Googleがクラウドゲームサービスを発表
3月20~3月22日に米国のサンフランスシスコで開催されたGDC 2019で、Googleはクラウドゲームサービスの「Stadia」を発表しました。
専用ゲームバッドを使う必要がありますが、これ以外は特定のハードやプラットフォームに依存しないクラウドサービスで、Google ChromeがあればPCやスマートフォンで使えるだけではなく、同社が販売するChromecastにも対応するのが特徴です。
プレイヤーあたりのハードスペックはPS4以上?
プレイヤーひとりにクラウド側で割り当てられるハードウェアは、遊ぶゲームによってスペックが変化すると言われていますが、GPUはRadeon Proを採用しています(AMDの基調講演で同社のCEOであるLisa Suがトピックとして発表しています)。
また、これの演算能力は、10.7 TFLOPSにも達すると発表されており、PS4 ProやXbox One Xをも凌ぐ性能です。CPUは動作クロックが2.7GHzになり、Hyper ThreadingやAVX2命令をサポートします。メモリは16GBで484GB/sの速度を誇ります。
このようなハードウェアを使い4K HDR 60fpsで映像を出力できます。将来的には8K 120fpsの映像出力もサポートするとしています。使われているOSは、Linuxベースで、グラフィックスAPIはVulkan、UnityやUnrealなどのゲームエンジンもサポートします。
必須ハードウェアの専用のStadiaコントローラーは、見た目は普通のコントローラーに見えますが、これをPCやスマホと接続して使うのではなく、これ単体がWi-Fiに接続します。よってユーザーからの入力を直接データセンターに送信する機能も持っています。こうすることで、プレイヤーの入力遅延を無くそうという考えです。
他が追従できないバックボーン
ゲームの配信には、Googleが持つ世界中のデータセンターを使います。
Stadiaが類似サービスのPlayStation NowやgeForce NOWと決定的に違うところは、Googleが持つバックボーンを使うことです。Googleは、200カ国以上に展開するデータセンターを独自の専用ネットワークで結んでおり、インターネットに大量のトラフィックを流すことなく高速かつ低遅延の通信を実現しています。
インターネットを使うゲーム配信サービスは、帯域幅の制約や通信遅延が付きもので、これがサービスの課題ですが、Google独自の強力なバックボーンを利用することで回避します。今のところ、これに追従できるサービスプロバイダーは他にありません。
クラウドサービスだからこその機能
Stadiaには、クラウドサービスだからこその機能があります。
たとえば、「State Share」はプレイ中のゲームの状態を他のプレイヤーと共有できます。本当に楽しいかはさておき、他のプレイヤーに苦手なステージをクリアしてもらうことが可能になったり、ゲームが盛り上がるステージや状態をセーブして、他のプレイヤーが遊べるように共有できます。
Crowd Playは、YouTubeのゲーム実況中に表示されている「一緒に遊ぶボタン」を押すと、配信者とチャットするような気軽さで一緒にゲームができます。一緒に遊べるボタンは、通常リンクやEmbedとして扱えるほか、メールやSNSにも追加できます。
YouTubeやWebとシームレスに連携できる機能は、これまで一方通行だったものが双方向になるので、ゲームとネットサービスの関係性を変える可能性を持っています。また、YouTubeに限れば、オーディエンスを巻き込んだ作品づくりが可能でゲーム配信の考え方を変えるものになるはずです。
もうひとつ、Stream Connectは画面分割のマルチプレイ機能です。
通常であれば、プレイヤー数が増えるほどハードウェアへの性能要求が厳しくなりますが、Stadiaでは分割した画面単位で仮想ハードウェアを割り当てることが可能で、性能面でのデメリットが発生しません。これは、Googleが持つ強力なデータセンターリソースをうまく活かした機能です。
買い替えサイクルがなくなるだけではなく、売り方も変わる
これまで、ゲームプラットフォームを持つメーカが主導をとって、数年に1回の買い替えサイクルを作ってきましたが、Stadiaによってなくなる可能性があります。
これだけではなく、PCのスペックがゲームの快適性にも関係し、大きな初期投資が必要でしたが、Stadiaでは、快適にプレイできる環境と共に月額課金での販売も考えられて、ハイスペックなPCが必要なゲームも気軽に楽しめる可能性があります。
とは言え、主役は環境ではなくゲームコンテンツなので、どう評価されるかはわかりません。夏頃には、より詳しい情報が公開されます。サービス開始は、米国、カナダ、英国、欧州の一部からとされています。
今週は、このあたりで、また来週。