ヒットメーカー★サムザップの流儀

第2回チャレンジできる環境はいかに作られたか

本格戦国RPG「戦国炎舞 -KIZNA-」の開発/運営を行っている⁠株⁠サムザップで新たなゲームタイトルのリリースに向けたプロジェクトが進められていると聞き、さっそくお話を伺ってみたところ、普段なかなか聞けないサムザップの様子が見えてきました。プロデューサーの石原直樹氏とエンジニアリーダーの野口冬馬氏写真1にプロジェクトの進行管理についてのお話はもちろん、野口氏のメンターでもある石原氏には、サムザップでのコミュニケーションのとり方についても取材させていただきました。

写真1 今回お話を伺った石原直樹氏(右)と野口冬馬氏(左)

写真1 今回お話を伺った石原直樹氏(右)と野口冬馬氏(左)

自分が動かないとプロジェクトは進まない

――まず、簡単にこれまでの経歴を伺えますか。

石原:新卒でシステムインテグレータに入社し、SEとして働いていました。そのあと、あるゲーム会社でエンジニアマネージャーとしてプロジェクトに従事し、そこからサムザップに転職しました。サムザップに入社した当初はエンジニアをマネジメントする立場だったのですが、現在は私の希望もあって新規プロジェクトのプロデューサーを担当しています。

野口:私は3年前に新卒でサイバーエージェントに入社しました。配属先がその子会社であるサムザップで、エンジニアとして既存タイトルの運用などに携わり、現在は石原の下で新規プロジェクトのエンジニアリーダーを担当しています。

――石原さんは野口さんのメンターだと伺いました。どのような背景から、野口さんのメンターになったのでしょうか。

石原:今回のプロジェクトが始まったとき、野口にはリーダーとしてエンジニアをマネジメントした経験がありませんでした。一方、私はずっとエンジニアのマネジメントをやってきた経験があります。そこでプロデューサーとしての立場もうまく利用しつつ、野口の成長をサポートできればいいなと思い、自分の過去の経験も踏まえてメンタリングすることにしました。

――メンターとして、石原さんは野口さんにどういったことを伝えてきたのでしょうか。

石原:人からの指示を待つのではなく、自分で考えて動いてほしいということですね。現在のプロジェクトはまだ小さなチームなので、各メンバーがそれぞれ自分で意識して動かないと成立しません。当初入社してすぐだった彼には、シンプルではあるものの非常に重要なことだったと思います。若いうちだから失敗もたくさんできますしね。

大きなプロジェクトだと、誰かが仕事の手を抜いたとしてもなかなか表に出ないことも多いですが、現在のプロジェクトで手を抜いたり、適当なことをしたりすれば、それは進捗やプロダクトの品質に大きく影響します。そのため、自分がプロジェクトを進めるうえでの中心メンバーだという自覚、そして自分が動かないとプロジェクトは進まないんだという意識を持つことが大切です。

画像

野口:リーダーなので、自分の開発方針がそのまま進捗に影響しますし、何か問題があれば自分で解決しなければなりません。当然ですが、誰も「これをやってくれ」と指示は出してくれないので、どうやっていくかを自分で考えることは意識しています。

サムザップのエンジニアに求められる“視点”とは

――そのほかに、プロジェクトを始めた当初から変わってきたことはありますか。

野口:最初はミーティングなどで作業者目線の意見を出すので精いっぱいでしたが、最近は事業者目線で考え、なおかつ自分の発言に責任を持つことを心がけています。⁠これが好きだから」などといった理由で意見を言うことはなくなりました。

――そうした変化は石原さんも感じていますか。

石原:感じています。この業界に入ってくる人たちはやっぱりゲームを作りたいという意識があって、企画の部分から携わりたいという人も少なくありません。エンジニアに限らずですが、やっぱり自分の作りたいものをベースに話をしてしまいがちですよね。最初であればしょうがないとも思うのですが、私たちにとって大事なのはユーザーや市場に受け入れられるものを見極め、そこに目線を合わせて作っていくことなんです。野口が自分目線ではなくユーザー目線や事業者目線で物事を語れるようになったのは大きな成長だと考えています。

