OSSデータベース取り取り時報

第45回OSSコンソーシアム 第3回データベース比較セミナー開催、MySQL 8.0.16でのCHECK制約追加、PostgreSQL関連ニュース

この連載では、OSSコンソーシアム データベース部会のメンバーが、さまざまなオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。2019年4月はOSSコンソーシアム主催の第3回データベース比較セミナーが開催されました。MySQL サーバー8.0.14と各製品のマイナーバージョンアップが行われました。PostgreSQLは関連ニュースを紹介します。

OSSコンソーシアム/第3回データベース比較セミナー開催報告

4月19日(金⁠⁠、OSSコンソーシアムのデータベース部会と分散コンピューティング部会の共催で、データベース比較セミナーを開催しました。

「データベース比較セミナー」は過去2回、特定のDBMSに偏らない内容のセミナーとして、データベース部会が開催してきました。また、分散コンピューティング部会リーダーのノーチラス・テクロノジーズがNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が採択した次世代の大規模分散OLTPを実現する国家プロジェクトに中心メンバーとして関与しています。これを受けて、⁠分散⁠⁠OLTP⁠をテーマとし、現在の技術がどこまで到達しているのかを識者に語ってもらう内容としました。この内容は、なによりも私たちコンソーシアムのメンバ自身が是非とも聞きたいテーマだったものなのです。

講演タイトルと講演者は次のとおりです。

  • [session 1]PostgreSQL vs 大規模OLTP ―SRA OSS 高塚遙 氏
  • [session 2]通信インフラや防衛システムを支える全ノードアクティブ型の分散データベース MySQL NDB Cluster ―日本オラクル 梶山隆輔 氏
  • [session 3]Cassandraにおけるトランザクションとは ―INTHEFOREST 冨田和孝 氏
  • [session 4]既存のTx(トランザクション)とこれからのTx ~ 次世代OLTPにおけるトランザクション処理の概要 ―ノーチラス・テクノロジーズ 神林飛志 氏

RDBMSからは、この取り取り時報でも定番のPostgreSQLとMySQL。NoSQLとしてCassandra。そして最大の目玉が前述の次世代OLTPです。誰が見ても高難度かつ高濃度の内容になることは明らかでしたが、キャンセル待ちを含めて160名ほどの方が関心を示され、約100名の方が出席されました。きっと「他では聞けない内容になる」と思っていただけたのでしょう。

各講演発表の内容については、OSSコンソーシアムの部会&セミナー情報のページでレポートします。また、各講演者の発表資料も可能な範囲で公開を調整中です。

「データベース比較セミナー」の各セッションの模様、高塚遙氏(左上⁠⁠、梶山隆輔氏(右上⁠⁠、冨田和孝氏(左下⁠⁠、神林飛志氏(右下)
「データベース比較セミナー」の各セッションの模様、高塚遙氏(左上)、梶山隆輔氏(右上)、冨田和孝氏(左下)、神林飛志氏(右下)

[MySQL]2019年4月の主な出来事

2019年4月はMySQLサーバー8.0.16をはじめ、商用版およびコミュニティ版のほぼ全ての製品のマイナーバージョンアップが行われました。MySQL 5.7.26, 5.6.44もリリースされています。なおMySQL 5.5は2018年12月をもってExtendedサポート期間が終了しました。このため今後はごく一部の例外的な状況を除いて新規のマイナーバージョンは基本的にリリースされません。

4月に開催された主なイベントでは、4月17日にMySQL Technology Cafeの第3回としてMySQL Cluster に関するセミナーが行われ、電子マネー「BitCash」を運営するビットキャッシュ株式会社のMySQL NDB Cluster運用現場からの声をご紹介いただきました。また4月22日にはMySQLチームにて初となる仙台でのパフォーマンスチューニングセミナーも開催しました。

MySQL 8.0.16の新機能

MySQL 8.0.16の主な新機能は下記の通りです。

CHECK制約の追加
2004年に機能追加要望がバグデータベースに登録されたCHECK制約が15年の時を経て実装されました。
※バグレポート内の8.0.15は2月に緊急リリースされたものではなく8.0.16への記載修正漏れ
バージョンアップ時のメタデータの自動アップデートとmysql_upgradeコマンド非推奨
MySQL 8.0.15まではメジャーバージョン、マイナーバージョンを問わずにバージョンアップの際にはメタデータを最新化するためにmysql_upgradeコマンドを利用していました。MySQL 8.0.16からはMySQLサーバーが起動時にメタデータのバージョンを確認して自動的に更新するようになり、mysql_upgradeコマンドが不要となりました。
ユーザーアカウントに「カテゴリ」の考え方の追加とSYSTEM_USER権限
ユーザーの役割分担をより明確にするため、システムアカウントと一般アカウント(Regular Account)のカテゴリを概念として導入しました。基本的にSYSTEM_USER権限を持つユーザーアカウントがシステムアカウントとなります。システムユーザーアカウントの作成や削除、権限の付与や剥奪、ユーザーが利用する認証プラグインの変更、システムユーザーのクエリ停止や接続の切断などは、システムアカウントのユーザーのみが実行可能となります。
C APIでのノンブロッキング非同期処理関数追加
X DevAPIが利用するプロトコルX Protocolは当初から非同期処理をサポートしていますが、従来型のプロトコル(デフォルトでTCP/IPポート 3306を利用)で非同期処理を行う関数がC APIに追加されました。
DDLリライトプラグインの追加
ダンプされるDDLからENCRYPTION, DATA DIRECTORY, および INDEX DIRECTORYの各句を削除することで、透過的暗号化を利用していない環境やファイルパスにアクセスできない環境でのDDL実行が可能となります。
サイズの大きな一時表でメモリマップトファイルを利用可能に
MySQL 8.0.16から加わったパラメタtemptable_use_mmapを有効にしておくと、temptable_max_ramで設定した閾値(デフォルト1GB)を超えたサイズの一時表をディスク上に配置する際に、従来のInnoDBストレージエンジンではなくメモリマップトファイルを利用

