Windows Phoneアプリケーション開発入門

第2回Windows phoneアプリケーション開発の第一歩

はじめに

11月10日に開催された秋冬モデルの新作発表会にて、Windows Mobile 6.5が搭載されたWindows phoneの発表がいくつかありました。

ソフトバンクモバイルからは、Windows Mobile 6.5 Professional搭載の「X02T(東芝社製⁠⁠」と、Windows Mobile 6.5 Standard搭載の「X01SC(Samsung Electronics社製⁠⁠」の2機種が2009年12月以降に発売されるようです。

Windows phoneのエミュレータを使って、これらの端末上で動作するアプリケーションを作成するには、Windows Mobile 6.5向けのSoftware Development Kit(以下SDK)をインストールする必要があります。

X02TとX01SCの話の中でも出たとおり、Windows phoneには異なる種類のエディションがあります。開発の際には自分の作りたい対象のWindows phoneのエディションに合ったSDKをインストールする必要があります。

今回は「Windows phoneアプリケーション開発の第一歩」として、Windows phoneアプリケーションの開発環境の導入を行いましょう。

まずはWindows Mobile OSのバージョンとエディションのお話をします。

Windows phoneのバージョンとエディション

Windows CEカーネルをベースに携帯電話・PDA向けにカスタマイズされたOSを「Windows Mobile」と呼び、Windows Mobile 5.0が搭載されたW-ZERO3(SHARP社製)が日本で発売されたときには、今までにない新しいコンセプトで話題を呼びました。

最近では、日本のメーカーでもSHARP社のほかに、東芝社等もWindows Mobileに対応したスマートフォンを提供してきており、日本でもWindows phoneが盛り上がってきていると感じるようになってきました。

さてW-ZERO3にも搭載されていたWindows Mobile 5.0には、PokectPCとSmartPhoneの2種類のエディションがあります。PokectPCはタッチパネルでの操作に対応し、自由度の高いアプリを動作させることができます。SmartPhoneはタッチパネルを搭載しておらず、ハードキーのみによる操作に対応しています。

Windows Mobile 6.0からはエディションに変更があり、PokcetPCが目的別にClassicとProfessionalに、SmartPhoneはStandardへと名称が変更されました。

このようにOSのバージョンとエディションは複雑なことになっています。それぞれの特徴を下記の表にまとめました。

5.0でのエディション6.0でのエディション電話機能スクリーンタッチ端末の例
PocketPCClassic×WILLCOM 03
PocketPC PhoneProfessionalT01-A、X02T
SmartphoneStandard×X01SC

電話機能が搭載されていないはずのClassicにW-ZERO3シリーズを載せていますが、SHARP社がWindows Mobile標準の電話機能を使わずに、独自の電話アプリを搭載しているからです。この電話アプリについても機会があれば取り上げたいと思います。

Windows phoneアプリケーションの開発に必要なもの

Windows phoneアプリケーションを作りたいので、ここではOSのバージョンをWindows Mobile 6.5、エディションは一般的なProfessionalを開発対象としましょう。

まず開発を行うために必要なものをピックアップしました。

  • Visual Studio 2005 Standard / Visual Studio 2008 Professional 以上
  • ActiveSync / Windows Mobile Device Center
  • .NET Compact Framework 3.5
  • Windows Mobile 6.0 Software Development Kit
  • Windows Mobile 6.5 Developer Tool Kit

Visual Studio

開発環境そのものです。

Visual Studio 2010 Beta2 日本語版もリリースされて使える状態になってますが、Windows phoneアプリケーションの開発には対応していません。現時点ではVisual Studio 2005 Standard Edition、またはVisual Studio 2008 Professional Editionを使う必要があります。

無料で配布されているExpress Editionでは、残念ながら開発することができません。ただし、学生であればMicrosoft Dreamsparkなどのプログラムを使って、無料でVisual Studioを使用することが可能です。また従業員が11人以下でWebアプリを専業としている会社でも、同様のプログラムをやっているので是非利用してみてください。

上記プログラムの対象でもない方でも、約3ヶ月間使える体験版があります。

ActiveSync/Windows Mobile Device Center

Windows phoneを使っていていれば、PCとアドレス帳やスケジュールを同期するためにWindows Mobile Device Center(もしくはActiveSync)が入っていると思います。開発環境を導入するのがWindows XPであれば、ActiveSync 4.5をお使いください。

