電子出版サイト開設にあたり④ 従来の出版と電子出版のビジネスモデルの比較
皆さん,こんにちは。技術評論社の馮です。
今回は,既存の出版ビジネスモデルと電子出版のビジネスモデルについて比較してみます。
既存の出版ビジネスモデル
従来の紙の出版モデルでは,
- 出版社
- 執筆者
- 編集制作会社
- デザイン会社
- 関連企業(広報など)
- 印刷所
- 取次
- 書店
といったプレイヤーがいて,各プレイヤーたちがそれぞれの立場で関わり,最終的に読者の手元に書籍・雑誌が届きます。
ポイントは,出版社と書店の間に取次が介在すること,そして出版物が一般的には委託販売(返品条件付き売買)という販売形式を取ることです。これにより,出版社は実際には売れていない市場在庫を含めて売り上げを計上でき,書店は在庫を気にすることなく販売できます。
つまり既存の出版ビジネスは,取次が金銭的な部分を担保する形で,出版物の流れに合わせたフロー型のビジネスモデルになっているのです。
電子出版のビジネスはストック型
一方,電子出版の場合はどうでしょうか? 第2回で紹介したプラットフォーマーや,いわゆる電子取次といったプレイヤーがいるわけですが,ここで有する機能は,各デバイスに向けた配信,コンテンツの管理といったものであり,金銭面の担保は原則行われません。これは,電子出版に限らず,Webのマネタイズビジネスの多くが売れたら売れた分だけ溜まっていくストック型が多いからであり,既存の出版ビジネスと比較して最も異なる部分になるわけです。
また,販売に関しても,通常の出版の場合は,再販売価格維持という制度が適用されるため,原則定価が変わりません。一方,電子出版になるとその制度から解放されるため,値段変化によるマーケティングなどが実現できるわけです。
電子ならではのビジネス的な特徴は,買い手である読者の皆さんにはもちろんのこと,出版社や執筆者などにもさまざまな影響を与えることになります。
現在の電子出版ビジネスは黎明期のため,試行錯誤しながら,商慣習の構築が行われている状況です。
既存の良いところを踏まえつつ,新たなビジネスモデルを構築
今,電子出版は大変注目を浴びています。そして,それを取り巻く状況が日々変化・進化している状況です。中でも,技術的な部分の進化スピードは目覚しいものがあります。一方で,ビジネスという点では,第1回でお話ししたように,日本においては携帯電話コンテンツ以外の市場はまだまだ出来上がっていません。
その理由の1つが,先ほど述べたような,既存の出版モデルと電子出版モデルの違いを明確にせず,ときに混在させてしまっているからだと考えます。
技術評論社では,新たな電子出版ビジネス市場を形成すべく,販売方式に加えて,執筆者に対する印税方法などを検討した,新サービスのリリースを行います。
リリースまで,もう少しだけ,お待ちください!