Googleが一部の端末に向けて、アンビエントモードをリリースします。これは、Googleが目指すアンビエントコンピューティングの一環です。
アンビエントモードが一部の端末向けに配信
Googleは、Android 8.0以降を搭載する一部の端末にアンビエントモードをロールアウトするとTwitterに投稿しました。
これは、IFA 2019でGoogleアシスタントの新機能として公表されたものです。
11月27日のツイートで「アンビエントモードは次週から利用可能になる」とされているので、12月の1週目から順次使えるようになります。対象端末は、SonyやNokia、Transsion、Xiaomiのスマートフォン、そして、Lenovoの一部のタブレットです。この中にPixelは含まれていません。
アンビエントモードは、端末の充電中にディスプレイに情報表示する機能です。わかりやすく言えば、AmazonのFireタブレットに実装されているShow Modeのようなものです。
表示されるのはGoogleアプリが扱うような内容で、時刻、温度、メッセージ、天気、飛行機の搭乗予定などです。情報表示以外に、写真をスライドショーで表示する「フォトフレームモード」で動作させることもできます。また、画面下にはスマートホーム用の操作パネルも表示されます。
ホーム画面で、左にスワイプすると情報が表示される機能があります。これは、間違って操作した時に表示される画面といった扱いですが、アンビエントモードは、これの焼き直しとも言えるようなもので、仕組み以上に利用局面が限られる印象はあります。
ユーザの意識を変える方が大変
「充電中=休ませる」の意識が筆者はあって、充電中の端末は部屋の隅の目立たないところに置いてあり端末に意識をくばっていません。同じような方もいるはずで、充電中に動作するアンビエントモードを、うまく機能させるにはユーザーの使い方から変化をもたらす必要があります。
Googleアシスタント部門で製品マネージャのArvind Chandrababu氏は、アシスタントの最終目標を「ニーズの予測やタスクを迅速かつ簡単な遂行を支援することで、これを実践するには、これまでのアプリケーションベースからインテントベースに移行すること」としています。
ユーザは何かをするために、ホーム画面からアプリを起動した後で必要な操作ステップを行い目的を達成します。前半のアプリを起動する操作は、目的達成のためには無くてよい操作ステップですが、スマートフォンが当然のものになってからは、これの是非を議論することもなく、あたりまえのように操作しています。インテントベースへの移行は、これを変えることでもあり、ユーザにとっては慣れ親しんだ作法を変えるほどのメリットがあるのか分かりづらいです。
アンビエントモードを活用する充電器で、メリットをわかりやすく提示すれば、違った見方にもなるかもしれないと考えましたが、Pixel 3と同時に発表された「Pixel Stand」は、残念ながら評価はされていません。そもそも、充電中は使わない時間と考えている人が多いのかもしれません。
過去にもありました
時代は繰り返すで、アンビエントモードのように、既存の概念を変える取り組みが過去にもあります。
たとえば、1992年ごろAppleが中心になって開発していた、ドキュメント中心の操作を実現する技術「OpenDoc」がそうです。これは、まっさらなウインドウの上に、テキストや画像、表などを部品のように張り込んでいきます。この部品が従来のアプリケーションとなり、ユーザーからみれば目立たない存在で、目にする時はやりたいことを実現するための手段として使われるときだけです。OpenDocは、ソフトウエア技術としては、年々肥大化するアプリケーションに対しての回答で、ソフトウエアを部品化する技術としても注目を集めていました。
OpenDocは、マルチプラットフォームを目指して開発されており、Mac版はApple、OS/2版はIBM、Windows版はノベルが開発する体制でした。しかし、OS/2版とWindows版は開発途中で断念しており、ものになったのはMac版のみでした。当時、Macは普及していないプラットフォームで、さらに普及していない技術を使ったソフトを開発しても、販売面ではうまみもなくしだいに使われることはなく消滅していきました。
このように、既存概念を変えるような取り組みは過去にもありましたが、環境が整わず普及しませんでした。今回のアンビエントモードは、OpenDocほど大がかりなものではありませんが、どれほどのインパクトを残すか楽しみです。今後に注目です。
今週は、このあたりで、また来週。