2014年のGoogle I/Oで発表された、企業内で私物のAndroidデバイスの利用を促進するサービス「Android Work」が「Android for Work」と名前を変えて正式に発表されました。
ビジネス用途では浸透していない
iOSデバイスがビジネス用途に使われている事例は多く耳にします。
ビジネス用途のタブレットは、iPadの独占状態とも言えますが、Appleは、より盤石な体制を築くべくIBMと提携を行い「IBM MobileFirst for iOS」をリリースしています。これは、AppleのiOSに関するソフトウエア技術とIBMのビックデータを解析などのクラウド技術が組み合わさってできたアプリで、ビジネスユーザが対象です。
一方のAndroidは、私物のデバイスを使っているのを見かける程度で、ビジネス用途での活用事例はほとんど聞くことがありません。また、ビジネス用途ではWindowsタブレットも猛追しています。
Android for Workとは
こうした状況で、Android for Workが発表されたので期待がかかります。
これは、セキュリティとマネージメント、アプリケーション、生産性の4つの切り口で構成されているので、順にみていきます。
セキュリティとマネージメントは、業務用のプロファイルをデバイス上に作成することで、個人使用と業務使用のデータが完全に分離されて、同じデバイスで個人用と業務用のアプリが使い分けられます。業務用プロファイルの作成は、複数アカウントが作成できるAndroid 5.0 Lollipopからのサポートになります。
企業の情報管理者は、社内に持ち込まれるデバイスは、管理下に入れることになります。この時に管理の対象となるのは業務用プロファイル下でアクセスできるデータとアプリのみで、個人用のアプリやデータに対してはアクセス権限はありません。また、デバイスが集中管理できるように管理コンソールが提供されます。こうした仕組みをサポートする企業として、VMwareやBlackBerry、CiTRiX、SAPなどそうそうたる企業の名前が挙がっています。
アプリケーションは、企業が社員向けに専用アプリストアを提供できる手段「Google Play for Work」が提供されます。企業向けで考えると専用アプリだったり、企業内システムとの動作検証を済ませたアプリを配布することがあります。Androidは、Google Play経由でなくてもアプリをインストールできますが、この枠組みが使えるようになれば、セキュリティ設定を変更する必要もありませんし、最新版のアプリ配布やバージョン管理が容易になることが期待できます。
生産性の向上は、Microsoft ExchangeやIBM Notesなど企業内で使われているグループウェアにも対応するアプリが提供されます。もちろん、Google AppsもGoogle Apps for Workとして提供されます。これ以外にもセキュアバージョンのChromeも提供されます。
Android for Workは、端末内のデータやアプリ分離、また、これらを管理する仕組み、そして、企業内で使われる情報インフラへの対応と考えるところは、全方位で対応したサービスです。Androidデバイスに限れば、これだけ広範囲な取り組みを提供しているところはなく、導入を検討する際には大きな決定要因として働くかもしれません。
Googleは、Android for Workを足がかりにして、企業内でも存在価値を高めていくつもりなのかもしれません。余談にはなりますが、企業向けには、これ以上駒がないようにも見えるので、Googleが他の隠し球を持ってはいないのかと勘ぐりたくなるところです。
2015年はBYODが開花する年になるか?
会社支給のデバイスを使うのも良いのですが、使い慣れたデバイスも持ち歩きたいので、似たようなものを2台持ち歩く必要があります。こうなると、持ち歩くこと自体がストレスです。私物のデバイスを職場に持ち込み、業務に活用するBYOD(Bring your own device)が騒がれはじめたのは、このような背景だけではありませんが、キーワード先行だった状況から抜けだし、ようやく腰を据えて取り組める状況になってきました。
BYODを実践するキッカケとして、今回発表されたAndroid for Workだけではなく、Microsoftの功績も大きく関係するはずです。AndroidでOfficeが使えるようになったことは、手持ちの端末を仕事でも活用しようと考えるキッカケになった方も多いはずです。ようやくインフラとアプリがそろったので、2015年はBYODが開花する年になるのかもしれません。
今週は、このあたりで。また、来週。