野口:自分自身が変わったのは、現在のプロジェクトにアサインされてからですね。最初は石原の言うように、自分の好みが意見に混じってしまうことも多かったのですが、チーム内でいろいろとやりとりしていく中で、市場に目線を合わせて考えないといけないんだなということがわかってきました。

――逆に、野口さん自身が今後伸ばしていきたいと考えるスキルにはどういったものがありますか。

野口:事業者目線の土台を造るためにも、技術力です。特に課題だと感じているのは設計の部分で、最初にしっかり固めなければあとあと問題になりかねません。しかし、まだ経験が浅く、自分の力だけでは限界があるので、社内の別のチームやサイバーエージェント内でゲーム事業に携わっているほかの子会社に話を聞きながら対応しています。

石原:野口が話したのはたしかにそのとおりですが、そのあたりはほかの人の協力を得たり経験を積んでいったりすることで克服できる課題だと思います。また自分自身で認識できているので、私はそこまで気にしていないですね。

それよりも、野口にはこれまで以上に目線を高くしてほしいなと考えています。これは野口に限った話ではなく、私自身もやりがちなんですが、プロデューサーやエンジニアチームとして目標を設定するとき、どうしても目標を実現できそうなレベルに⁠置きに⁠いってしまうことが多いんですよね。そうではなく、プロジェクトを成功させるための目標を設定するんだっていう意識がもっと出てきてほしい。

そのために必要なのは、最終ゴールから逆算した目標設定ができることです。まずは高い目標からブレークダウンしていくことが大事ですね。⁠このタイミングで必要なことはこれで、期日はこの日」という形で目標を立てられれば、スケジュールを作成する際に自然と優先順位も付けられるはずなんです。そうなれば、高い目標であっても⁠無理な目標⁠とはなりにくいですし、プロジェクトメンバーの進捗も追いやすくなります。目標ごとにコスト的なスケジュールも把握できれば、さらに高い目線でのリーダーシップも取れると思います。

入社3年目のエンジニアリーダーのチャレンジ

――今回のプロジェクトに取り組む中で、野口さんがチャレンジだと感じているのはどういったことでしょうか。

野口:今回のプロジェクトはすべてがチャレンジです。まず技術面では、今回採用したゲームエンジンは経験がありますが、その上でやっていることはこれまでとまったく異なり、それ以外にも始めて触れる技術がたくさんあります。

また自分以外のエンジニアに対して指示を出したり、チームとしてのスケジュ ールを管理したりすることも初めてなので、そこも大きなチャレンジです。自分たちだけでは解決できない問題や、さらに精度を上げるためにすべきことについて、ほかのプロジェクトのエンジニアに聞くというのも初めてでした。企画からプロジェクトに関わったこと、ディレクターやアートディレクターとやりとりするといったことも初めての経験です。

――その野口さんに対し、石原さんからはどのようなアドバイスを送ったのでしょうか。
画像

石原:導入の部分とか必要最低限の考え方などについては直接教えましたが、あとは任せて見守っています。経験上必要な部分はサポートしたり、あるいは野口自身がアラートを上げたりしたらアドバイスするという姿勢ですね。必要以上に私が出ていくと、結局私がやることになっちゃうので。開発についても、彼とメンバー間でのコミュニケーションや、具体的な進捗管理のしかたなどについてはほとんどタッチしていません。問題があったときだけ入っていくイメージで、基本的には任せています。

ただ彼の場合、試行錯誤することを厭わないですし、考えも筋が通っていてロジカルなので、信頼して任せている部分はあります。任せても、変なところに着地することはないだろうなと。ベクトルがずれていると思ったときに、少し話をするくらいですね。

――ご自身のキャリアパスを野口さんはどのように考えていますか。

野口:今はまだ明確にはありませんが、エンジニアという立場にこだわらずものづくりに関わっていきたい気持ちがあります。ゆくゆくは自分でプロジェクトを立ち上げてみたいですね。

