏、アレクサンダー・ハルトマイヤー(abraxxa)氏、ジョエル・バーンスタイン(joel/RATAXIS)氏のほか、ilmari ことダグフィン・イルマリ・マンソーケル(Dagfinn Ilmari Mannsåker)氏、Debolazことアネルス・ノール・ベルレ(Anders Nor Berle、PAUSE IDはBERLE )氏らの姿も見えます。
Mojo界隈
Mojo 界隈はまだ50人にも満たない小所帯ですが、かつてはCatalystチームのリーダーでもあったsri ことゼバスディアン・リーデル(Sebastian Riedel)氏を筆頭に、vti ことヴィャチェスラフ・チハノフスキー(Viacheslav Tykhanovskyi)氏や、acajou ことパスカル・ゴーデット(Pascal Gaudette)氏、マルクス・ランベルグ(marcus/MRAMBERG)氏、xantus ことデイヴィッド・デイヴィス(David Davis)氏、melo ことペドロ・メロ(Pedro Melo)氏らが正式リリースに向けた話し合いをしています。
POE界隈
100人ほどの人が集まるPOE 界隈では、プロジェクトリーダーのdngorことロッコ・カプト(Rocco Caputo、PAUSE IDはRCAPUTO )氏をはじめ、Apocalypseことアポカリプス(PAUSE IDはapocal )氏、Leoloことフィリップ・グウィン(Philip Gwyn、PAUSE IDはGWYN )氏、ロバート・グライムズ(buu)氏、agaran ことマチェイ・ピヤンカ(Maciej Pijanka)氏、CPAN Testersの第一人者であるBinGOs ことクリス・ウィリアムズ(Chris Williams)氏、LotRことマルテイン・ファン・ベールス(Martijn van Beers、PAUSE IDはMARTIJN )氏、LordVorpことロブ・ブラッドグッド(Rob Bloodgood、PAUSE IDはRDB )氏、デイヴィッド・デイヴィス(xantus)氏らがよく話をしています。
Padre界隈
50人ほどの人が集まるPadre 界隈ではプロジェクトリーダーのszabgab ことガボル・サボ(Gábor Szabó)氏とCPANモジュール数世界第2位のAliasことアダム・ケネディ(Adam Kennedy、PAUSE IDはADAMK )氏のほか、azawawi ことアフマド・ザワウィ(Ahmad M. Zawawi)氏、garu ことブレノ・デ・オリヴェイラ(Breno G. de Oliveira)氏、本稿執筆時点でCPANモジュール数5位につけているtseeことシュテフェン・ミュラー(Steffen Müller、PAUSE IDはSMUELLER )氏、submersibleことアンドリュー・ブランブル(Andrew Bramble、PAUSE IDはBRAMBLE )氏、Sewi ことゼバスティアン・ヴィリング(Sebastian Willing)氏、jqことジェローム・ケラン(Jérôme Quelin、PAUSE IDはJQUELIN )氏、waxheadことピーター・ラヴェンダー(Peter Lavender、PAUSE IDはPLAVEN )氏らが話をしています。Hyppolitは更新情報を知らせるボットです。
ツールチェーン界隈
前回 取り上げたlocal::lib や、ExtUtils::MakeMaker 、Module::Build など、CPANモジュールのインストールやテストに関係した話題を扱う#toolchainチャンネルも50人ほどの小所帯ですが、アダム・ケネディ(Alias/ADAMK)氏や、xdgことデイヴィッド・ゴールデン(David Golden、PAUSE IDはDAGOLDEN )氏、jawnsy ことジョナサン・ユー(Jonathan Yu)氏、ewilhelm ことエリック・ウィルヘルム(Eric Wilhelm)氏、リカルド・シグネス(rjbs)氏、マット・トラウト(mst/MSTROUT)氏、kthakore ことカーティク・サコール(Kartik Thakore)氏、CPANPLUS の作者kane ことヨス・バウマンス(Jos Boumans)氏、クリス・ウィリアムズ(BinGOs)氏、rindolfことシュロミ・フィッシュ(Shlomi Fish、PAUSE IDはSHLOMIF )氏らの発言が目立ちます。
P5P界隈
