そろそろデスクトップとモバイル区別することがナンセンス?
12月1日、QualcommはSnapdragon Tech Summitで、ハイエンド端末向けのSoCの「Snapdragon 888」を発表しました。
Snapdragon 888は、Samsungの5nmプロセスルールを使って製造されると言われ、Snapdragon 865との比較でCPU性能が25%向上、GPU性能は35%向上しています。Snapdargon 855から865+へ性能向上も同様性能アップなので、性能の上げ止まりはなく順当に性能強化が行われています。
CPUは、これまでの呼び名でいうビックコア×3とリトルコア×4に加えて、スーパーコア×1が追加されています。ビックコアがCoretex-A78ベースで最大クロック2.4GHz、L2キャッシュ512KBであるのに対して、スーパーコアは、Coretex-X1がベースで最大2.84GHz、L2キャッシュが1MBとなっているので、シングルスレッド性能の改善に寄与します。
メインメモリは、2,133HzのLPDDR4とLPDDR5に対応しています。LPDDR5に対応するSoCは、Snapdragon 888がはじめてです。他、電力性能も最大で3倍の効率が改善がされています。
Snapdragon 865では、外付けだった5Gモデムが内蔵になりました。Snapdragon 888は、2021年第1四半期の出荷予定なので、来年頭に発売されるハイエンドのAndroid端末は、すべて5G対応になることは間違いなさそうです。
ハード区別はそろそろなくなりそう
これだけのスペックを見せられると頭に思い浮かべるのが、Apple M1チップです。
これを搭載したMacBook Pro 13インチ、MacBook Air、Mac miniは、ハイエンドのIntel CPUを凌ぐほどの性能です。MacBookに関しては、CPU性能と電力性能のバランスがよく、通常利用の範囲ならば筐体が熱くなることもなく、また、バッテリ駆動時間も長いと評価されています。Mac miniは、性能と価格のバランスが評価されて、デスクトップの市場シェアを首位に押し上げるほどです。
Apple M1チップは、Qualcomm Snapdragonと同様にARMアーキテクチャで、iPhoneやiPadで使われていたAシリーズの性能強化版とされています。Snapdragon 888はモバイル向けですが、仮にデスクトップでの利用を視野に入れて性能強化が行われれば、M1チップと同様の現象がWindowsでも起こる可能性があります。
2022年には、macOSはARMアーキテクチャへ移行しますが、Windowsも数年の違いで移行の流れが起きるのかもしれません。
Microsoftの考えは違う
こうした状況をみて、WindowsがARMへ移行する流れが起こると考えるのは、浅はかなのかもしれません。Microsoftは別のアプローチも検討しているのか、AndroidアプリをWindows 10に移植しやすくするソリューションを準備しているとWindows Centralが報じています。
Project Latteと呼ばれるプロジェクトは、密かに進行している社内プロジェクトだと噂されています。これは、Androidアプリのコードをほとんど変更することなく、MSIX形式にパッケージ化してMicrosoftストアに公開できるというものです。
スマホ同期と一部のGalaxyシリーズとの組み合わせでは、WindowsからAndroidアプリが操作できますが、スマホで実行しているアプリの画面をミラーリングして、Windowsで操作しているだけでWindowsでは実行していません。
噂どおり、AndroidアプリがWindowsで実行できるようになれば、iPhoneやiPadアプリが動作するM1 Macと同様になります。しかし、Windowsで同じことを実現するためにには、GMS(Google Mobile Service)が必要になり、これがネックになります。GoogleがWindowsでGMSをサポートすることは考えられないので、これに依存したアプリは動作しません。HUAWEIがGMS抜きの端末を発売して苦労しているのは知っているので、Microsoftは、同じ轍は踏まないはずで解決方法が必要です。
これの解決策となりそうなのが「microG Project」です。
これは、2015年にスタートしたGMS互換を実現するオープンソースのプロジェクトです。
このプロジェクトは、Prototype Fundや/e/ Foundationによってサポートされていますが、これにMicrosoftが加わる動きがあればProject Latteは現実味をおび、ソフトウェアもデスクトップとモバイルの区別がなくなりそうです。ただ、2025年ごろの話かもしれません。
今週は、このあたりで、また来週。