新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。年明け最初は、昨年のことですがGoogleのPixel Cに関する話題が面白いので取り上げます。
Pixel Cには、Chrome OSが搭載される予定だった?
テック系のニュース・情報サイト「Ars Technica」によれば、Googleが2015年に発売した2 in 1デバイス「Google Pixel C」は、Chrome OSが搭載されて発売される予定だったというエントリを公開しています。
Androidを搭載した理由は、2 in 1デバイス用のChrome OSが完成しなかったためとしています。
このエントリによれば、Pixel Cは発売までに2度プロジェクトがキャンセルされて、紆余曲折を経て発売にこぎ着けたとされています。私見も交えながらですが内容をご紹介します。
「Project Athena」のキャンセル
2 in 1デバイス用のChrome OSは「Project Athena」として開発が進められていました。このプロジェクトは、2014年7月に新たなユーザ体験をもたらすことを目的としているとして明らかにされていました。
Project Athenaには、同年のGoogle I/Oで発表された「Material Design」が採用されて、Androidと共通性のあるカードメタファのユーザインターフェースを持つと推測されていました。また、スワイプなどのタッチ操作やオンスクリーンキーボードなどタブレットで使うことを想定した機能が搭載される予定だったとされています。たとえば、画面の下端から上にスワイプすると、オーバービューモードに入り、サムネイル表示されたアプリを見ながら切り替える仕組みや、画面の左端からスワイプすると画面分割する機能など、タッチ操作を試していたようです。
こうした内容を聞くと思い浮かぶのが「Windows 8」です。
Windows 8では、一気にジャンプアップして先進的なタッチ操作が採用されました。これだけを見ればよくできていますが、時間をかけて熟成してきたマウスやキーボード操作と融合する部分がなく、異なる操作概念を1つに収めた仕上がりでユーザには不評を買いました。Windows 8は「壮大なベータ版」と揶揄されたこともあって、Windows 10ではタッチ操作を前面に押し出すつくりではなくなりました。
こうした状況は、Project Athenaのメンバーも知っていたはずです。Chrome OSのユーザインターフェースは、画面下にタスクバーがあり、左下にあるアイコンをクリックすると、スタートメニューのようなアプリランチャが表示され、Windowsと似ています。このユーザインターフェースに、タッチ操作をうまく融合しなければ、Windows 8と同じ道を歩むことになるとProject Athenaのメンバーは意識したはずです。
Windows 10は、異なる操作概念を1つに統合する方法として、タッチ操作に最適化したユーザインタフェースに変化する「タブレットモード」を設けています。Project Athenaは、このようなアイデアをヨシとしなかったのか、それともタッチ操作とマウス・キーボード操作の統合はないと判断したのか、プロジェクトのスタートからわずか5ヵ月で中止となりました。
「Frankenboard」のキャンセル
次は、Chrome OSとAndroidの不足部分をお互いで補足するために、デュアルブートを可能にする「Frankenboard」で、2015年3月頃から検討がはじまりました。
このころからWindows 8とAndroidのデュアルブート端末が多く登場しているので、これに触発された可能性もありますが、その逆で、これらはFrankenboardからヒントを得て登場した可能性もあります。こうしたデュアルブート端末は、一般的にわかりづらいと判断されたのか2015年7月にプロジェクトがキャンセルされました。しかし、開発者の目線で見れば開発端末を複数所有する必要がなくなるので、ありがたい存在となったかもしれません。
Android 6.0を搭載してようやく出荷
2015年9月のGoogleのイベントでPixel Cが発表されました。これは、FrankenboardのAndroidだけが残されて世にでることになります。この発表はFrankenboardのキャンセルから2ヵ月後となっており、この時点でパフォーマンスに問題を抱えていたとされています。2ヵ月ほど経った12月上旬に端末は無事発売されましたが、開発チームは目まぐるしく働いた成果であることは違いありません。
このように、Pixel Cは何回かの山を乗り越えて発売にこぎつけており、Googleが手がけた端末の中でもおもしろい背景を持っています。Pixel Cは店頭販売がないので、実物に触れる機会は少ないと思いますが、機会を得たらこうした背景を思い浮かべてみるとおもしろいかもしれません。
今週は、このあたりで。また来週