Perl 5コアをメンテナンスしている移植チームが集まる#p5pチャンネルでは、5.8系列のリリースマネージャをつとめたNicholasことニコラス・クラーク(Nicholas Clark、PAUSE IDはNWCLARK )氏、アダム・ケネディ(Alias/ADAMK)氏、dmqことイヴ・オルトン(Yves Orton、PAUSE IDはYVES )氏、リカルド・シグネス(rjbs)氏、ユーヴァル・コグマン(nothingmuch/NUFFIN)氏、5.9系列のリリースマネージャをつとめたrgsことラファエル・ガルシア・スアレス(Rafaël Garcia-Suarez、PAUSE IDはRGARCIA )氏、シュテフェン・ミュラー(tsee/SMUELLER)氏、デイヴィッド・ゴールデン(xdg/DAGOLDEN)氏、vincentことヴィンセント・ピット(Vincent Pit、PAUSE IDはVPIT )氏、マット・トラウト(mst/MSTROUT)氏、obraことジェシー・ヴィンセント(Jesse Vincent、PAUSE IDはJESSE )氏、theorbtwoことジェイムズ・マストロス(James Mastros、PAUSE IDはJMASTROS )氏、フロリアン・ラグヴィッツ(rafl/FLORA)氏、Tuxことメレイン・ブラント(H. Merijn Brand、PAUSE IDはHMBRAND )氏、クリス・ウィリアムズ(BinGOs)氏らが活発なメーリングリストをおぎなう議論をしています。
Perl 6界隈
200人弱の人が集まっているfreenodeの#perl6チャンネルでは、masak ことカール・メサク(Carl Mäsak)氏、今年のYAPC::AsiaでRakudo *などの発表をしたjnthnことジョナサン・ワーシントン(Jonathan Worthington、PAUSE IDはJONATHAN )氏、moritz ことモーリッツ・レンツ(Moritz Lenz)氏、pmichaud ことパトリック・ミショー(Patrick Michaud)氏、PerlのモットーであるTimToady(これは例のThere's more than one way to do it.を省略した「TIMTOWTDI」の別表記ですね)を体現した御大ラリー・ウォール(Larry Wall、PAUSE IDはLWALL )氏、CでPerl 6エンジンを実装しようというSMOP プロジェクトのruosoことダニエル・ルオソ(Daniel Ruoso、PAUSE IDはDRUOSO )氏らが活発に議論をしています。また、ここはCPANモジュールに関するチャンネルではないため、Matt-Wことマシュー・ウォルトン(Matthew Walton)氏やwayland76ことティモシー・ネルソン(Thimothy S. Nelson)氏のように発言が多いわりにPAUSE IDを持っていない方の姿が目立つのもひとつの特徴かもしれません。p6evalというPerl 6コードを実行するボットの発言数の多さも注目に値するところでしょう。
その他
発言数の都合で一覧には出てこなかったものの、YAPC::Asiaのスピーカーなど、日本にゆかりのある人でIRCのニックネームとPAUSE IDが異なる人としては、2006年のYAPC::Asiaでmightyvの発表をした(orange)acmeことレオン・ブロカール(Léon Brocard、PAUSE IDはLBROCARD )氏や、今年のYAPC::Asiaでvimの話をしたc9sこと林佑安(Yo-An Lin、PAUSE IDはCORNELIUS )氏、囲碁好きのhanekomu(跳ね込む)ことマルセル・グリュナウアー(Marcel Grünauer、PAUSE IDはMARCEL )氏、『 実用Perlプログラミング 』第2版の著者でもあるlathosことサイモン・カズンズ(Simon Cozens、PAUSE IDはSIMON )氏などが思いつきます。
また、海外勢で筆者がすぐに思いつくところでは、davorgことデイヴ・クロス(Dave Cross、PAUSE IDはDAVECROSS )氏、DrHydeことデイヴィッド・カントレル(David Cantrell、PAUSE IDはDCANTRELL )氏、Maddingueことセバスティアン・アペルギス・トラモーニ(Sébastien Aperghis-Tramoni、PAUSE IDはSAPER ) 、mugwumpことサム・ヴィラン(Sam Vilain、PAUSE IDはSAMV )氏、theoryことデイヴィッド・ホイーラー(David Wheeler、PAUSE IDはDWHEELER )氏などがそうですし、今回一覧にはしませんでしたが、Jifty チャンネルにも何人かIDが乖離している人がいます。きちんと探せばまだまだ漏れている方は見つかることでしょう。
このような情報は、IRC上なら/whoコマンドなどで知ることができますし、極端に一般的な名前でなければ、Googleで適当に検索すればその人のほかの活動に引っかかることも珍しくはありません。Twitter やGithub のように比較的最近IDを取得したようなところではIRCと同じIDを利用していることも少なくないですし、ドメイン名やブログのタイトル、メーリングリストのアーカイブなどからたどれることもあります。
英語でやりとりをするのはたしかに敷居の高いことですし、IRCのログをすべて読んでいてはいくら時間があっても足りませんが、名前だけでも見慣れた人がいると心理的な抵抗感は減りますし、不思議と言っていることがわかるように感じられるものです。
今回の一覧ではメーリングリストでの活動がメインの人などが選から漏れていますし、IRC上でたくさん話しているからえらい、ということもないのですが、このようなリストがコミュニティの様子を知るよすがになれば幸いです。