Huaweiが独自OS「Harmony OS」を公開
8月9日、Huaweiが中国の東莞市で開催した「Huawei Developer Conference(開発者向け会議)」で、同社が開発を進めている独自OS「Harmony OS」を発表しました。
この会議は8月9日から11日まで開催されており、グローバルの開発者を対象としています。発表をこの場に選んでいるので、Huaweiは自信を持っているのと、今後、自社製品へ採用する意気込み、そして、不透明な状態が続くGoogleのサービスが使えなくなった場合の対処の準備ができていることをアピールする意味があるはずです。
公開されたOSは、英語名では「Harmony OS」と言う名前が付けられ、中国名では「鴻蒙(HongMeng)」の名前が付けられています。このOSは、スマートフォンだけではなく、ウェアラブルデバイス、スマートテレビ、スマートスピーカ、車載機器などの用途に使われることを想定して開発されています。
発表前の7月の業績発表で、Huaweiは独自OSの存在を認めました。
これは、コンパクトで低遅延の組込み用途向けOSで、スマートフォンでの利用は想定されていないとしながらも、独自OSとして採用する可能性をほのめかしていました。今回の発表で、Androidの代替えOSとして開発を進めていく決断をしたようです。
Harmony OSとは?
Huaweiは、Harmony OSを「Androidよりも高速で安全なOS」として紹介し、将来のバージョンでは、HTML5、Linux、Android向けに開発されたアプリのすべてが実行可能になると説明しています。
この将来のバージョンがポイントで、先でも触れたようにもともとは組込み向けOSなので、よく知るAndroidのような重厚な実装はされていないようです。Huaweiが「いますぐAndroidを置き換えるOSではない」と説明するのは、こうした理由もあります。また、サードベンダがHarmony OSで動作するアプリを開発するために、C/C++、Java、Kotlinといった開発言語のサポート、SDKの提供も行うとしていますが、これも今後の話です。
最初にHarmony OSが搭載されるデバイスは「Honor Vision Smart TV」と呼ぶスマートTVです。これからも重厚な実装のOSではないことが想像できます。
Harmony OSを大々的に発表する理由
なぜ、Androidよりも見劣りするHarmony OSを大々的に発表するのか理由を考えてみます。
発表会でHuaweiは、Harmony OSは「世界に調和をもたらす」としたのは、意味深い表現です。
米中の貿易摩擦の末に禁輸措置が行われて、Huaweiの端末でGoogleのサービスを搭載するAndroidが使えないのは、Huaweiの立場からみれば調和がとれていないと考えられます。いまは小康状態となっていますが、今後の先行きは不透明です。
よって、Androidが使えなくなったときのバックアッププランのOSを持ち、これの具体像と将来の展望を全世界に向けてアピールすることで、Huaweiの立場から見れば、調和をもたらすキッカケになるかもしれません。
また、米国政府に対しても対抗手段を持つことを暗に示しているのと、これを使った何らかの変化を狙っている可能性も考えられます。
発表会では再三、Androidに対抗するものでないとアピールし、スマート時代の到来を見据えて、すべてのデバイスで同じOSが必要だと意識して開発を進めていたもので、既存のモバイルOSとは競争関係にないとしています。これは矛盾しているようにも思えますが、OSビジネスは儲かるものではないので、これでビジネスをするつもりはないはずで、Harmony OSは、政治戦略的に有利な立場にいるうえで必要不可欠なものとして考えられているようにも思えます。
Huaweiは、世界に対して新しいOSと構想を披露し、SDKの提供も約束をしたので、開発が粛々と進められていくはずです。これの完成度が高くなるほど、Huaweiに有利な状況になります。唯一、今回の中で検討がないのは、開発者からの支持が得られるかという点です。現代OSは、周辺のエコシステムを含めての評価になるので、これに対してHuaweiがどのような戦略を持っているのか気になるところです。
今週は、このあたりで、また来週。