私は開発環境にWindows 7(64-bit)を使っていますので、以下のWindows Vista以降の64-bit版OS向けのWindows Mobile Device Centerをインストールしました。

図1 S11HTと同期を取ったWindows Mobile Device Center
図1 S11HTと同期を取ったWindows Mobile Device Center

Windows Vista以降で32-bit版OSを使用されている方は、こちらのWindows Mobile Device Centerをお使いください。

.NET Compact Framework 3.5

デスクトップPCで動いている.NET Frameworkのサブセットです。

少ないリソースの環境に導入されるために、デスクトップ版の.NET Frameworkと比較して、一部の名前空間やクラス・メソッドが使えなくなっていますが、非常に迅速にアプリケーションの開発を行うことができます。

余談ではありますが、この.NET Compact Frameworkを使ってWindows phone向けに書いたプログラムをデスクトップPCでも動作させることができます。Windows phoneに特化していなければという条件付きにはなりますが、一度お試しください。

Windows Mobile 6.0 Software Development Kit

Windows Mobile 6.0のSDKです。

Windows Mobile 6.5用にはSDKで公開されておらず、このWindows Mobile 6 SDKを拡張する形になるので、あらかじめインストールしておく必要があります。またこのSDKにはWindows Mobile 6.0のエミュレータが入っていますので、Windows Mobile 6.5との挙動の違いを比較するのであれば、触ってみるのも面白いかもしれません。

以下のサイトにアクセスして、⁠Windows Mobile 6 Professional SDK Refresh.msi」をダウンロードして、インストールを完了させてください。

導入している様子のスクリーンショットを取りました。特に悩むこともなくインストールすることができると思います。

図2 セットアップウィザードを起動したところ
図2 セットアップウィザードを起動したところ

Standard版の開発をされる方は、同じページの「Windows Mobile 6 Standard SDK Refresh.msi」のほうをお使いください。

以上で、Windows Mobile 6.0のSDKのインストールは完了です。

Windows Mobile 6.5 Developer Tool Kit

Windows Mobile 6.0のSDKと同じ要領でインストールが完了すると思います。日本語のエミュレータを使いたいので、以下のサイトにアクセスして「Windows Mobile 6.5 Professional Developer Tool Kit (JPN).msi」をダウンロードしてインストールします。

Windows phoneエミュレータの起動

開発環境の導入が完了しましたので、Windows Mobile 6.5のデバイスエミュレータが使える状態になっています。実際に開発を行わない方でもどんなものか確認を行うことができるので、購入する参考になるのではないでしょうか。

[スタート⁠⁠→⁠Windows Mobile 6 SDK⁠⁠→⁠Standalone Emulator Images⁠⁠→⁠Japanese]から「WM 6.5 Professional VGA」を選択します。さぁ、エミュレータを起動させてみましょう!

図3 スタートメニューを開いたところ
図3 スタートメニューを開いたところ

デバイスエミュレータを起動すると、ブート画面が表示されます。実機と同様にしばらく待つとOSがエミュレータが起動します。

図4 デバイスエミュレータを起動したところ
図4 デバイスエミュレータを起動したところ

Window Mobile 6.5のエミュレータからデフォルトのToday画面が新しくなりました。

図5 新しくなったToday画面
図5 新しくなったToday画面

アイコンのサイズも大きくなっていて、画面を撫でた時に惰性でスクロールするようになり、指タッチでの操作が非常にやりやすいようになっています。本当にアプリケーション開発を行わない方にも触って頂きたいですね。

まとめ

今回は、⁠Windows phoneアプリケーションの開発の第一歩」として環境の導入を行いました。

Windows phoneアプリケーションを開発可能なVisual Studioを購入するのが大きな壁となってしまいますが、Microsoftが催しているプログラムの対象者であれば、無料で開発環境を整えることができます。またVisual Studioを持っていない方でも、90日との制限はついていますが評価版を通して開発を行うための準備はできたと思います。

次回は、Windows phoneアプリケーションの開発を実践して、導入したエミュレータ上で作ったアプリケーションを動かしてみましょう。

以上で今回は終わりです。ありがとうございました。

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