なお同梱されるOpenSSLのライブラリの脆弱性対策のため1.0.2rにバージョンアップされています。このほかセキュリティやメモリリークに関するバグの修正も行われておりますので、MySQL 8.0をご利用中の方はバージョンアップをご検討ください。

[PostgreSQL] 2019年4月の主な出来事

2019年4月はPostgreSQLのアップデートはありませんでしたので、PostgreSQL関連のニュースをいくつか紹介します。

PGEConsが活動成果を公開

PostgreSQL エンタープライズ・コンソーシアム(略称:PGECons)が、2018年度の活動成果を公開しました。新技術検証WG(WG1)では最新バージョンPostgreSQL 11の検証結果。移行WG(WG2)は移行ガイドブック作成。課題検討WG(WG3)ではWindows環境の課題、性能トラブルで考慮するポイント、さらに、クラウド環境に関することやパーティショニングの評価など、多彩な課題を取り上げています。また、2018年度活動成果発表会も開催。東京は4月25日に開催済みですが、大阪は5月10日です。後述のイベント情報をご参照ください。また、取り取り時報の次号では、成果発表会の様子を含めて、もう少し詳しい情報をお伝えしたいと思います。

PostgreSQLを拡張したPowerGres Plusの最新版

PostgreSQLを拡張したPowerGres Plusでは、透過的データ暗号化(TDE)が使えることが特徴ですが、最新版のV10では、これに加えて PostgreSQL 10 に対応し、論理レプリケーション、宣言的テーブルパーティショニング、SCRAM 認証などの機能が利用できるようになりました。

gihyo.jpの特集記事: 詳解 PostgreSQL[10/11対応]

OSSコンソーシアムのセミナーでも登壇いただいた曽根壮大さんによる「詳解 PostgreSQL[10/11対応]―現場で役立つ新機能と実践知識」が、gihyo.jpに掲載されています。PostgreSQLを勉強される方には有益な情報源となるでしょう。

OSS-DB技術者認定試験がVer.2.0に

OSS-DB技術者認定試験 ⁠OSS-DB Silver/Gold⁠⁠ は、PostgreSQLの技術力認定試験ですが、PostgreSQL 10およびPostgreSQL 11に対応したVer.2.0がリリースされました。勉強し身につけた知識と技術の証明に役立てませんか。

データベース移行で問題になるSQLの検出と修正するツール

インサイトテクノロジーが新製品を発表しました。PostgreSQLの他にもMySQLなど各種DBMSに対応しているようです。このような周辺のツールが育ってくることも、OSS-DBの発展には大事なことだと思います。

2019年5月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動

MySQL Cluster開発チームが語る、ミッションクリティカル向けデータベースクラスタ

日程 2019年5月9日(木)13:30~17:30(受付13:00)
場所 日本オラクル株式会社 本社
東京都港区北青山2-5-8
内容 全ノードアクティブ型分散RDBMSかつトランザクション対応キーバリューストアとして利用可能なMySQL Cluster ⁠MySQL NDB Cluster)の開発チームリーダーと製品アーキテクトが来日し、MySQL Clusterの世界的な事例、新機能を活用したシステム構成、今後のロードマップなどの最新情報を一挙にご紹介します。
主催 日本オラクル MySQL GBU

PGECons 2018年度活動成果発表会【in 大阪】

日程 2019年5月10日(金)13:30~18:30
場所 株式会社アシスト西日本支社(大阪・梅田)
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪タワーA 13F
内容 PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムの2018年度の活動成果発表です。懇親会にも申し込みできます。なお、東京は4月25日に開催されました。⁠前述「⁠⁠PostgreSQL]2019年4月の主な出来事」を参照⁠⁠。
主催 PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム

Oracle Code Tokyo 2019

日程 2019年5月17日(金)10:00~18:00(受付開始9:00)
場所 シェラトン都ホテル東京
東京都港区白金台1-1-50
内容 「デベロッパーによるデベロッパーのためのイベント」というコンセプトのイベント。MySQL関連では、ヤフー株式会社で大規模なデータベースファームを運用する三谷 智史氏。MySQL部門のOracle ACEでもある三谷氏がMySQLの最新版であるMySQL 8.0の便利な機能やハマりどころをご紹介いただきます。さらに夕方のコミュニティセッションでは、日本MySQLユーザ会のOracle ACE 5名が共演し「Oracle ACEが語る!ここがヘンだよMySQL」と題したライトニングトークを実施予定です。
主催 日本オラクル株式会社

オープンソースカンファレンス 2019 Hokkaido

日程 2019年5月31日(土⁠⁠~6月1日(日)
場所 札幌コンベンションセンター(OSC受付:1F)
内容 日本MySQLユーザ会および日本オラクルのMySQLチームによるMySQLに関する講演とブース展示、JPUGによるPostgreSQLに関する講演とブース展示が予定されています。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

OSSコンソーシアム/第11回総会と併催セミナー

日程 (予定)2019年7月2日(火)
場所 (予定)ゲートシティ大崎
内容 データベース関連ではありませんが、OSSコンソーシアムの年次総会に併せて、一般向けのセミナーを開催します。詳細は未定ですが、決まり次第コンソーシアムのWebサイトで案内・募集をします。恒例の懇親会にも申し込みできます。
主催 OSSコンソーシアム

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