OSSデータベース取り取り時報

第83回OCIコンソール上でのMySQL Shell、PostgreSQL 14.4の緊急リリースとPostgres Vision 2022

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

[MySQL]2022年6月の主な出来事

2022年6月のMySQLの製品リリースはありませんでした。MySQLの開発チームがDevOpsを担当するクラウド・データベースMySQL HeatWave Database Service ⁠MySQL HeatWave)は、管理コンソールからの設定変更に関連した改良が行われています。これまでは設定変更を行うと、反映のために強制的にMySQLサーバーの再起動となっていましたが、オンラインで変更できるパラメータのみを変更した場合は再起動は行われません。また設定変更時に初期設定値などとの比較もできます。

またインスタンスのシェイプ(≒スペック)として、第3世代 AMD EPYC 7J13プロセッサがベースのE4 StandardやIntel Xeon Platinum 8358のIntel X9 Standard, Xeon 6354のIntel X9 Optimizedなどが利用可能になっています。CPUコア数とメモリサイズの組み合わせはMySQLの公式ブログにまとまっています。

OCIコンソールでのMySQL Shellの利用

MySQL HeatWaveが動作するOracle Cloud Infrastructure ⁠OCI)には、データベース・ツールというOCI上のデータベースのサービスへの接続を管理し、ツール内のSQLワークシートからSQL文を実行できる仕組みが用意されています。このデータベース・ツールがMySQL HeatWaveにも対応しました。SQLワークシートは現時点ではMySQLサーバーへの対応が不十分なところがありますが、OCIコンソール内でのMySQLのクライアント・プログラムであるMySQL Shellを使ったMySQL HeatWaveへのアクセスが簡単になったのがポイントです。

OCIコンソールには、クラウド・シェルというWebブラウザで利用できるターミナルが用意されています。クラウド・シェル・マシンという、いくつかのツールとユーティリティがプリインストールされた5GBのストレージを持った小さなVM上から、OCI上での各種の作業が行えるようになっています。クラウド・シェル・マシンにプリインストールされたMySQL Shellを利用して、MySQL HeatWaveのデータを読み書きできますが、これまでは

  1. クラウド・シェルでSSHのキーペアを作成
  2. 踏み台サーバーの代わりとなるBastion(要塞)サービスにSSH公開鍵を登録
  3. Bastionサービスを経由してMySQL HeatWaveに接続するSSHトンネル作成

という準備作業が必要でした。

データベース・ツールがMySQL HeatWaveに対応したことで、MySQL HeatWaveのインスタンスやユーザー、パスワードに該当するシークレットの情報を登録した「接続」を作成すると[>_ MySQLシェルの起動]というボタンが表示されます。

データベース・ツールの「接続」の設定画面
データベース・ツールの「接続」の設定画面

この[>_ MySQLシェルの起動]ボタンを押すとクラウド・シェルが起動し、その中でMySQL Shellが起動したうえで自動的にMySQL HeatWaveに接続され、以降はMySQLサーバーに対してSQL文の実行が可能です。

クラウド・シェル内でのMySQL Shell
クラウド・シェル内でのMySQL Shell

接続の作成手順は、Oracle Database Insiderのブログでも解説しています。なお、日本語キーボードを使用しているmacOSとChromeの組み合わせでは、バックスラッシュの入力にはoptionキーを押しながら¥を押す必要がある点はご注意いただければと思います。

[PostgreSQL]2022年6月の主な出来事

現在の最新バージョンであるPostgreSQL 14を対象にして、重要なバグを修正した緊急リリースがありました。また、PostgreSQL関連のメジャーイベントである「Postgres Vision 2022」が6月に開催、5月にはPGConもありました。また、お知らせが満載だった前回に含めることができなかった話題も、遅ればせながら取り上げました。

PostgreSQL 14.4 がリリース

2022年6月16日、PostgreSQL 14.4が緊急リリースされました日本PostgreSQLユーザ会の情報⁠。この緊急リリースでは、CREATE INDEX CONCURRENTLY またはREINDEX CONCURRENTLY コマンドの使用時にインデックスのサイレントデータの破損を引き起こす可能性のある問題が修正されました。また、pg_amcheck コマンドによって、データ破損があるかどうかを検出できます。検出や修正方法について詳しくはリリース案内のページを参照してください