ゼロからゲームを開発する楽しさと難しさ

――現在取り組んでいるプロジェクトは、いつから始まったのでしょうか。

石原:私ともう1人の企画者でプロジェクトを立ち上げたのが2015年末で、野口がジョインしたのはその数ヵ月後でした。そこから企画とモック作りを半年ほど進めていたのですが、このままではゲームとして成り立たせることが難しいと判断し、それまでの企画をつぶして作り直すことになりました。現在は、作り直した新たなモデルで開発を進めているところです。

野口:それまでの企画をつぶし、新たに作り直すことになったのは、私自身にとっても大きな経験でした。それまではモック作りを進めていましたが、作り直すことになってからはチーム全員でイチから企画を練り直すことになり、市場調査も含めて企画を考えました。入社2年でこんなに携わらせてもらえるなんて、思ってもみなかったです。

――ゼロからゲームを開発する楽しさ、あるいは難しさを教えてください。

石原:難しさとして最も大きいのは答えがないということです。企画にしても事業モデルにしても、あるいはユーザー層をどうするかといったことにしても、⁠それで大丈夫だ」っていう判断は誰にもできないんですよね。確度や精度が高まっている実感はあっても、これで競合に勝てる確信は持てない。不安の中でずっとやり続けるのは結構苦しいですしね。その中でモチベーションを保ち、リリースまでプロジェクトを持っていくのは事業責任者としてはしんどい部分かと思います。

一方、新規に携わることで、自分たちの思いが詰まったものが世に出て、ユーザーの方々に喜んでもらえる。社会にインパクトを与えることだってできるかもしれません。そういったことを外から見るのではなく、内側で主体的に味わえるのは、ものづくりをしている人間にとって何事にも代え難い喜びです。苦しくてもがんばれるモチベーションはそこですよね。ビジネス的に言えば、売上や利益などいろいろな指標がありますが、それはいったん置いて、ユーザーの方々に良いものを届けて喜んでもらえることが、私たちのがんばれる源泉になっていると思います。

――どういった人と同じプロジェクトのメンバーとして働きたいですか。

石原:まずマルチに仕事ができる人。特に今回のような新規の立ち上げでは、エンジニアであっても企画の検討に積極的に参加するだけのマーケティング感覚を持ち、いついかなる場合にも柔軟に対応できる人じゃないと厳しいかもしれません。もう1つはコミュニケーションできる人ですね。正しいと思うことであれば、それを心の中に閉じ込めておくのではなく、メンバーに対してきちんと発信し、返ってきた反応にきちんと対応できる。そうしたコミュニケーションスキルは重要だと思います。

さらに言えば、欠くことのできないメンバーになる意識ですよね。⁠自分が欠けたらこのプロジェクトは立ち行かない⁠⁠、良い意味でそういう意識を持ってプロジェクトに参加できる人。常に当事者意識を持った人であれば、特に新規プロジェクトの立ち上げが多いサムザップではすごく活躍できると思います。

野口:それとチャレンジしたいと考えている人にとっては、とてもやりがいのある職場かなと思っています。市場が急速に変化していく中、サムザップとしても試行錯誤しながらチャレンジしていて、エンジニアとしても思い切ったことができます。もちろん大変な部分もありますが、変なしがらみや理不尽なことはないので素直に開発に集中できる環境が整えられているのは、サムザップの良いところだなと感じます。

――本日はありがとうございました。
プロジェクトメンバーが互いの意見を交わす⁠朝会”
プロジェクトメンバーが互いの意見を交わす“朝会”

サムザップでは各種エンジニアを募集しています。

詳しくはhttp://www.sumzap.co.jp/recruit/をご覧ください。

本連載の過去記事はページ下のバックナンバーよりご覧になれます。

WEB+DB PRESS

本誌最新号をチェック!
WEB+DB PRESS Vol.130

2022年8月24日発売
B5判/168ページ
定価1,628円
(本体1,480円+税10%)
ISBN978-4-297-13000-8

  • 特集1
    イミュータブルデータモデルで始める
    実践データモデリング

    業務の複雑さをシンプルに表現!
  • 特集2
    いまはじめるFlutter
    iOS/Android両対応アプリを開発してみよう
  • 特集3
    作って学ぶWeb3
    ブロックチェーン、スマートコントラクト、NFT

おすすめ記事

記事・ニュース一覧