「ドラゴンジェネシス ─ 聖戦の絆 ─」や「青春姫 SCHOOL PRINCESS」など、多数のモバイルオンラインゲームを提供している( 株) gumi(以下gumi)は、前回紹介したアトラシアンの「Stash 」をバージョン管理システムとして導入しました。Stashを導入した背景や選定の理由などについて、同社の本間知教氏(写真1 )と清水佑吾氏(写真2 )にお話を伺いました。
バージョン管理システムにgumiが求めた要件
――バージョン管理ツールとしてStashを導入されたということですが、それ以前は何を使われていたのでしょうか。
本間氏: Stashを導入する前に使っていたのはGitHub Enterpriseです。ただ、運用面でいくつかの課題がありました。gumiではほぼすべてのサーバをAmazon Web Services(AWS)で運用していますが、当時のGitHub EnterpriseはAWSに未対応でした。そのため、保証外を承知で国内の別のクラウドサービスで運用していましたが、ソフトウェアのアップデートやバックアップに失敗するなど、いくつかのトラブルがありました。またライセンス費用の負担も大きいことから、別のバージョン管理システムへの移行を検討することにしました。
写真1 本間知教氏
新しいバージョン管理システムの選定においては、まずアカウント管理をシンプルにしたいという要件がありました。GitHub Enterpriseを導入した当時はエンジニアを中心に使っていましたが、その後ディレクターやデザイナーといった非エンジニアのユーザが増え、海外拠点のユーザもいます。こうしたユーザを1人ずつ登録して運用する形は破綻をきたしていたので、シンプルにアカウント管理ができるものを探しました。また、社外のエンジニアが利用できるように、リポジトリの操作に対する権限を柔軟に設定できることも要件でした。これらを満たすのがStashだったのです。
――オープンソースのものではなく、商用プロダクトを選択したことには何か理由があったのでしょうか。
本間氏: バージョン管理システムは開発の根幹を支えるツールなので、やはり安定しているプロダクトを使いたいという思いがまずあります。オープンソースとして提供されているバージョン管理システムの中には、さまざまなミドルウェアをインストールする必要があるものや、バージョンが細かく指定されているものがあります。トータルでの整合性を誰が検証して担保するのかと考えたとき、内部のリソースを費やして対応するよりも、商用のサポートを受けたほうが安心できます。このような考えで検討を行い、最終的に選択したのがStashでした。
Crowdを利用してシングルサインオン環境を実現
――Stashの導入時、トラブルなどはなかったのでしょうか。
本間氏: 私たちのリポジトリが極めて大きいこともあり、当初はパフォーマンス面で問題が生じました。しかしアトラシアンのパートナーであるリックソフトの支援を受け、問題解決に向けて実際にいろいろと検証していただいたのでとても助かりました。
――現状のStashの利用状況を教えてください。
本間氏: ユーザ数は600を超えています。アカウント管理には、アトラシアンのシングルサインオン製品である「Crowd (クラウド) 」を利用しています。CrowdにはGoogle Appsに接続するためのプラグインがあるので、ヨーロッパやシンガポール、韓国の拠点も含めてGoogle Appsと連携しています。Stashを導入した当初は海外アカウントは連携させていませんでしたが、現在は海外からもGoogle AppsのアカウントでStashにアクセスできるように移行している最中です。
――GitHub EnterpriseからStashへ移行したことで、エンジニアの方々に戸惑いなどはなかったのでしょうか。
写真2 清水佑吾氏
清水氏: 導入当初は性能面で問題が発生しましたが、それ以外はとくに問題はありませんでした。開発フローの面においても、必要な機能はほぼすべてそろっていることを確認していたので、問題はなかったですね。
――実際にStashを使って便利だと感じるのは、どういった部分でしょうか。
清水氏: 権限管理を細かく設定できるのはやっぱり便利ですね。MasterやDevelopなどのブランチが汚れると一大事なので、たとえば入社したばかりのエンジニアにはそれらのブランチに対するプッシュ権限を与えないように設定できます。人数が増えてくると、どうしてもブランチ管理は難しくなりますが、そのあたりの権限を柔軟にコントロールできるのがStashのメリットだと感じています(図1 ) 。
図1 Stashのブランチ権限管理画面
――本日はありがとうございました。
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