先月末から出荷が始まった新Apple TV。ここでは実際に触ってみた使用感、そこから見えた可能性についてレビューする。
とにかく小さいポケットサイズのApple TV
2010年9月発売とアナウンスされていたApple TVだが、出荷が始まったのが9月末。ギリギリで9月発売に間に合わせた形となった。発売日直後に多くの予約が集まっていたこともあり、発売からしばらくたってから予約したユーザには10月上旬にApple TVが手元に届くことになった。
そうして筆者の元に10月中旬に届いた新Apple TVだが、まずその小ささにとても驚かされる。手にとってみると写真で見る以上に小さく感じる。縦横がちょうどスティック糊の長さくらいしかない。ソニーのお家芸であった小型化のお株を浮かぶような新製品であり、同じくソニーがジーンズのポケットに入れて宣伝した小型PCとは違い、こちらはポケットの中にすっぽりと入ってしまう小ささ。今、話題のモレスキン手帳と同じくらいの厚さで、その手帳を正方形に切り落としたような大きさだ。
以前、筆者が所有していた旧Apple TVと比べてみると、さらにその小ささが際立つ。前機種は縦横19.7cm、厚さが2.8cm、重さが1.09Kg。Time Capsuleと旧Apple TVの縦横の長さがほぼ同じなのに対し、新Apple TVは縦横9.8cm、厚さ2.3cm、重さは272gとなっている。
ケースから縦横ギリギリに収められているApple TVを取り出すと、本体以上に長いリモコンが対角線上に収められており、その下に電源ケーブルが入っている。小さな筐体にもかかわらずACアダプタではないコードのみとなっているのだが、本体があまりにも小さいので、電源コードの存在がかなり大きなものに感じてしまう。
据え置き機でありながら、ポータルブルなどこでもApple TV
小さな筐体を実現するために新Apple TVの端子は最小限にとどめられている。電源コード、LANケーブル、HDMI端子、光音声出力、そしてmini USBポートが備えられている。このmini USBポートはiTunesで本体を復元などしたりするアフターサービスや、診断のために利用するものとなっている。キーボードや外付けHDDなどを接続できるわけではないが、今後のOSのアップデートで利用方法が増えることを期待したい。
映像の出力がHDMI端子のみとなり、HDMIがないテレビでは利用ができないが、HDMI端子の普及が進んだ昨今ではそれほど問題にはならないだろう。ただこれだけ小さな本体だと、自宅以外にも旅行先にも気兼ねなく持っていくことができる。そうした場合には、当然ながら旅先でのテレビにHDMI端子があるか、そして有線か無線でのLANが利用できるかの確認が必要となってくる。
もっともそのような場合も、旅先に大型テレビがない限りはわざわざApple TVを持っていくよりもiPadやiPhoneで事足りてしまうだろう。据え置き機でありながら、ポータブル製品と思ってしまうくらい小さいという不思議な製品だ。
また本体の大きさだけでなく、消費電力も前モデルの48Wから6Wとわずか1/8になっている。旧製品ではかなりの熱を発するため、置き場所にも気を使う必要があったが新モデルではそのような心配をする必要はほとんどないだろう。
日本で利用できるApple TVの機能
日本に住むユーザとして気になるのが、どこまでApple TVの機能を利用できるか、であろう。まず、本体を包んでいるシールの注意書きや説明書には、他の言語とあわせて日本語も記載されている。
本体を立ち上げると、他のApple製品同様、日本語の設定を選択できる。
そして利用できる機能は、どの国のiTunes Storeのアカウントを持っているかで変わってくる。米国の銀行口座や米国のクレジットカードが必要だが、アメリカのiTunes Storeのアカウントを持っていればApple TVの機能を最大限楽しむことができる。
iTunes経由でのレンタルムービー、TV番組のレンタル、Netflix、Flickr、YouTube、ポッドキャスト、そしてPCやiPadからiTunesのライブラリ内のビデオや音楽を無線でテレビ上で再生できるAirPlayなどが楽しめる。認証はIPアドレスではなくiTunes Storeの各国の有効なアカウントの有無で判別しているので、アカウントさえあれば該当国からでなくてもこうしたサービスを楽しむことが可能だ。
日本のiTunes Storeアカウントでは、レンタルムービ、TV番組のレンタル、Netflixを利用することができず、上映中の映画の予告編のみ視聴ができる。映画の予告編はどこのStoreを選択しても全世界共通のデータとなっていた。レンタルムービの視聴はスムーズで、光回線からの無線LAN接続による利用でも途中で止まったり、一時的に途切れることはなかった。レスポンスも全モデルよりも全般的にスムーズでストレスのないものとなっている。
ただし、付属のリモコンによるYouTubeなどの視聴は快適なものではない。とくに日本語のコンテンツを視聴しようとしても付属リモコンでは日本語を入力して検索することができないのだ。iPhoneやiPod touchにAppStoreから「Remote」アプリをインストールすれば日本語入力での検索も可能となるがiPhoneやiPod touchを持たないユーザであればとても実用的だとは言えないだろう。
日本在住の場合は、Apple TVで利用できる機能はYouTubeやポッドキャストなどを視聴するか、自分のPC内の映像、音楽データをテレビ上で視聴するのが主な利用方法となるだろう。iTunesで多くの映像を管理しているのならばかなり便利な機能となるはずだ。また自宅だけでなく、会議室の大画面テレビにApple TVを接続して、映像でのプレゼンを行ったり、iMovieやFinal Cutで編集中の画像をメディアに記録せずに、AirPlayでテレビで上映するといった利用法方法もあるだろう。
多機能のGoogle TV? それとも安価でコストパフォーマンスの高いApple TV?
残念ながら、現状日本では利用できる機能はあまり多くないが、米国で$99という価格は日本円なら現在8千円程度とかなり魅力的な価格となっている。これに対し最近話題を集めているGoogle TVだが、セットトップボックスの価格は$299とほぼ3倍の価格だ。
$300前後の価格はYouTube視聴機能を備えたPS3などのゲーム機と競合することとなる。よりコストパフォーマンスが高いテレビに内蔵されたモデルがソニーから発売されて話題を集めているが、総じて導入へのハードルは高めだ。これに対して機能的なアップデートは少ないながらも、よりコンパクトで使いやすく、安価な製品を出すという戦略をとったApple。ゲーム機とも競合せず、Blu-rayプレイヤーよりも安価な価格というのがポイントだ。
Appleが本当の競合製品として想定しているのはこちらかもしれない。はたして消費者はどちらを選択することになるのか。Google TV、Apple TVともに日本での発売は未定だが今後の両製品の展開が気になるところだ。