平成を彩ったモバイルOSたち(前編)
本稿が公開時の元号は平成ですが、次回が公開されるタイミングでは令和になります。Androidに限らず、平成には多くのモバイルOSが登場したので、前編・後編の2回に分けてモバイルOSをふり返ってみます。
Newton OS(1993年~1998年)
Appleが開発したPDA向けのOSです。ペンを使い、画面のどこに書き込んでもよい手書き文字認識を搭載していました。また、単語をスクラッチすることで削除したり、丸で囲むことで選択するなど、紙と鉛筆の関係をモチーフにする操作方法が特徴です。
Newton OSは、当時は先進的かつ意欲的なコンセプトでしたが、発売当初は文字認識の精度が低くキビキビと動作しなかったために不評でした。これらは、Newton OS 2.1を搭載するMessagePad 2000で大幅な改善が行われましたが、業績にインパクトを及ぼすほどではありませんでした。
ジョブズのApple復帰後は、分社したNewton Inc.を再び吸収して、1998年2月にNewton OSの開発終了がアナウンスされます。熱狂的なNewtonファンは、AppleはiPhoneを発売するまで、MessagePadを使い続ける人がいたのは有名な話です。
Palm OS(1996年~2007年)
Newton OSと入れ替わるよ形で登場しており、一時は世界を席巻するほどの勢いがありました。Palm OSには、Graffitiと呼ぶ手書き入力を採用していたので、起動時間などが短く軽快な動作と使い勝手の良さが特徴でした。どれもアンチNewton OSと言った内容です。
アプリはPalmwareと呼ばれており、開発言語はC/C++が使われました。
筆者もCodeWarrior for PalmOSを使ってアプリを開発したことがあります。初期のPalm OSは、現在のモバイルOSと比較すると名ばかりで、関数の集合体のようなもので非常にシンプルでした。また、ファイルシステムが連続したメモリ空間のように見える造りで、当時は驚いたことが記憶に残っています。
「Zen of Palm」というデザイン哲学も当時の筆者には新鮮でした。
たとえば「ゴリラはどうやったら飛び方を学べるだろう?」という問いかけに対して「ゴリラの本質を理解する必要があります」との答えがあります。PCでは、機能が多い方が良くて、これがユーザのメリットにもなりました。しかし、モバイルはPCとは別物で同じ考え方は通用しない、ユーザーがどのような使い方をするのか把握・理解して、デザインをフォーカスすべきだと説明しています。
これは、ハードウェア・ソフトウェアのリソースが限られる中で、どうすれば快適な環境を作り上げることができ、ユーザーの満足度を上げることができるかを説いています。15年以上前の考え方ですが、いま読んでも面白いのでゴールデンウィークの最中にでも読んでみることをオススメします。
Palm OSはモダン化に手間取り、いちから開発したwebOSが2009年に登場します。
これは、当時としては先進的な設計で、HTML5、JavaScript、CSSなどWeb標準技術を使ってアプリを開発しました。この後も同じ設計を採用したのは、後編で取り上げる予定のFirefox OSのみです。しかし、webOSも商業的に成功はせず、現在はLGがスマートTV用OSとして使用するのみです。
Symbian OS(1998年~2013年)
日本では採用端末の発売が少なかったので、メジャーな存在ではありませんが、最盛期は60社以上がSymbian Foundationに参加するほどの大所帯で、多くのメーカで採用されていたモバイルOSです。
いまは見ることもなくなりましたが、Symbian OSを搭載するNokiaのCommunicatorシリーズは、キーボードを搭載したクラムシェル型の端末で当時は憧れの存在でした。
余談にはなりますが、Indiegogoで出資を募集していたCosmo Communicatorは、Communicatorシリーズが元ネタです。
2010年ごろからiOS・Androidに押されて、次第に勢いがなくなりはじめます。
2011年2月には、当時、Symbian OSを持っていたノキアは、Microsoftと提携してWindows Phoneへ移行し、Symbian OSへの投資をしないことを発表して事実上の終了となります。
LinuxベースのモバイルOS「MeeGo」もノキアがプロジェクトを主導していましたが、これもノキアがWindows Phoneへ移行したことで、唯一の搭載端末「N9」が世に出たのみとなりました。Jollaが開発するSailfish OSは、このMeeGoに関わっていたチームが2011年から開発しています。
今週は、このあたりで、また来週。