【話し手】
中地功貴(NAKAJI Kohki)
中地功貴
普段はUnityエンジニアとしてVRゲームの開発をしながら、
Twitter:@nkjzm GitHub:nkjzm
URL:https://
本コーナーでは技術へのタッチポイントを増やすことを目標に、
今回のテーマはVR
はじめてのVR
日高:今回はVR技術を中心に聞いてみたいと思います。VRとの関わりはいつからでしょうか。
中地:はい。学生のころ
日高:早い時期に触れられていたんですね。
中地:始めた時期はちょうどVR元年と言われていたころです。たまたま参加した勉強会にOculus Rift DK2
日高:私もやったことあるかも。VRってテレビの画面に映っているものとは全然違いますよね。
中地:当時、
日高:あれ、
中地:あとから知ったことなんですが人間の五感って相互に作用しているらしいんですよ。クロスモーダル現象といって、
日高:いい体験をしたんですね。
中地:この勉強会はUnreal Engineを使ってVRコンテンツを作ろうという主旨のものでした。当時は名古屋で学生をしていましたが、
日高:3週間とはずいぶん短いですが、
中地:いえ、
日高:ゼロからだと難しかったのでは。
中地:まだまだVR開発者が少なかった時期ですが、
日高:初心者が遠慮せず前に踏み込めたというのは温かいコミュニティがあったんですね。
中地:自分がやってみて気付いたことなのですがVRってかぶらないとわからないんですよ。SNSとかでバズっても遊んでみようとはならない。体験するハードルが高いことが開発者が相互扶助する下地になったのかもと思います。
日高:自分がしんどかったことを防ぎたい?
中地:どちらかというと、
伝える難しさ
日高:VRにハマる人が感じる魅力ってどのあたりなんでしょうか。
中地:それに回答する前に少し説明がいるかもしれません。VRと一言で表現していますが実はたくさんの分野があるんです。
日高:一般的なイメージだとヘッドセットをかぶるやつがVRだと考えがちですがそうではないと?
中地:はい。視覚の場合はヘッドセットタイプのもので、
日高:それは視覚だけでなくて五感のような人間の感覚を延長できるものだと?
中地:そうです。これっていう一つの現象ではないので、
日高:たしかに重要な体験って人によって全然違いますからね。
中地:ですね。VRって聞くと空間のようなものがあると捉えがちなんです。
日高:私も仮想空間で何かするというイメージがあります。
中地:Virtualという言葉には
日高:具体的な例だとVRChatのようなソーシャルなチャットでの利用も増えていますよね。
中地:そのときの価値はチャット空間というより本質的には人とのコミュニケーションじゃないかな。現実と同じ体験ができるから楽しいし、
日高:あー、
中地:そうですね。どの側面に魅力を感じるのかは人それぞれで、
日高:ゲームでの感覚というと樹の下で告白する恋愛シチュエーションの再現でもいいんでしょうか?
中地:わかりやすいと思います。実際に自分が体験していなくてもアニメとか作品を知っているだけでイメージができる。そういう感覚は体験として作れるんですよね。
日高:現実的でなくても同じ背景を共有できればいいと。
中地:この例は日本の文化を知っている前提があるので海外のユーザーは理解するのが難しいかもしれません。
日高:なるほど。ユーザーの持っている体験に依存するところが大きいからか。
中地:はい。VRゲーム開発ではシーンや操作など自然だと感じてもらえる要素を詰め込んでいきます。ユーザーの感じ方を想像しながらなので、
体験をデザインする
日高:技術スタックとしてはどのようになるのでしょうか?
