OpenStack Days Tokyoの歩き方

第3回ますます関心の高まるOpenStackを体感!「OpenStack Days Tokyo 2015」レポート

第3回目となるOpenStack専門カンファレンス「OpenStack Days Tokyo 2015」が2月3、4日、品川において開催されました。前回よりも規模が拡大され、来場者もユニークで2,000名、延べ3,000名を数えたといいます。10月には国際カンファレンス「OpenStack Summit Tokyo」の開催を控え、ますます注目度の上がるカンファレスをレポートします。

満員となったキーノート会場
満員となったキーノート会場

興味、導入ともに高まるOpenStack

2015年2月3日および4日、グランドプリンスホテル新高輪においてOpenStack専門カンファレンス「OpenStack Days Tokyo 2015」が開催されました。大雪に見舞われた前回とは異なり、今回は2日間とも好天に恵まれ、多くの方が会場に詰めかけました。挨拶に立った本カンファレンスの実行委員長であるビットアイルの長谷川章博氏は、OpenStack Days Tokyoが3回目を迎え、参加者、スポンサー、コンテンツのすべてが増えていると説明しました。

OpenStack Days Tokyo実行委員長 ビットアイル 長谷川章博氏
OpenStack Days Tokyo実行委員長 ビットアイル 長谷川章博氏

事前登録者数は2842名で、前回の約1600名を大幅に更新しました。また、スポンサー、コンテンツともに43と、これまでで最も多くなっています。さらに長谷川氏は事前に行ったアンケートの結果を紹介、今回の参加者のうち、OpenStack Daysに初めて参加するという人は78%と約8割を占め、興味が高まっているとしました。

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OpenStackの導入状況では、すでに23%が導入しており、1年から数年の間に導入予定とする回答を合わせると約半数に達し、OpenStackが広がりを見せているとしました。長谷川氏は「OpenStackがいろいろな業種、業態で有効なことが周知されてきた。わたしたちもニーズに応えるために努力を続けていく」と述べました。さらに10月26日から30日に国際カンファレンス「OpenStack Summit Tokyo」が日本で初めて開催されるので「ぜひ、見て聞いて体験してOpenStackの今を感じて欲しい」と挨拶を締めくくりました。

「東京で再びお目にかかれる日をワクワクして待っている」

カンファレンス1日目のキーノートセッションには、OpenStack Foundation ⁠ファウンデーション)のCOOであるMark Collier(マーク・コリアー)氏が登壇、⁠OpenStack Mission Update」として講演を行いました。Collier氏は、OpenStackは高い拡張性によってパブリッククラウド、プライベートクラウド双方の要件を満たすユビキタスを目指しており、⁠月に行くほどではないが」非常に大胆なミッションを掲げているとしました。

OpenStack Foundation COO Mark Collier氏
OpenStack Foundation COO Mark Collier氏

また、すべての企業がソフトウェア企業になるというITの大きな変革が起きており、スタートアップ企業と協業するケースも増えている中で、OpenStackは変革のエンジンとして価値を生み出していくと述べました。そしてOpenStackの歴史を振り返り、2010年7月にOpenStackがラウンチしたときは、25名のデベロッパーでサミットの参加者は75名という状況で、謙虚で小さなチームから始まりました。プラットフォーム「NOVA」は18000行で、それを取り巻く「Swift」があるという初歩的なプロトタイプであったとCollier氏は振り返ります。

それから5年後の2015年には、デベロッパーは100倍、サミットの参加者は5000名に拡大し、コミュニティでベストプラクティスを共有して興味深い問題をみんなで解決できるようになったといいます。また、導入事例としてWELLS FARGO、ディズニーを紹介。そしてOpenStackの特徴として「デザイン、デベロップメント、コミュニティ、ソースの4つの「オープン⁠⁠、⁠安定したコア⁠⁠、⁠イノベーションのエンジンになる」の3点を紹介しました。

さらに次のステップとして、⁠コアの再定義」⁠ダウンストリームプロダクトのテスト」⁠さらに詳細な情報の提供」⁠ワーキンググループによりユーザーの要求、ケース、ベストプラクティスの共有を推進する」の4点を挙げました。Collier氏は、⁠いろいろな取り組みがあるので、関わっていただける分野は必ずある」としました。最後にOpenStack Summit Tokyoについて紹介し、⁠東京で再びお目にかかれる日をワクワクして待っている」と期待を寄せました。

スーパーユーザーはOpenStackをどう活用しているのか

カンファレンス2日目のキーノートセッションでは、⁠スーパーユーザーインタビュー ~なぜ彼らはOpenStackを使うのか?~」というインタビューが行われました。インタビュアーにアイティメディアのエグゼクティブエディターである三木泉氏を迎え、スーパーユーザーとしてNTTコミュニケーションズ、GMOインターネット、楽天の諸氏にインタビューしました。