なお、上記の重要なバグ修正があったため、今回はバージョン14だけを対象にしたリリースとなりました。サポートされているすべてのバージョンのPostgreSQL(10~14)で予定されているアップデートリリースは、2022年8月11日にスケジュールされています。

「Postgres Vision 2022」がオンラインで開催、9月には日本でも開催

今年も6月14日と15日に「Postgres Vision 2022」がオンラインで開催され、バリエーションに富んだ様々な発表が行われましたイベントプログラム⁠。このイベントの開催報告がEDB社のブログ記事にコンパクトにまとまっていますのでご参照ください。ここではブロク記事に載っているもの以外も含めていくつかピックアップしてみます。

Michael Stonebraker博士による「Postgresで最も見たい4つのこと」
データベース研究の世界的権威であり、PostgreSQL(の前身)や様々なDBMSの誕生にも関わられたMichael Stonebraker博士の講演です。博士はPostgreSQLに期待する領域(市場)として、⁠1)クラウド、⁠2)データウェアハウス、⁠3)機械学習、⁠4)サイバーセキュリティを挙げられました。
Michael Stonebraker博士の基調講演
Michael Stonebraker博士の基調講演
クラウドネイティブデータベースのLinuxメモリ使用量とIOパフォーマンスの調査
ハイレベルな技術セッションももちろんあります。このセッションでは、コンテナまたはオペレーティングシステムレベルでのメモリ割り当てがバッファリングされたディスクIOのパフォーマンスにどのように影響するかが説明されました。また、Linuxのメモリ管理の詳細と、ディスクIOを実行できるさまざまな方法についても説明されました。
PostgreSQLでのプロアクティブなパフォーマンス分析
性能分析とチューニングも、データベース管理の定番テーマです。たとえばOracleデータベースは性能問題に対処するツールとして「診断パック」が提供されていますが、 OracleデータベースをPostgreSQLに移行する際にはPostgreSQLで同等のものが使えるかという課題が持ち上がります。このセッションでは、PostgreSQLがパフォーマンスの問題に備えることができるツールや拡張機能、性能分析のアプローチ方法について説明されました。
その他
Oracleからの移行もPostgreSQLでは定番のテーマです。今回のPostgres Visionでも複数のセッションがありました。また、Kubernetes環境にPostgreSQLを載せる話題も定番です。Kubernetesオペレーターやその他の関連ツールについての複数のセッションがありました。
「EDB Postgres Vision Tokyo 2022」が9月7日~9日に開催
前述の「Postgres Vision 2022」は発表は英語によるものでしたが、9月には日本国内向けの「EDB Postgres Vision Tokyo 2022」が開催されます。本家の「Postgres Vision 2022」を超える3日間の開催となり、さらにバリエーションに富んだ内容になる予定です。
基調講演は、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中でのデータベースの変革や役割について考える機会になるでしょう。また、日本国内での本格的なPostgreSQLやEDB Postgresの採用事例の発表も予定されています。技術力を高めたい方には、レベルの高い技術セッションも複数設けられるはずです。この記事が公開される7月1日にプログラムの公開と参加募集が開始される予定です。参加登録をしてご参加ください。このイベントにはOSSコンソーシアム・データベース部会も協力させていただく予定になっています。

PostgreSQLの世界大会「PGCon 2022」開催

PGConは毎年5月~6月に開催されている、いわばPostgreSQLの世界大会といえるイベントです。今年は5月24日~27日にオンラインで開催されました。本連載の前回に押し込むことができませんでしたので、少々遅れてのお知らせになります。

ここでは簡単に、日本からの発表者がどの様な発表をされたのかをリストアップします。

Googleが通常のPostgreSQLより高速なAlloyDB for PostgreSQLを発表

これも前回に載せられなかったお知らせですが、5月に開催された「Google I/O 2022」で、PostgreSQL互換のデータベースサービスAlloyDB for PostgreSQLのプレビューリリースが発表されました。