中地:3Dゲーム開発と同じようにUnrealEngineやUnityを使うことが多いのですが、
日高:なるほど、
中地:まだ細かい操作は難しいという制約はありますが工夫しています。
日高:体験が幅広いうえに制約もあるんですね。これを乗り越えるのは苦労しそうです。
中地:実は中高生のころにゲームの遊び方が変わると感じた原体験がありました。
日高:家庭用ゲーム機からスマホゲームへという時期かな。
中地:はい。これまでの十字キーをスマホで再現されてもおもしろく感じなくて。それよりタッチパネルに合ったタワーディフェンス
日高:入力デバイスがゲームに与える影響が大きいと。
中地:VR開発を始めたころはスマホゲームも黎明期を抜けていて。新しい表現に魅力を感じました。これじゃんと思って。
日高:技術の変わり目はワクワクしますよね。
中地:当時のVRはハンドコントローラやキーボードやゲームパッドなどいろいろなインタフェースを試しながらでしたから過去の経験が活きなくて。
日高:今までの常識がいったんリセットされるのか。
中地:制約の中でどう解決するのかはめちゃめちゃ楽しかったんですよ。最初に作った展示用のVRゲームはユーザーは前に進むしかできないものでした。
日高:ずいぶんと割り切りましたね。
中地:サラリーマンになって通勤電車に何度も乗り込むというコンテンツで、
日高:自分の体を動かす感じじゃないと。
中地:そこで考えたのは頭を前に傾ける方法です。歩くこととリンクさせたかった。ただ実際には制御がうまくいかず、
日高:やってる様子を想像すると笑えてきますね。
中地:ですよね。ただユーザーはヘッドセットをかぶっているので操作者が外で何をしているかは見えていない。なので自分の操作で進んでいると感じてもらえれば体験が成立するVRの性質をうまく使って応急処置できたんじゃないかな。
人生をエモくしたい
日高:2015年ごろから7年以上VR開発者として活躍されてきていますが、
中地:実は迷ったこともあって。現在所属しているVR系スタートアップに入る前、
詳しくはブログに書いています。
日高:めちゃくちゃいいエピソードだ。夢に向かうことを選んだんですね
中地:正直ほだされましたね。僕も人生を決めるときに感情を大切にしたいと思っていたので、
日高:情熱的な性格だと感じています
中地:僕は退職エントリも好きなんですよ、
日高:熱量が伝わってきました。実際にVRゲーム
中地:もちろんエモい人生を選んだ苦労もあったんですがエンジニアって楽をしないほうがおもしろいなと感じます。アルトデウスはVRゲームで初めてファミ通・
日高:VRで初めてと言われると響きますね。
中地:会社は自分たちで作ったと話していいと言ってくれていてクリエイターとしてめちゃくちゃうれしかったです。
メタバースを考える
日高:VRに新しい可能性を感じる瞬間はありますか?
中地:バズワードですがメタバース的な展開はフックとしておもしろそうです。ちょっと前のVRは体験重視だったけど今はゲーム性だし、
日高:いまエンジニアの間でもGather
中地:そうですね。VR技術を使っていなくてもメタバースと呼んでも差し支えないと思います。VRだと伸びしろがありそうぐらいで。
日高:日常的に使えるものだとイメージしやすいですね。
中地:はい。現実の地続きになる体験が作れるとおもしろそうだと感じています。
日高:メタバースが特別なものじゃないほうがいい?
中地:新しいものが出ると構えてしまいますが、
日高:Slackとかのチャットツールと対面の間にビデオ会議が入ってきていましたよね。ここ数年急速に。
中地:その2者の中間にGatherが位置していると思えばVRも延長線上に位置できるはずで、
日高:人間の存在感って何? という疑問を埋められるとおもしろい。
中地:顔がでてたら密な会話ができるかというと、
日高:注目しているという合図や表現はVRでも再現できそうに感じます。
中地:人間の五感では視覚が強いわけですが、
日高:そこは省略してもよかったのに。
中地:新幹線に座って30分ぐらいお弁当を食べたりトランプしたりする時間を用意して楽しんでいる。あえて移動する体験を入れることで成立していて、
日高:一緒に遊んで過ごすことが本質的な体験だと。
中地:そうですね。誰かと一緒に経験することで
日高:面倒な制約があることは楽しい要素も産み出しているんですね。
中地:コミュニケーションを題材にしたコンテンツによく見られる傾向はもう一つあって、
日高:自分で作るのは大変そうですが。
中地:最低限の環境があればできるんですよ。3Dモデルを作るのは難しいけどアバターの改変ならという具合に制約の中で頑張れる。
日高:好きな服を着るような?
中地:そうです。色を変えたりパーツを追加したりでもアイデンティティが生まれるんです。ここ2、
日高:大事なのは技術的な進化だけではないと。
中地:今のはアバター文脈でしたが僕はユーザーのクリエイティビティが当たり前のように表現できる世界が好きなので、
日高:いいですね。私も同じ夢を見たくなりました。ありがとうございました。
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