GoogleがFitbitを21億ドルで買収することで合意しました。今回の買収で、長らく停滞しているWear OS by Googleへのカンフル剤となるのか考察してみます。
Google、Fitbitを買収
11月1日、GoogleがFitbitを約21億ドルで買収することで合意したと発表しました。
買収に向けては、規制当局とFitbitの株主の了承を得る必要があり、これらに関わる手続きが完了するのは来年になると予想されるので、Wear OS by Googleのフィットネス機能にFitbitのノウハウは投入されるのは、まだ先の話になるはずです。買収発表の中で触れていませんが、Fitbitは、企業向けに社員の健康促進ツールとして売り込みをしています。面白い取り組みなので、これが今後、どうなるのかも気になります。
Pebbleが歴史になるタイミング
Fitbitと言えば、Pebbleを2016年末に買収しました。買収額は4,000万ドルでした。
Fitbitは、Pebbleの資産を活用して、Fitbit OSや独自のアプリストアを展開しています。エンドユーザーからは目に付かないアプリ開発環境やOSのAPIに、Pebbleの息吹が残ると感じる部分はありますが、Wear OS by GoogleやPlayストアを持つGoogleが、それらを継続することは考えられないので、Pebbleは、これで歴史のページだけに残るものとなりそうです。
Fitbitのスマートウォッチは、Pebbleの資産を活かした製品とは言えず、買収後に発売されたFitbit Ionicには、落胆したPebbleユーザーも多いはずです。この後、Fitbit Versa、Fitbit Versa 2で盛り返しましたが、Pebbleにあった主張しない「ほどよさ」を持つ製品は登場していません。
ようやく純正スマートウォッチが登場するか
Google純正のスマートウォッチ「Pixel Watch」のうわさ話は、出たり消えたりしています。Fitbitの買収をキッカケにして、Fitbitが持つフィットネストラッカーのノウハウがWear OS by Googleに活かされれば、今年1月に4000万ドルで得たFossilの知財と人材を組み合わせることで、ようやくApple Watchの後ろ姿を見ることができます。
しかし、この布陣での取り組みは始まったばかりで、2020年には成果がでない可能性もあります。来年のGoogle I/Oで、取り組みでが公表されれば、待ちに待った純正スマートウォッチの登場になりますが、もうひと工夫ないとApple Watchの後ろ姿を見続けるだけになりそうです。
目に付かないところで健康を促進する
そのもうひと工夫となるのが、Googleが提唱する「アンビエントコンピューティング」なのかもしれません。
この考えにもとづいて開発された製品は「生活を邪魔することなく、日常に役立つように設計された製品を指しています」とGoogleは位置づけています。こうした考え方は、Pebbleが持っていた「ほどよさ」にも通じるところがあり、フィットネス関連のガジェットとも相性は良さそうに思えます。
Fitbitのフィットネスバンドは、コモディティ化した製品で多くの人が当然のように使っているので、生活を邪魔するほどではありませんが意識して使う必要があります。ただ、先駆者の製品だけあり、生活の中に溶け込み健康促進ツールとして機能することに感心します。これをアンビエントコンピューティングの切り口で考えれば、そのあり方や収集したデータの分析とユーザへのフィードバック方法は、まだ進化の余地がありそうです。
たとえば、腕につけるバンドではなくて、Pixel Budsのようなイヤホンにフィットネス機能を搭載する可能性も考えられます。これに搭載すれば、装着した時に昨日のサマリと今日目標を案内して、必要であればコーチングしてくれれば、ユーザはフィットネスガジェットを使っていることを意識することもありませんし、コンピュータが持つ能力の恩恵にあずかることができます。フィットネストラッカーは、単体で存在するものではなく、何かと統合される方が自然なのかもしれません。
Fossilに続きFitbitも買収しているので、まずは、スマートウォッチだと思いますが、Fitbitのノウハウで得たフィットネスデータを、分析・活用して生活に役立つ製品が登場することをGoogleに期待したいです。
今週は、このあたりで、また来週。