キーノートセッション インタビュアー アイティメディア 三木泉氏
キーノートセッション インタビュアー アイティメディア 三木泉氏

まずはNTTコミュニケーションズの大野理望氏、林雅之氏が登壇。同社では、クラウドサービス「Bizホスティング Cloud n VPCタイプClosedNW」にOpenStackの「Nova」⁠Neutron」を活用しているといいます。同社では別メニューにはcloudstackを活用していますが、OpenStackはSDNとの相性がいいとの判断で棲み分けをしています。OpenStackにおいてはAPIを使いたいというお客様も多く、将来の可能性に期待が高まっているといいます。今後もOpenStackに注力し、数カ月後には具体的なビジョンをお見せできると「ご期待ください」と締めくくりました。

NTTコミュニケーションズ 大野理望氏(左⁠⁠、林雅之氏
NTTコミュニケーションズ 大野理望氏(左)、林雅之氏

続いて登壇したのは、GMOインターネットの藤原優一氏、郷古直仁氏。同社では2012年からさまざまなサービスでOpenStackを活用しており「日本最古のOpenStackユーザー」を自負しているといいます。APIの活用は特に有効で、いろいろな自動化が可能になるため、インフラを効率よく管理できるとしました。またOpenStackの採用によって、技術者が運用について考えたり、サーバ屋がネットワークのことを覚えたりと、エンジニアにパラダイムシフトが起きて楽しいといいます。課題としては、一から再構築してサービスをリリースする際に時間がかかるなど、社内に一定のリソースが必要になることを挙げました。しかし実際にはメリットの方が大きいといいます。⁠ぜひ皆さんも使って、一緒に開発を盛り上げましょう」と締めくくりました。

GMOインターネット 藤原優一氏(左⁠⁠、郷古直仁氏
GMOインターネット 藤原優一氏(左)、郷古直仁氏

最後に登壇したのは、楽天の佐々木健太郎氏、吉越功一氏。同社が運営する楽天市場はユーザーが9千万人を超え、2010年から仮想基盤に移行しているといいます。OpenStackでは、開発環境として小さく開始しており、徐々にサービスを支えるものに成長してきました。特にコストと運用に効果があり、ゆくゆくはプロダクションシステムでも活用したいといいます。またOpenStackを採用する理由として、⁠オープンソース」⁠エコシステムができあがっている」⁠成熟している」の3点を挙げました。エンジニアに必要なマインドを聞かれると、⁠状況の変化にすぐに対応できること」⁠人材育成ができること」と答えました。

楽天 佐々木健太郎氏(左⁠⁠、吉越功一氏
楽天 佐々木健太郎氏(左)、吉越功一氏

NECのOpenStackへの取り組み

ここで、OpenStack Days Tokyo 2015で行われたセッションから、いくつかピックアップして紹介します。2月3日のキーノートセッションに続いて、NECによるセッション「OpenStackを活かすNECのクラウドサービスとソリューション」が行われました。まず、OpenStackへの取り組みについて、高橋千恵子氏が説明しました。NECでは、オープンソースソフトウェア(OSS)には短期間、低コストで製品の完成度を高められるメリットがあり、そのポイントはユーザーコミュニティの規模だと言います。

NEC 高橋千恵子氏
NEC 高橋千恵子氏

NECでは、クラウド管理においては2012年からOpenStack Foundationのゴールドメンバー、SDNにおいては2013年からOpen Daylight Projectのゴールドメンバー、オペレーティングシステムにおいては2000年からLinux Foundationのプラチナメンバーにそれぞれなっており、また2014年にはOSSのセキュリティリスク低減の取り組みを行うCore Infrastructure Initiativeにも参加しています。OpenStackの開発にも積極的に参加しており、Junoの開発ではコントリビューション10位の成果を記録しています。

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続いて、⁠NFVにおける取り組み」について新井智也氏が発表しました。新井氏は通信ネットワークの市場環境として、トラフィックの増大と用途の多様化を挙げ、課題として「経済的なネットワーク構築・運用」⁠柔軟性に富んだネットワークの実現」⁠迅速なネットワークの提供」を挙げました。そして、課題解決の手段として「NFV:Network Functions Virtualization」が注目されており、NFVにおいてもオープン性、柔軟性・拡張性、SDNとの連携、発展性・将来性の面からOpenStackが期待されていると説明しました。NECではNFVの普及に向けてOpenStackのキャリアグレード化に取り組んでおり、またTelco WGやOPNFVといったオープンな活動も加速していることから2015年はOpenStackによるNFVの商用導入が本格化する年になるだろうと述べました。その後、再び高橋氏が登壇し、OpenStackを活用した5つのソリューションが紹介されました。

NEC 新井智也氏
NEC 新井智也氏

クラウドネイティブ化によって生きるOpenStack

2月3日の午後には、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の金子雄大氏による「クラウドを使いこなす技術、その到達点⁠RACK⁠⁠ -Real Application Centric Kernel-」が行われました。同社のビジネスの中で、OpenStackはクラウドインテグレーションサービスの領域で活用されています。OpenStackには、OpenStack構築基盤、クラウド活用、クラウドネイティブの3つの視点で取り組んでいるといいます。

