目次
第1章 分水嶺の旅
旅の準備 地形の基本を知る
地形図――等高線から三次元へ/ 侵食フロント――大地を穿つ彫刻家/ ケース1 河岸段丘を侵食する河川/ ケース2 海成段丘を侵食する河川/ 分水嶺――雨滴をふるい分ける閻魔大王/ 分水界で囲まれた集水域/集水域を獲得し日本一になった利根川/ 谷中分水界――人には見えない峠/ 地形研究者を魅了する谷中分水界/ 河川の争奪――川と川の国盗り合戦/ 上り切っても下らない片峠/ デービスの河川争奪説/河川争奪――十分な状況証拠
第1日 不思議な地形が目白押し
高さがそろった不思議な尾根/ 深さが異なる非対称な谷/ 送電線は地質調査の道しるべ/ 尾根に穿たれた〝天空の池〟/ 分水嶺は行き止まり? / 初日の宿で河川争奪を復習/ 谷に秘められた壮大な河川争奪劇/ 河岸段丘に残された痕跡
第2日 気まぐれな分水嶺
小さくても立派な谷中分水界/ 盆地と盆地を分ける分水嶺/ 峠のはじめは谷中分水界? / 尾根を離れる分水嶺の不思議/ 栗柄峠の河川争奪/ 本州で一番低い石生の谷中分水界
第3日 断層を横切る分水嶺
地質学者のちょっと戯言/ 断層がつくった直線状の地形/ リニアメントのオンパレード/ だから断層は面白い/ 断層線谷分水界に挟まれた凸地形/ 本流と支流の争奪合戦?
- コラム ちなみにちなみにチバニアン
第4日 標高がそろう峠の不思議
もれなくセットの片峠と争奪の肱/ 片峠を越えない侵食フロント/ 遠く離れた片峠の高さがそろうのは偶然?/ 第四紀の火山は要注意/ 地質図から読み解く太古の地形/ 地層の曲がり具合は傾斜が鍵/ 300万年前の大地は真っ平/ 両峠の手前で流れの向きを変える川/ 高さのそろった峠たち/ 尾根も峠も高さがほぼ一緒/ 高い山並みを通過しない分水嶺/ 標高1000mの片峠たち/ なだらかな地形に秘められた太古の湖
- コラム 石の声を聞く
第5日 分水嶺を越えられない
高所に残された谷中分水界/ 河川の争奪が始まらない/ 悩ましい火山地帯に突入/ 河川争奪が起こる三つの条件? / 分水嶺を変えてしまう火山噴火/ 古蒜山湖の誕生/ 湖はどこからあふれ出したのか? / 分水嶺は転換したのか? / 曲がる角には片峠/ 河川争奪は繰り返される? / 分水嶺はやっぱり気まぐれ
- コラム 地質の研究 地形の研究
第6日 匍匐前進する分水嶺
中国山地の核心部を通過する分水嶺/ 誰も気が付かない小さな片峠/ 岩石の違いが地形の違い/ 峠がフルセットの道後山高原/ 分水嶺は中国山地から吉備高原へ/ 秘境駅のある日本一の谷中分水界/ 吉備高原は谷中分水界のラビリンス/ 山がないのに上り下り
第7日 最大の難所の世羅台地
準平原を通過する分水嶺/ 世羅台地はくしゃくしゃのアルミ箔/ 自然に見られるフラクタル/ 人には小さすぎる地形の起伏/ さらなる難所は世羅台地/ 谷中分水界が目白押し/ お好み焼きはソースが決めて/ 人には見えない大地の起伏/ 踏み石を伝って渡る分水嶺/ 3番目に低い谷中分水界/ 三次盆地を丸く縁取る分水嶺
- コラム 私が地質模型をつくるわけ
- コラム 地学オリンピック 勉強と研究の違い
第8日 川は川を奪わない?
分水嶺は中国山地へ再突入/ 地形図に載らないマニアの聖地/ 河川争奪、深まる疑惑/ 高さがそろう谷中分水界の不思議/ 山陰と山陽を分ける陰陽分水嶺/ 滝山川源流域を大きく迂回する分水嶺/ 季節のレジャーは地形のおかげ/ 中国山地の分水嶺は少し高いお盆の縁/ 八幡盆地は中国地方の高野山/ 侵食フロントは分水嶺を乗り越えない/ 河川争奪は起こらない/ 分水嶺で停止する侵食フロント/ 争奪する河川と争奪しない河川/ 平らな谷を横切る渓谷と分水嶺/ 争奪しない理由が鍵
第9日 分水嶺をつなぐのは谷中分水界
いよいよ旅の最終日/ 谷中分水界は上流のない尾根/ 仏の峠は生まれた時から片峠/ 分水嶺に守られ続ける平坦な地形/ 旅の終着地、下関はもうすぐ/ 徳佐盆地の南の端の双子の片峠/ 分水嶺の防護壁/ 至る所に河川の争奪説/ どこにも見当たらない河川の争奪/ 争奪ではなく崩落? / どこもかしこも谷中分水界/ 下関が見えてきた/ 峠の下のトンネル工事は難航/ 断層に起因する片峠/ 八道盆地を縁取る分水嶺/ 海の気配が謎を解く鍵/ 答えは目の前に見えている/ 旅のゴール、下関に到着/ 海が合流する場所で役目を終える分水嶺
第2章 分水嶺の謎
1 関門海峡の謎 本州で最も低かった分水嶺
なぜ関門海峡はできたのか/瀬戸内海が広大な平原だったころ/関門海峡は本州で最も低い分水嶺だった/関門海峡の誕生を模型で再現
2 谷中分水界は海峡だった
谷中分水界の誕生/ 陸を削る海/ 隆起速度はさじ加減
3 隆起の原因は東西圧縮
大陸と海洋に分かれている地球/ 大陸の高さはどう決まる?/ 隆起の原因は東西圧縮/ 東西圧縮の謎は模型が解いた/ 日本海溝移動説
4 中国地方は瀬戸内海だった
過去にさかのぼれば海の底/ 中国地方の過去を復元する/ 石生海峡と胡麻海峡/ 三次盆地はミニ瀬戸内海だった
5 謎の答えは地形が語ってくれる
分水界のつながりは海峡次第/ 分水嶺の気まぐれの理由/ 片峠はいつできた?/ 定高性のある尾根の謎/ 大山脈に刻まれた海底の記憶
6 盛り上がり続ける中国山地
鍵は隆起運動/ 内陸部ほど難しい隆起量の推定/ 中国山地の標高の違いは隆起量の違い
7 海から生まれた中国地方
大海に誕生した分水嶺の子どもたち/ つながり始めた分水嶺/ 分水嶺の首飾り/ か細い腕を精一杯伸ばして/ 島列の成長/ 標高がそろう谷中分水界の謎/ 先につながった吉備高原/ 幻の分水嶺
8 分水嶺のあみだくじ
隆起? それとも沈降?/ 分水嶺のあみだくじ
おわりに――私の分水嶺
追憶の分水嶺/ サイエンスの種子/ サイエンスはロマン/ 自然の目線/ キャンバスは海/ 旅の終わりは新たな旅の始まり/ 縁をつなぐのは谷中分水界/ これからも続く私の分水嶺