今回もGoogle I/Oで発表された内容に迫ります。
前回はAndroid Mをご紹介しました。今回は、IoT向けの新プラットフォーム「Project Brillo」を取り上げます。Google I/Oでは発表のみで、開発者向けのプレビュー版の公開が第3四半期(7から9月)にリリースされることになっています。
Nest Labsのチームが開発を進める
Brilloは、突如登場したように見えますが、Googleが2014年1月に32億ドルで買収したNest Labsのチームが中心になって開発を進めています。Nest Labsは、iPodの父と呼ばれる元Apple上級副部長のトニー・ファデル氏が同僚と2010年に創業した企業で、2011年に発表した家庭用サーモスタット「Nest」で注目を集めました。
Brilloは、Androidをベースとしており、低スペックのハードウェアでも稼働することで、あらゆるモノに組み込めることを特徴とします。これだけであれば、既存の組み込みOSと大差はありませんが、Brilloを搭載するモノ同士やスマートフォンとはシームレスに接続されて、簡単にセットアップできるとされています。
モノ同士やスマートフォンとの通信レイヤーは「Wave」と呼ばれ、JSONペースでプロトコル記述してAndroidだけではなくiOSもサポートします。また、JSONをベースにすることで、多くのアプリで簡単に取り扱うことができるはずです。また、インターネットへ抜けていくのも面倒な話ではなく、ネットごしにBrillo端末をコントロールする仕組みを容易に構築できるはずです。
メッシュネットワークのThreadもサポート
Brilloは、無線規格としてWi-FiとBluetooth 4.0をサポートします。
Wi-Fiは、既存のネットーワークとの接続に、Bluetooth 4.0は、スマートホンとの接続に使われるはずです。Bluetoothは圏内にスマホが入ったら動作すると言った使い方も可能なはずで、こうした特性を使った機器が登場してくるのが今から楽しみです。
Brilloは、メッシュネットワーク規格の「Thread」もサポート予定に入っています。
Threadは、Google、Samsung、ARM、Freescaleなどの7社が提唱する新たな省電力無線ネットワーク規格でIoT機器で使われることが想定されています。Threadは、2014年7月に発表されていますが、いまだ対応機器がありません。おそらくBrilloが初の対応機器となるはずです。
さて、IoT機器がメッシュネットワークに対応することで、どういったメリットがあるのでしょうか。温度計とエアコン操作のIoT機器があり、これらが連動して動作する場合を想定してみます。
温度計は、各部屋と屋外に設置されることになるはずです。エアコン操作も各部屋に設置されます。これらが、ひとつのルータを通して通信することも考えられますが、多くの場合は、無線ネットワークの電波が届かない場所ができるので、アクセスポイントとして複数のルータの設置が必要です。屋外に設置する温度計は、無線ネットワークの電波が届かないケースは容易に考えられます。
連動するIoT機器が複数のルータの下にぶら下がると、ネットワークを透過させる必要があり、統合管理するルータが必要になります。
これが、ルータ同士が通信できるようになれば、統合管理するルータは必要なくなります。また、インターネットへ接続する場合も接続可能なルータから抜けていけば良いので、柔軟かつ信頼性の高いネットワークを構築できることがメリットです。
IoTが浸透すればアプリはモノになるか
筆者はIoTが浸透してくれば、今あるいくつかのアプリは、モノになると考えています。
スマートフォンのような汎用プラットフォームで動作するアプリが専用の箱を手に入れることでモノになるイメージです。これが適用しやすいのはヘルスケアアプリです。よくある歩数計や睡眠計アプリなどは、スマホで使うよりも用途に適した形態をしていた方が使い易いはずです。Brilloが何処まで狙っているかは分かりませんが、Androidベースであることから将来的にはこうした展開も期待できるかもしれません。また、Androidをベースとすることで、ソフトウェアのバージョンアップをネットワークを使い自動で行ったり、スマホを通じてPlayストアから最新版をダウンロードするといった使い方も可能になるかもしれません。
今週は、このあたりで。また、来週。