伊藤忠テクノソリューションズ 金子雄大氏
伊藤忠テクノソリューションズ 金子雄大氏

OpenStackは、⁠いかに作るか」から「いかに使うか」の段階へシフトしていると金子氏は指摘します。CTCではさらに一歩進んで、クラウドネイティブという次世代のアプリケーション実装に取り組んでいます。アプリケーションをクラウドネイティブな作りにすることで、OpenStackはさらに生きてくるとして、⁠Designing for the cloud」を説明しました。特に、Cloud APIによる自動化の活用がポイントであるとしました。しかし、アプリケーション自身はCloud APIを使用しないため、スケーリングなどの自動化にはオーケストレーションツールなどが必要になり、クラウドネイティブなシステムは運用・管理が高度で複雑なものになってしまいます。

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そこで、アプリケーションが自らCloud APIをコントロールし、自律的にスケールするデザインにする必要がありますが、それを実現するのが「RACK:Real Application Centric Kernel」です。RACKはクラウドネイティブ・アプリケーションの実行環境と、シンプルで簡単なプログラミング環境を提供するもので、リソースの抽象化やprocess起動確認、process間連携機能の提供などが行われます。RACKは、OpenStackプロジェクトを運営しているOSSコミュニティ「OpenStackCommunity」で開発を行っており、誰でも開発に参加可能であると参加を呼びかけました。

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OpenStackを「創り、活かし、つなぐ」ソリューション

2月4日のキーノートセッションに続いて、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の真壁徹氏による「OpenStackを『創り、活かし、つなぐ』HP Helion」が行われました。OpenStack Days Tokyo 2015のテーマである「創る、活かす、つなぐ」に沿った内容です。これまで、仮想化しただけの「なんちゃってクラウド」や、⁠なんでもクラウド化できる」といったクラウド原理主義が散見され、クラウドの価値が誤解されることは珍しくありませんでした。ですが、2015年はクラウドの転換点になると真壁氏はいいます。

日本ヒューレット・パッカード 真壁徹氏
日本ヒューレット・パッカード 真壁徹氏

2015年からは、コスト削減や安定化が重視される従来型のITは「持続型改善」のシステムとして、クラウドはクラウドらしく、変化の激しいビジネスの成長を支える「攻めのIT」を支えるシステムとして使い分けが進むとしました。同社の「Helion」は、その戦略の柱として、クラウド原理主義に陥らず、アプリに合った基盤を提案する「ハイブリッド⁠IT⁠⁠、情報システム部門の社内サービスプロバイダー化、ブローカー化をサポートする「サービスを組み合わせる⁠⁠、開発者が迅速にクラウドネイティブアプリを創るお手伝いをする「デベロッパー中心」という3つの考え方を挙げました。

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さらに「創る」では、⁠HP Helion OpenStack」を、実際の運用を理解しOpenStack周辺に機能付加をしていること、OpenStackのアップストリームを優先していること、リーズナブルであることを挙げ、その価値を説明しました。また、⁠活かす」ではOpenStack上でPaaSを活用して生産性を劇的に向上するアイデアを、⁠つなぐ」ではクラウドネイティブなハイブリッドクラウド実現方式を提案しました。そして2015年をOpenStackが本格化する年とし、先進技術が本格的に普及するタイミングとして「使いやすくなったとき」⁠価格が安くなったとき」⁠一人ぼっちじゃなくなったとき」を挙げ、その具体策を紹介するとともに、HPはその起爆剤になるとしました。

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にぎわった各社のブース

OpenStack Days Tokyo 2015では、各社がブースを出展し、いずれも賑わっていました。

にぎわう展示会場
にぎわう展示会場

たとえば日本HPのブースでは、大規模向け「HP Helion」を中心に展示を行い、実際に米本社とつなぐデモなどが行われていました。来場者からはとても興味を持たれていて、⁠HPがこんなことをやっていたとは」という声もあったそうです。ぜひ無償版を試して欲しいとのことでした。

日本HPのブース
日本HPのブース

NECのブースでは、セッションで紹介したソリューションを展示。プライベートクラウドについての質問、特に技術的な質問が多く、自社に導入しようというよりは、技術的な面での興味が高かったそうです。

NECのブース
NECのブース

CTCでは「RACK⁠⁠、ミラクル・リナックスでは「Hathol」および「Zabbix」との連携に興味が集まっていました。

CTCのブース
CTCのブース
ミラクル・リナックスのブース
ミラクル・リナックスのブース

レッド・ハットのブースでは、去年はテレコムやキャリア系の来場が多かったのですが、今年は一般企業の来場者も増え、プライベートクラウドなどの質問が多かったといいます。

レッド・ハットのブース
レッド・ハットのブース

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