Google Cloudには、以前からCloud SQL for PostgreSQL があり、さらに Cloud Spanner がPostgreSQLと互換のインタフェースを持っています。今回はこれに加えて AlloyDB for PostgreSQL が発表されたことになります。通常のPostgreSQLよりもかなりの高速化が実現できる点がメリットとのこと。Google Cloudに限らず、Amazon Web ServicesでもAzureでも、複数のPostgreSQLや互換性のあるマネージドサービスが提供されていますので、ますますどれを選ぶのが良いか悩ましい状況になってきた様に感じます。

2022年7月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動

オープンソースカンファレンス 2022 Online Kyoto/Hiroshima

日程 〔Online Kyoto〕2022年7月29日(金⁠⁠、30日(土)10:00~18:00
〔Online Hiroshima〕2022年10月1日(土)10:00~18:00
場所 オンライン開催(ZoomおよびYouTube Live)
内容 オープンソースカンファレンスは、オープンソースの「今」を伝える総合イベントとして、東京だけでなく、北は北海道、南は沖縄まで全国各地で開催しています。2020年の春以降はオンラインでの開催となっています。今後の開催予定は7月のOnline/Kyoto(京都)10月のOnline/Hiroshima(広島)です。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

MySQL 8.0 入門セミナー ~MySQL レプリケーション基礎 &ReplicaSet速習編~

日程 2022年7月21日(木)15:00~16:30
場所 オンライン(Zoom)
内容 毎回ご好評をいただいているMySQL 8.0入門セミナーの2022年版はギュギュッと凝縮した速習版として開催。障害時に備えた高可用性を簡単に実現できたり、メインで利用しているサーバーに影響を与えずにバックアップを取得できるなど、運用面でのメリットが数多くあるレプリケーション機能の基礎について解説します。
  • MySQL 8.0のレプリケーションの仕組みや利点
  • レプリケーションの代表的な活用ケース
  • MySQL InnoDB ReplicaSetの構築方法
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

MySQL 8.0 入門セミナー ~MySQL InnoDB Cluster & ClusterSet速習編~

日程 2022年7月26日(火)15:00~16:30
場所 オンライン(Zoom)
内容 毎回ご好評をいただいているMySQL 8.0入門セミナーの2022年版はギュギュッと凝縮した速習版として開催。グループレプリケーション構成を簡単に構築でき自動フェイルオーバーも可能なMySQL InnoDB Clusterについて学べます。データセンターをまたいだ災害対策環境構築などに役立ちます。
  • MySQL InnoDB ClusterSet の構築方法
  • MySQL InnoDB Cluster を Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上で構築する際の考慮事項
主催 日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

PostgreSQL 15のリリースノートと虎の巻でわいわい言う会(続)

日程 2022年7月8日(金)20:30~23:00
場所 オンライン開催
内容 この連載の前回にお知らせできなかった、PostgreSQL 15のリリースノートと虎の巻でわいわい言う会の続編になります。
主催 PostgreSQLアンカンファレンス

第34回 PostgreSQLアンカンファレンス@オンライン

日程 2022年7月29日(金)20:30~23:00
場所 オンライン開催
内容
  • 初心者による「使ってみた/動かしてみた」
  • 中級者による「こういうノウハウ使ってる」
  • 上級者(?)による「こういう拡張してみた」
その他、PostgreSQLに関連する話題であれば何でもOK! アンカンファレンス形式なので、何が出るかは当日参加してのお楽しみ。
主催 PostgreSQLアンカンファレンス

EDB Postgres Vision Tokyo 2022

日程 2022年9月7日(水⁠⁠~9月9日(金)10:00~21:00
場所 オンライン開催
内容 この記事の本編でも紹介しましたが、Postgresを活用してイノベーションを実現したい企業の方々のためのイベントです。⁠データを制するものは未来を制す(Own your data, own your future.⁠⁠」をテーマに、Postgresに関する最新情報がラインナップされています。
主催 エンタープライズDB株式会社

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